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第二牢獄層

「骸骨霊術師が出てきたってことは、ここは第二階層に近づいてるかもしれねぇな」


 ヴィルはおなじみの顎髭を触りながら、鋭い目つきで周囲を見回す。この辺りには骸骨騎士たちが看守を務めているらしく、その上には看守長である骸骨竜が待ち受けているという。どんな強敵が現れようと、俺には関係ないが。


「ところでヴィル、この世界にはレベルってものがあるのか?」


 もしこの世界がライトノベルみたいな感じなら、俺の強さが数値化されて見えるはずだ。弱者は嘆き、強者は笑う。そんな風に優劣がはっきりしている世界だろう。


「あるぜ。俺の言う通りにすりゃ、お前のステータスが見られるさ」


 ヴィルに促され、俺は試しに「ステータス」と唱えてみた。すると、目の前に浮かび上がったのは俺の詳細なデータだった。

 ーーー

 零 (zero)

【レベル】 99+

【職業】 ブラック企業社員 → 復讐者

【称号】 地獄の復讐者

【HP】 9999+

【MP】 0

【攻撃力】 9999+

【防御力】 7500

【魔力】 0

【速度】 8500

【幸運】 100


【スキル】


 •身体強化

 •物理攻撃向上


【装備】


 •魔法を持たない杖:魔法の力はないが、物理攻撃力を大幅に上昇させる特別な杖。


【特殊能力】


 •復讐:相手の攻撃を倍にして跳ね返す。

 ーーー

 思わず笑みがこぼれた。

 さすが「レベル99」。どうやら俺は、もう無能なんかじゃないらしい。


「なるほど、ありがとう。ヴィル」

「いいってことさ、それより早く地上に出たいな」


 地上か…。ここに来て何日が経ったのだろう。看守たちから奪った食糧も残り3日分ほどしかない。焦りが胸を締め付けるが、先のことをいくら考えても無駄だ。今はただ前に進むしかない。


 歩き続けるうちに、ついに出口が見えた。光が漏れてくるその先に待ち構えているのは、意外な光景だった。骸骨スケルたちが、首輪と手錠をつけられて、まるで何かに操られるように、ゆっくりと行進している。異様な光景に足が止まった。


「なんだここは…?」


 さらに目を凝らすと、先頭には一際異様な存在がいた。漆黒の馬にまたがる首のない骸剣士スケルナイトそいつが隊を率いているらしい。その圧倒的な存在感に、思わず息を呑む。剣を握るその手には、ただの骸骨とは違う、死者の王としての威厳すら感じられた。


「ここから抜け出すには、あいつをどうにかしないといけないってわけよ。」


 ヴィルが不穏な声で俺の隣に立ち、指を差して続けた。


「ちなみに、あれは転生者達の肉体で作られた骸骨兵士たちだ。元転生者だから、一人ひとり何かしらの能力を持っているはずだよ?」


 俺は再び骸骨兵士スケルソルジャーたちに目を向けた。普通の骸骨ならまだ対処できるかもしれないが、元転生者となれば話は別だ。それぞれが能力を持っているということだ。さらに先頭の首のない骸剣士――あいつがただの指揮官ではないことも一目でわかる。


「能力持ちの骸骨たちか…厄介だな。あいつらをどう攻略するかが鍵だな」


 ヴィルは冷静に頷いたが、表情には焦りが浮かんでいる。俺たちに残された時間は少ない。食糧レーションはあと3日分しかない上に、これだけの敵を相手に生き延びるのは至難の業だ。だが、ここで立ち止まるわけにはいかない。


 すると、一体の骸骨が崩れ落ちた。

 他の骸剣士がくるとその骨を見たあとに、「蘇生リザレクション」をかける。ふたたび骸骨になった者は、列に戻り歩いていく。


「今のは蘇生したのか?」


 俺は驚きと疑問が交じる声でヴィルに尋ねた。骸骨が倒れても、あっさりと蘇生して歩き出す様子は異常だ。


「ああ、そうだ。ここの骸骨たちは何度でも蘇生する。この第二牢獄層は肉体労働を強いられる場所だ。だが、骸骨たちに魂はない。魂はあの先頭の奴――首のない骸剣士が全て持っているんだ。」


 ヴィルの説明に背筋が寒くなる。魂を持たない肉体がただ働き続ける…それだけでも恐ろしいが、彼はさらに続けた。


「ここでは、骸骨がチリになるまで地下を掘り続ける。能力を持っている元転生者たちだから、兵士としても使えるんだ。そして第一牢獄層はもっと酷い。そこでは永遠に生き続けるのが目的だ。看守たちの“おもちゃ”にされても、何度も回復され、再び弄ばれる…逃げることも、死ぬことも許されない。」


「永遠…?」俺は思わず口元が震えた。その一言の重みが、牢獄層の底知れぬ恐怖を強く感じさせる。


「ここに長居するわけにはいかないな。」俺は決意を固め、さらに気を引き締める。


「第三牢獄層はもっと異常だぞ。」ヴィルが低い声で続ける。


「第三牢獄層?ここよりも酷い場所があるのか?」俺は思わず聞き返した。


「ああ、第三牢獄層は『不死』がテーマだ。そこにいるのは、アンデッドになった転生者同士だ。彼らは不死の存在として、永遠に戦い続けなければならないんだ。死ぬこともできない状態でな。勝敗がついても、蘇生されてまた戦う。勝者には一時的な優位が与えられるが、結局、誰も逃げられない。優劣をつけられても、それはただの一時的なものにすぎないんだ。」


「不死の転生者同士が戦い続ける…。」俺はその地獄のような光景を想像し、背筋が凍った。永遠に終わりのない戦いを強いられるなんて、想像を絶する苦痛だ。


「第三牢獄層では、自分がどれだけ強かろうが関係ない。結局、勝ったところで次の戦いが待っている。奴らはそのループから抜け出せない。まさに、優劣という概念さえ虚しいものにしてしまう場所だ。」


 ヴィルの説明に、俺は無言で頷いた。この牢獄には、ただ力や能力を試すだけでは抜け出せない深い闇が広がっている。

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