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なぜ助けた?

「なんで、私を助けたのですか?」


「俺はお前を守護するって約束したからだ」


 俺はそう言って、街の中を進む。すると、近くから声が聞こえてきた。


「おい、ここにルーネ姫がいるみたいだぞ」

「嘘つけ、いるわけないだろ」


「いやいや、さっきルーネ姫って言ってたやつ見たか?騎士だったぞ」


「じゃあ、この近くにいるんだな。賞金もかかってるし、俺たちで捕まえるか?」


 酒に酔った男性二人の会話が、俺たちの耳にまで届いてきた。隠れたつもりだったが、どうやら身を隠す予定が台無しだ。フードを被っているとはいえ、お尋ね者ではあまり意味がない。


 酒場に入って席につくと、目の前に酒がドカッと置かれた。


「良いねぇ、姉ちゃん。俺と飲まないか?こんな男より、俺の方が良いぜ」


 ルーネはため息をついて、「手加減してあげてくださいね」と俺に耳打ちした。俺は男のシャツを掴むと、持ち上げる。酔いが一瞬にして冷めたのか、男は慌てて謝り出す。


「す、すまん!俺が悪かったって言うとでも思ったか!このガキがぁ!」


 そう言いながら、男の仲間らしき者たちが俺の周りを囲み、刃物を取り出してきた。店員は慌てて奥に逃げ込む。


「やめた方がいい。怪我をするのはお前らの方だぞ」

「なんだと、この野郎!!」


 酔っ払いの男が襲いかかってきたが、俺はスラリと横にかわした。男は自分の勢いで店に置いてあった木のタルに倒れ込み、中からワインが溢れ出す。その光景を見ていた他の奴らは、仲間がやられたことに怒りの表情を浮かべている。


 次の男が左ストレートで俺の顔面を狙ってきた。だが、首を軽く傾けて余裕の表情でそれをかわす。周りのギャラリーは興奮して「いいぞ、もっとやれ!」とヤジを飛ばしている。


 俺も仕返しに、右ストレートを酔っ払い男の腹部に向けて放つ。

「ぐふぅ!」

 油断していたのか、クリティカルヒットした男はそのまま床に倒れこんだ。


 背後から迫るナイフを持った男。俺は回し蹴りで空気を切り裂き、その男を壁に叩きつけた。衝撃で壁には微かなヒビが入る。店の中はますます盛り上がり、ギャラリーは口笛を吹いて酒のつまみ代わりにこのリアルファイトを楽しんでいた。どちらが勝つかはわかっていても、つい見入ってしまう喧嘩で店は満員御礼となっていた。


「こら、そのへんにしておきなさい」


 ルーネがぺしっと俺の頭を叩いた。その瞬間、やる気がデバフされたかのように、喧嘩はあっけなく終わった。


 俺は軽くため息をつき、テーブルにチップを置いてから店を出る。後ろで、店の喧騒が少しずつ静まり返っていくのを感じながら、俺たちは夜の街に戻った。

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