宣言
その夜、俺は意識を失い、ふと気がつくと、またしても牢屋の中で目覚めた。
臭い。固いベッド。閉じ込められているという不安がじわじわと押し寄せてくる。なぜ、俺はここにいる?
すると、ルナウドが俺のそばに歩み寄ってきた。
「ルーネは、もう少しで殺される。お前はそれを見ているがいい」
一瞬、その言葉に違和感を覚えた。ルナウドらしくない……そう思い、俺は手を顔にかざす。すると現れたのは、ルナウドではなく、ヴィルだった。
「ヴィル、お前……生きていたのか?」
「おー、そんなこともあったね。これって、神々が暇を持て余してやってる遊びの一つなんだよねー?」と、ヴィルは呑気に言った。
「なに言ってるんだよ! 人が死ぬんだぞ?」
俺は苛立ちながら声を荒げる。
「えー、俺には関係ないし」
ヴィルは耳をほじりながら、まるで何も気にしていないかのように答える。
「ここから出してくれよ、ヴィル?」
「いやいや、それだとさ、シナリオがずれちゃうからさ」
俺の怒りのボルテージは一気に上がった。手錠がはめられていて思うように動けない。足枷も重い。鉄格子越しに見えるヴィルのふてぶてしい表情に苛立ちが募る。
「わかった。今からお前をぶん殴るから、そこにいろ!」
「へっ? どうやって? 手錠も足枷もついてるし、鉄格子まであるんだぜ? やってみなよ、弱者」
俺は静かに呟いた。
「罠解除」
ガチャリと手錠と足枷が外れる。
「――もう一度」
「罠解除」
次に鉄格子が開いた。ヴィルは一瞬青ざめ、ルナウドの姿に戻って逃げ出そうとするが、もう遅い。
「身体強化」
俺は一瞬で追いつき、ルナウド(ヴィル)のイケメンフェイスに向かって拳を突き出した。
「あの時は楽しかったぜ、ヴィル。あと、これは返しとくからなぁ!」
「ぐっはあぁぁぁ!!!」
ヴィルは宙を回転しながら吹っ飛び、床に激突する。
俺は肩を回しながら、軽く息を整え、城の中を歩き出した。
「さあ、ルーネを助けに行くか」
そう言いながら通路に出ると、兵士たちがゾロゾロと集まってきた。数は多いが、俺には問題ない。
「スキル: 武器生成 金属バット」
俺の手には、驚きのマークのような形状をした日本製の金属バットが現れた。しっかりとしたグリップで握りやすく、まるでホームランを狙うかのように構える。兵士たちはその光景に戸惑いを見せる。
「さあ、行くぞ。ホームラン宣言だ」
俺は笑みを浮かべながら、兵士たちに突っ込んでいった。
バットを振りかざし、最前線の兵士に一撃。金属音が響き渡り、兵士が宙を舞った。