ヴィルとの連携
しかし、燃え上がる魂が、俺に向かって猛スピードで飛んでくる。さっきまでの攻撃とはまるで次元が違う速さでヴィルの思い通りに動くことはできない
「くそっ……避けきれない!」
反射的に「身体強化」を発動し、なんとかそれを避けようと動くが、魂は俺を追尾するように軌道を変えてくる。炎をまとった怨念が、まるで生き物のように俺に喰らいつこうとしていた。
「それを避けるのは無理だ。地獄の業火に焼かれながら苦しみ続けろ。この炎は当たるまで追い続ける、永遠の苦しみだ」
骸骨霊術師の冷たい声が響く。俺は思わず舌打ちした。
「だったら……お前に返してやるよ!」
ヴィルが俺にアイコンタクトを送り、次の瞬間、その燃え上がる魂にスティックを振り下ろす。カーンッ――金属が何かを弾くような音が響き、魂は骸骨霊術師のフードにかすって炎を上げた。
「自分の攻撃で燃えるって……何なんだよ、こいつ」
俺は一瞬苦笑するが、その油断は命取りだ。骸骨霊術師の冷たい笑い声が再び耳に届く。
「ふん、よくやったな……だが、そんな小細工で我を倒せると思うな!」
骸骨霊術師は苛立ちを隠さないまま、両手を天にかざす。すると、闇の中から無数の魂が彼の背後に集まり始めた。それらが巨大な渦を描き、やがて一つの巨大な火の塊となって俺たちに迫ってくる。
灼熱が全身を包み込む。まるで皮膚が焼け落ちるような感覚が襲い、冷や汗が額を流れた。
「零、やばいぞ!今すぐに策を練らないと……」
ヴィルの焦った声が響くが、俺は微かに笑みを浮かべた。俺には『復讐』がある。どんな攻撃でも、跳ね返せる。
「喰らえ!地獄の豪炎!!」
骸骨霊術師が咆哮し、巨大な炎が一気に迫ってくる。俺は全身の筋肉を緊張させ、一歩も引かない。
「今だ……返してやる!復讐!!」
**ズンッ――**大地が揺れ、空気が一変する。俺の掌から放たれた力が、巨大な炎をそのまま骸骨霊術師に跳ね返した。
「な、な、なんだと!?そ、そんなことが……で」
骸骨霊術師は、自分が生み出した怨念の業火に包まれ、体が崩れ落ちていく。焼け焦げた骨が砂のように崩れ、やがて完全に消滅してしまった。
深い沈黙がその場に訪れる。
「ふぅ……」
俺たちはその場に座り込み、ようやく一息ついた。心臓の鼓動がまだ早く、全身に残る灼熱の感覚が消えない。ヴィルは「回復」を唱え、軽い傷を癒し始めた。彼の手が俺にも触れ、徐々に疲労が和らいでいくのがわかる。
「助かった……だが、お前の策がなければ危なかったな」
「いや、俺がいなかったとしても、お前ならなんとかなったさ」ヴィルが顎髭を撫でながらニヤリと笑う。だが、その表情の奥には、まだどこか緊張が残っている。
俺は、ふとこの世界の「魔法」について考えた。ヴィルは回復を簡単に使っていたが、俺にはまだその感覚が掴めない。この世界に存在するスキルや魔法、ルール――全てを理解しない限り、この戦いで優位に立つことは難しいだろう。
「ライトノベルみたいに、急にスキルを会得するなんてこと、ないかな……」
そんなことを呟きながら、俺は立ち上がる。