第75話 大物を求めて
コロッセオ豊洲の北側に大きな交差点がある。そこから交差点の角から歩道と街路樹を挟み、コロッセオ豊洲の北口へと続く。入口から街路樹の四角くバリケードに囲まれた陣地が築かれ、大樹が率いる第三師団の二十名が防衛を担当していた。兵士は十五名が陣地でアサルトライフルを構え、二階の窓から五丁の重機関銃が並び外へむけられている。
大樹はジッと街路樹の向こうにいる数千のゴブリンたちを見つめていた。街路樹は半分ほどが倒れ隙間から、ゴブリンたちは防衛線として定められている交差点を超えず、道路のなかでうろうろと動いているのが見える。
「チッ…… さっさと片付けたいのに……」
舌打ちしイライラした様子で、背後のコロッセオ豊洲の入口に視線を向ける大樹だった。彼が目を離した直後に隣に居た兵士が前を指さした。
「動き出しました」
「やっとか。遅すぎるぞ」
視線を前に向けた大樹、ゴブリンの軍団が前に出て防衛線を超えようとしていた。右手に持っていたサブマシンガンの安全装置を外した大樹は左手でゴブリン軍団を指さした。
「いいな。近づく魔物どもはすべて殲滅しろ! ここには一歩も近づかせるな!」
「「「「「はい」」」」」
大樹の指示で防衛を担当する兵士に二十人全員が銃を構えた。大樹も銃を構える、ディスプレイに映るゴブリンが交差点を超え歩道の中央へと進む。
「撃て!!!!!!!!!!!」
二十人の兵士達が大樹の号令で一斉に発砲する。銃声が轟き銃弾が街路樹を超えゴブリンへと襲い掛かる。
「「「プギイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!」」」
ゴブリンの悲鳴が聞こえる。銃弾はゴブリンを簡単に貫通し体をバラバラにしていく。仲間の肉片と血をかぶったゴブリンたちは混乱し隊列が乱れる。
「撃ち方やめ!」
大樹は射撃停止を命令すると、飛び上がった街路樹を飛び越え逃げるゴブリンたちを見つめている。左手を大樹はゴブリンに向けた。しばらくの間その姿勢でいる大樹。彼の肩の後ろのケースに入っている槍と倒れている街路樹が震えだした。
ゴブリンたちは混乱しており、大半のものは大樹の存在に気付いていなかった。
「我が力で駆逐してやる。魔物どもめ!」
叫ぶと同時に大樹は左手を、横に大きく動かし払うような仕草をした。ケースに入った槍と街路樹がゴブリンたちへと向かって行く。街路樹は横にならんで地面を転がり、槍は大きく迂回しながらゴブリンへと向かって行く。
ゴブリンたちは音を立てて転がってくる街路樹から逃げようとした。しかし、街路樹は速くゴブリンたちは押しつぶされていく。
「「「「「「プギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」
地面を転がる街路樹に押しつぶされて声をあげる。ローラーで踏みつぶされたかのように、ゴブリンたちは地べたに倒れ道路や歩道を血で染める。逃げ惑うゴブリンの横から大樹の槍が挟むように飛んでくる。
「「「「「「プギイイイイイイイイイイイイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」」」」」」
一直線に止まることなくゴブリンの隊列の横からつらぬく六本の槍。ゴブリンの体はもろく槍は彼らの体を貫いていく。串刺しにされたゴブリンたちがが悲鳴をあげた。槍によって手足や体がちぎれたゴブリンたちは肉片となってその場に転がり、念を押すかのように街路樹がゴブリンを押しつぶしていくのだった。
大樹の特殊能力は念動力、手を触れることなく物体を動かせる力だ。また、通常であれば動かせるのは一つだけだが、彼は時間を使うことで同時に百以上の物体を同時に動かせるのだ。
「ふん。雑魚が! やはりゴブリンごときでは対して手柄にならんな…… だが俺にはあれが……」
道路に転がる無数のゴブリンの死体に向かってつぶやく大樹だった。数千いたゴブリンたちは大樹たちにより蹴散らされてしまった。無傷のゴブリンは逃げ、負傷したゴブリンたちは足を引きずりながら必死に逃げていく。逃げて遅れた者は見捨てられている。
ムッとした顔で左手を強く横に振った大樹、生き残り動けないゴブリンたちが飛んで来た槍に串刺しにされたのだった。彼は不満げな顔でゴブリンに背を向けバリケードの中へと戻って来た。そこへ、未結からの通信が入る。
「首都高速道路にゴブリン軍団が出現! こちらに向かって来ています」
通信を聞いた大樹は少し不服そうな顔をする。この通信は未結からの一方的なもので返答するには、彼女との通信をつなぐ必要がある。
「またゴブリンだと…… つまらん。特務と翔の部下にやらせるか…… あいつの予想通りなのもむかつくしな」
つぶやく大樹だった。未結の通信はまだ終わりでなかく、彼女は言葉を続けるのだった。
「軍団を率いるのはゴブリンロードです!」
ゴブリンロードは複数の集落を束ねる王様だ。ゴブリンたちが繁殖を繰り返す中で稀に誕生する個体で、二メートルを超える巨体と強力な魔力を持ち知能も高い。また、統率力はゴブリンボスとは桁違う、ゴブリンボスが多くて数千の数のゴブリンしか統率できないが、ゴブリンロードは数十万から百万の軍勢を指揮できる。
「なっ!? ゴブリンロードだと…… では俺が蹴散らしたのは囮か! ふははは! 面白いじゃないか」
笑った大樹は未結との通信をつなぐ。ゴブリンロードはその希少であり、また危険度からゴブリンロードが誕生する前にゴブリンの集落を駆除するため番傘衆としてもゴブリンロードの討伐数は少ない。
「大口だ。了解した。俺が向かう! 誰も手を出すなよ」
「えっ!? でも、南側の防衛は第二師団が……」
「うるさい! 俺が行くと言ったらいくんだ!」
一方的に怒鳴って大樹は通信を切った。スラスターを点火した大樹はコロッセオ豊洲の南側へと飛んでいく。
屋上にいる未結は怒鳴られ顔をしかめていた。彼女の横に会話を聞いていたレイが近づいて来て声をかける。
「大丈夫か?」
「怒られちゃいました……」
「ほっとけよ。一人でどうにかできるならやらせたらいい」
「うぅ……」
しょんぼりとした顔をする未結、レイは彼女の肩に手をかけ南の方角を指さす。
「ほら行くぞ」
「えっ!? レイさん? どこへ」
「あんな野郎でも死なれたら寝覚めが悪いからな。援護だけはしてやろうぜ」
「はっはい」
小さくうなずいて未結は返事をした。黒田と甘菜に北側に残し、二人は南側へと向かって来た。
「来たな…… 数は四万てとこか……」
「えぇ」
南西の方角をレイが指す。首都高はコロッセオ豊洲の南側にある道路の上に築かれ、東西に横断している。高速の出入口はコロッセオ豊洲を挟むように設置されている。南西の方角の高速道路の上にたくさんの小さな松明と松明に照らされた醜いゴブリンたちの姿がわずかに見える。四万のゴブリンの軍団が南西の方角から侵攻して来ていた。
ゴブリンの軍団の中央に玉座が置かれたこしがゴブリンたちによってかつがれている。こしには冠をかぶり革の鎧に身をつつんだゴブリンロードが座っていた。
「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
先頭が拘束の出口に差し掛かると、ゴブリンロードが前を指し叫び声をあげた。ゴブリンたちは一斉にかけだした。高速の出口に殺到するゴブリン、一部は出口を超え向かい側にある高速の入口から下りたり、壁を超え高速から飛び下りて一気にコロッセオ豊洲へと向かって来る。
南側のコロッセオ豊洲の出入口。北側と同様にバリケードが築かれ重機関銃と兵士が十人が設置されていた。北側と違うのは出入口横に階段があり、ここが横を走る鉄道の出口へと続く歩道と二階の出入口へとつながっていた。二階の入口にもバリケードが築かれ三名が守備を担当している。
南の出入口へと飛んで来た大樹はバリケード内に着地した。すでにゴブリンたちは防衛線を超えており戦闘が始まっていた。
「チッ! 前に出る。援護しろ」
「へっ!?」
アサルトライフルを構え、射撃している兵士に命令した大樹はバリケードから飛び出していった。スラスターに点火し銃撃の合間を縫ってゴブリンの前へと出た大樹だった。
向かって来た大樹にゴブリンは一斉に襲かかってくる。大樹は左手を前にだした。
「邪魔だ!」
「「「プギイイイイイイイイイイイイイ!!!」」」
大樹の手に動きと連動し、肩のケースから槍が飛び出し、彼に向かってきたゴブリンたちを串刺しにしていく。そのまま左手を右手に持っていたサブマシンガンへと持っていき、安全装置を外すした大樹は、右腕を伸ばしサブマシンガンの引き金を引いた。銃声が轟き目の前のいるゴブリンたちに命中する。
彼の周りにゴブリンの死体や彼らが持っていた手斧などの武器が転がっている。ゴブリンたちはまだまだ押し寄せて来ていた。
「うじゃうじゃ沸いて来やがって…… 本当に邪魔くさいやつらだ」
つぶやいた大樹は左手を天に向けた。パワードスーツが青白く光り始める。
「ハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
光が強くなっていく。強烈な青い照らされた、ゴブリンたちはまぶしく腕を前にだしを覆う。周囲に転がっていた武器や石やさらには地面に落ちた銃弾などが浮かび上がった。飛んだ物体は大樹の特殊能力年念動力によって操られているのだ。
「死ね!」
叫び声をあげる大樹、青白い光がはじけたように消えた。同時にゴブリンに向かって浮かんでいた物体が猛スピードで飛んでいく。目を覆っていいたゴブリンは飛んで来た物体をよけることができない。
「「「「「「「「「「プギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!」」」」」」」」」」
たくさんのゴブリンが一斉に悲鳴をあげた。飛んで来た銃弾や石はゴブリンを貫き、斧や剣などの武器は彼らに切り刻んでいく。大樹の目の前にゴブリンたちの無数の死体が積みあがっていく。
「おっと! チッ! 俺に気付いてやがったか」
体をそらしたレイ、彼の胸の前を石が一つ飛んで行き空へと消えていった。大樹が屋上にいる彼に向かって石を飛ばしたのだ。
「さぁ。そろそろ出て来るだろ。ここまでこけにされたらな……」
ニヤリと笑って顔を前に向けた大樹、転がる死体の向こうにこしに乗ったゴブリンロードがやってきていた。こしを持つゴブリンたちが歩みを止めた。彼らはこしを下すと同時にゴブリンロードが立ち上がった。
ゴブリンロードは左右にぎょろっとした瞳を動かす。
「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
無数の転がる死体を見たゴブリンロードが叫び声をあげた。走って三匹のゴブリンが二メートルほどあろうかとう大きな石の斧を運んで来た。
「ふふふ…… 覚悟しろ!」
大樹は笑ってサブマシンガンをゴブリンロードに向けるのだった。




