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骸骨霊術師ってなんだ?

「いいか、零、あまり無茶はしないと約束してくれ。もう目の前で人が亡くなるのはごめんだ」

「わかった約束しよう。無茶はしない」


 ヴィルの言葉に俺は軽く頷いたが、心の中では別の思いが渦巻いていた。約束なんて、今の俺には意味がない。この歪んだ世界で生き延びるためには、無茶をするしかないのだから。


「第三階層まで行けば、地上に出られるって話だが…本当にそんな簡単に行くのか?」

 俺はヴィルに問いかけた。彼は元々この世界の囚人ではなく、異世界から送り込まれた者の一人だ。その分、この《迷宮》の仕組みについて詳しいはずだ。


「簡単じゃないさ」ヴィルは苦笑いを浮かべながら答える。「だが、ここで立ち止まるわけにもいかない。俺たちが目指すのはただの脱出じゃない、女神への復讐なんだろ?」


 その通りだ。俺がここまで来た理由は、ただ生き延びるためじゃない。俺をこの反異世界に送り込んだ女神に対する復讐、それこそが俺の唯一の目的だ。


「まあ、無茶はしないと言ったが、必要なら何だってやるさ、足を引っ張るなよ」俺は肩をすくめて言った。


「お前こそな」ヴィルは俺の言葉に笑みを返したが、その目にはまだ不安の色が残っていた。


 俺たちは再び歩き出した。暗く、湿った迷宮の中を、足音だけが響く。この《迷宮》のどこかに、俺たちの出口があると信じていくしかない。


 あまりにも暗い通路だ。奥から嘆きの声が聞こえてくる。苦しんでいる声にも聞こえくるように感じた。

 奥から蒼い何かが浮かんでいるのがわかるとこちらに勢いよく飛んでくる。

 俺は野球選手のようにスイングをして蒼い何かを打った。

 消滅したのちに、再び現れた蒼い何かは形を変えて、人魂へと姿を変えた。


「あれは、転生者と囚人の魂だ。それを操って攻撃している奴がこの奥にいるようだな」


 ヴィルの声が低く響く。彼の言葉に緊張が走った。人魂が何かを伝えようとするかのように揺れながら、俺たちを見つめている。まるで、無念の思いを抱えたまま彷徨う魂たちだ。


「一体どういう奴がこの先に……」俺は視線を奥に向けながら呟いた。薄暗い通路の奥から、低く重い嘆きの声がさらに近づいてくる。何かが、こちらを待ち構えている気配がした。


「零、気をつけろ。この迷宮には常識が通用しない。魂を操る者がいるなら、奴は普通の敵とは違うはずだ」


 俺は頷きながら、棍棒を握りしめた。蒼い何かはただの霊体ではない。この迷宮に巣食う者が、転生者と囚人たちの絶望を引き寄せ、力として利用しているのだろう。誰かが、ここで死んでいった者たちを弄び、俺たちに挑んでいる。

 俺の影から、突如として鎌の先が飛び出し、俺の首を狙って一直線に飛んできた。


「うぉっ!」


 反射的に身を引こうとしたが、刃はすぐそこまで迫っていた。だが、その瞬間――ヴィルが俺の腕を掴み、間一髪で俺を引き戻してくれた。


「危ねえな、気を抜くなよ、零!」


「ひっひっひっ、今のをかわすとは、なかなかやるな」


 どこからともなく、不気味な笑い声が響いた。その声はノイズ混じりで、どこか耳障りでありながら、底知れぬ恐怖を感じさせる。闇の中から姿を現したのは、骸骨の姿をした、宙に浮かぶ怪物だった。


「零、気をつけろ……! あれは、骸骨霊術師(ダクトネクロマンサー)!」


 ヴィルが低い声で俺に警告する。骸骨霊術師? 俺の中に聞いたことのない名前が引っかかる。


「骸骨霊術師ってなんだ?」


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