第82話 作業完了!
ネオラプトルが東側の壁のダクトから顔をだす。ネオラプトルの目に映る薄暗い駐車場。狭い空間に体を無理矢理にねじ込み、ようやく移動して来たネオラプトルは一息つくかのように口を開け鳴き声をあげるのだった。
「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
「この!!!」
顔をだしたネオラプトルが開けた大きな口に、瞬間移動で飛んできたレイが打刀を持った右腕を突き出した。鋭く伸びて来た切っ先は、ネオラプトルの口の奥へと入り込み、上あごの肉を切り裂き頭蓋骨を貫いいく。レイの打刀の切っ先がネオラプトルの後頭部から斜め上に突き出すのだった。
レイは左手で、ネオラプトルの下あごを上にあげ、右腕を引いて打刀を抜き。打刀を振って血を拭う。彼が目を離した時にわずかにネオラプトルの死体が前に押し出された。
「キシャアアアア!!」
「うわ!!」
ダクトからネオラプトルの死体が押し出され、新たなネオラプトルが顔出しレイを威嚇した。
レイは左手を腰の後ろに回し、腰に装着していたアサルトライフルを持った。彼は素早くダクトから出たネオラプトルの口にアサルトライフルの銃口を突っ込む。口に異物を急に押し込まれたネオラプトルは目を大きく見開き苦しそうに目に涙を浮かべる。
「これは俺からのプレゼントだ!!!」
「プギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」
叫ぶと同時にレイはアサルトライフルの引き金を引く。銃弾がネオラプトルの口の中へと発射される。アサルトライフルの銃弾は口を貫きダクトの壁に穴をあけてり、ネオラプトルの体内へと届き肉や骨や内臓をえぐりとっていく。ネオラプトルは体中から血を吹き出し、アサルトライフルの動きに合わせてビクンビクンと激しく痙攣したように動くのだった。ネオラプトルの目から光が消え自分の意思で完全に動かなるとレはゆっくりと口の中からアサルトライフルを引き抜く。アサルトライフルの銃身には肉片や血がついて真っ赤にそまっていた。
「次から次にモグラたたきかよ。まったく」
ダクトから流れるネオラプトルの血を見つめつぶやくのだった。
「レイ君。大丈夫? なんか驚いてたみたいだけど?」
「大丈夫だよ。姉ちゃんは平気?」
「うん。大丈夫だよ」
甘菜の声を聞いたレイは思わず自然とほころぶのだった。床に着地した彼は未結へと通信をつなぐ。
「先輩。やつらの状況は?」
「地上へ引き上げているようですね」
「そうか……」
青く目を光らせた未結がネオラプトルの様子を探っている。ダクトからの侵入を諦めたネオラプトルたちは地上へと逃げていた。黒田やレイのおかけでダクトから侵入を試みた、ネオラプトルたちの思惑は防がれた。
「正面からも撤退しているようですね。警戒しつつ交代で補給をしてください」
バリケードから侵入してくる、ネオラプトルたちを監視していた翔からの連絡が入った。レイたちは弾薬とエーテルの補給を始める。
「終わりました」
「ありがとう。じゃあ次は僕が」
「お願いします」
黒田の背中に装備されてい、自動弾薬装填兼装備換装装置の扉を手動で閉めレイが声をかける。続いて黒田がレイの背中に回りエーテルタンクの交換を始めた。
「はい。これレイさんのです」
「ありがとう」
両手にマガジンをたくさん抱えた未結が二人の元へとやってきて、レイの足元にアサルトライフルのマガジンを置いていく。黒田にエーテルタンクを交換してもらったレイは次にアサルトライフルのマガジンを交換した。
「レイくーん! ちょっと来てー」
「えっ!? おぉ待ってくれ」
甘菜に呼ばれたレイは彼女の元へと向かう。彼女はトラックの荷台にパワードスーツで乗り細長い木の箱の前に立って居た。
「レイ君の予備の太刀ってこれ?」
荷台の前に立ったレイに気付いた、甘菜は彼に箱を指さして確認する。屋上に置いて来た太刀の予備を出そうとしているようだ。
「箱にK994一閃って印字されてない?」
「おぉ! じゃあこれだ。はい!」
返答を聞いた甘菜は、目の前にK994一閃と刻印された箱をヒョイと片手で持ち上げ、そのまま荷台の下にレイに箱を差し出した。レイは箱を受け取り床に置く。K994一閃とはレイが使う太刀の正式名称だ。
「後は…… 私のタワーシールドを…… あった」
甘菜はトラックの荷台で予備のタワーシールドを探す。荷台の奥に立てかけられたタワーシールドを甘菜は見つけたのだった。レイは床に置いた箱を開ける、箱の中には戦闘服と同じ灰色の迷彩柄の鞘に納められた、黒い柄を持つ太刀が横たわり側に手のひらに乗るほどの小さな金属の箱が置かれている。
レイは金属の箱を取り出し中を開けた。中にはエーテルリンクタグが入っていた。
「えっと…… 最初に…… シンシア! 00091283K994のエーテルリンクの切断を頼む」
「ハイ。セツダンシマシタ」
シンシアを呼び出して指示を出すレイ。彼は先に使用していた太刀のエーテルリンクを切ったのだ。古いエーテルリンクを切っておかないと、新しい太刀を呼び出す際にシリアルを言わなければならない。また、混線することもあり新しい太刀を呼び出したつもりが古い方が出現したりする。
うなずいたレイは太刀を持ち上げ、エーテルリンクタグを鍔に挿しこもうと……
「おわったああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
「うわ!? あっ杏ちゃん? どうした?」
「だから終わったのよ!」
集中して作業していたレイに不意な通信が入り叫ばれ、彼は思わず声をあげた。叫んだのは地下四階でデータ収集をしいた杏だった。レイは興奮気味な杏にさらに問いかける。
「終わったって…… 何が?」
「はぁ!? データの収集が終わったに決まってるでしょ! なんのためにここに来てるのよ!」
「もう! 山神博士! 僕の通信に割り込まないでください。皆に僕が連絡するって言いましたよね?」
「何よ! うるさいわね」
杏の地下四階でのデータ収集作業が終わったようだ。本来は杏から報告を受けた大神が皆に連絡するはずが、喜びにあまり杏は大神の通信に割り込み先走って叫んだようだった。
「皆さん。お待たせしました。作業完了です。帰投の準備をしてください」
大神から正式な作業完了が告げられた。コロッセオ豊洲防衛戦は完了した後は基地へ皆で帰投するだけだ。遠征軍の皆が安堵の表情を浮かべるのだった。
「総員! 速やかに撤収! 町へ帰りますよ」
翔からの指示が飛んだ。遠征軍は撤収を始めた、皆で素早くトラックに負傷者や荷物を運び込んだ。撤収の準備が完了するとバリケードが撤去される。
「隊列はここへ来る時と同じです。しんがりは特務第十小隊にお願いします。第三師団の指揮は一時的に大神さんに頼みます」
先頭に翔が率いる第二師団が先頭、第三師団は大神が指揮しトラックと杏を護衛し、しんがりはレイたち特務第十小隊だ。スロープを上り始める翔たちを最後尾のレイは兵員輸送車に乗りジッと見つめている。
「先輩…… ネオラプトルたちはどこに?」
「建物を探してますがいないみたいですね」
「そうか。さすがにあんだけ痛めつけたから逃げたのかもな」
「はっはい」
青い目を光らせ千里眼で、ネオラプトルを探す未結だが見つけられなかった。隊列が進みレイたちが動きだす。
遠征軍の先頭がコロッセオ豊洲から外へと出た。夜は明け紫の雲の魔の巣から落ちる雨に建物の周囲に転がる昨夜の戦闘で出来た魔石が転がり濡らされていた。荒れ果てた町に光る魔石はなんともいえず幻想的で不気味な光景だった……
「雨が降り出してます。急ぎますよ」
翔の声が聞こえる。遠征軍の速度があがる。隊列は順調に進み最後尾のレイたちが、地上の出口を出て十メートルほど進むと背後で何かが落ちる音がした。
「なっなんだ…… ネオラプトルが……」
振り向いたレイの目に見えたのは、地下駐車場の入り口の前の地面に転がるネオラプトル上半身だった。状況からコロッセオ豊洲の建物か屋上から落ちて来たようだ。
「ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!」
激しい咆哮が豊洲に鳴り響いた。あまりの激しい咆哮に周囲の木々は揺れ、パワードスーツでさえ振動する。顔を歪めたレイが視線を上へと向けた。
コロッセオ豊洲の屋上から、十五メートルはあろうかという緑の鱗を持つ二脚の巨大な飛竜が、遠征軍を睨みつけていた。丸みを帯びた体に鷲のような長い指と爪を持つ脚、爪の生えた三本指を持つ太く大きな前足に蝙蝠のような膜の張った翼をもち、長い首の先にはワニのような顔をして、先端が矢じりのような形をした長い尻尾のこの飛竜の名は……
「ワッワイバーン!? クソ! 魔の巣から出て来たんだ! 翔さん! ワイバーンです!」
飛竜はワイバーン、飛行能力を持つ中型の飛竜である。性格は獰猛であり肉食で、長い舌を持つ口から巨大な火の玉を放ち魔法を使いこなす。ワイバーンは遠征軍に向かって口を開く、赤い光が渦をまきレイたちを照らしながら集約していくのだった。




