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第4話 大海の雫
歩き続ける少年の前に、初めての代わり映えのある景色が浮かぶ。
とろくのろく、どこまでも遅々とした動き。だが確実にその景色は近づいてくる。
少年は最後の一滴となった水筒を飲み干し、絶望に身を滾らせながら中々に踏みしめにくい大地に着実に靴底を押し当てる。
砂の世界にポツンと佇むその緑と青の姿は、陸にあるというのにまるで絶海の孤島。
それを確認した瞬間、少年の心は惝怳し、足取りは重くなる。
しかし少年はなんとか足を動かし、体を孤島に向けて差し出す。
物覚えがよい少年は、そこが目的地で無いことを知っていた。
そしてそこが楽園と呼ばれ、自分だけではない他の人が住み着いているのも。
そう考えると少しだけ足取りは軽くなったが、またすぐ重くなり、元に戻る。
天は未だに空高く、日照りは体の水分を否応なく奪う。
だがその口元は三日月状に割け、その佇まいには覇気さえ感じられる。
環境を嘆きながらも、少年の瞳には潤いが舞い戻ってきたのだ。
少年は進む。
その止まらぬ歩みを再び止めゆくその楽園に向けて。