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滅んだ地球では銃と魔法と、パワードスーツが活躍する。  作者: ネコ軍団
第2章

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第72話 夜を超える

 地下にひっそりとただずむ金属の巨大な扉。見た目に大きな傷などはなく、ハンドルは銀色に磨かれ輝き、十年前の姿を残していた。偵察時に映像で確認したとはいえ目の前にある、無傷の扉を杏は信じられないという顔で見つめていた。


「よーし。任せてください。こんなのは……」


 前に出た大神が左手を右肩にのせ右腕を回す。どうやらパワードスーツの力で強引に扉をこじ開けようといううつもりらしい。


「ダメえええええええええええええ!!!!」

「えっ!?」


 杏が必死に叫ぶ。大神は驚いて行動を止める。大神の横に来た杏は彼をジッと睨みつける。


「もう! どうしてマジックフレーム2を着てるとそんなに頭筋肉なの! いつもは何するのもおどおどして遅いくせに」

「そっそんな…… ひどいですよ……」


「これは特殊な鍵なの。正規に解錠しないと中の警護システムが作動してデータ消去が行われるわ」

「警護システムが動いているんですか? 十年前のものですよ!」


 扉を指さす大神、この場所は十年前にツマサキ市に避難するために放棄されている。彼の指摘はもっともで警護システムを維持するための電力はとっくになくなっているのだ。

 杏は持っていたタブレットの画面を大神の前に出して見せる。


「見てこれを!」

「うん!? エーテル濃度…… ですか? これが何か?」


 タブレットの画面には、周囲のエーテル濃度が測定され、パーセント表示されていた。ちなみにこの測定値は大神のパワードスーツに計測機が秘密裏に装着されており測定しタブレットにデータを送っている。杏は大神の前から引い自分の元へと戻しながら答える。


「このエーテル濃度の数値は東京湾第三ゲートと同じなの!」

「うん!? どういうことですか?」

「東京湾第三ゲートはエーテルの濃度が一定な環境で食べ物は腐らずにレインデビルズも保管されてたわ」


 杏はタブレットの画面を見ながら淡々と大神に説明する。説明が終わり彼女はタブレットを閉じ金庫のような巨大な扉の横に立って扉に手をかけ振り返った。


「つまり地下のこの一帯をエーテルが守っているのよ。つまり警護システムは生きてるわ」

「えっ!? 本当ですか?」

「うん。ちょっと待ってね」


 タブレットを再び開きケーブルを取り出し接続する杏。彼女が出したケーブルは両端が細い長方形のコネクタをもつケーブルで機械と機会を接続するためのものだ。巨大な扉の横には操作基盤があり、杏は操作基盤にタブレットに接続したケーブルの逆側を操作基盤のコネクタに……


「あっあれ?」

「どうしたんですか?」

「もう! なんで接続コネクタの規格が違うの! ほいほい変えないでほしいわ!」


 ケーブルの先端のコネクタと、操作基盤のコネクタの形が違っておりすんなりとつながらないようだ。大神は心配そうに彼女をみつめている。


「誰よ…… コネクタの規格を変えたの…… まぁ私なんだけど…… ふん。平気よ。こんなの…… こんなこともあろうかと変換コネクタは持って来たもん。USBならタイプAまであるし…… もっと古いパラレルポートだろうがつなげてやるんだから……」


 ぶつくさとぼやきながら杏はリュックを床に下し、ケーブルの変換コネクタを取り出している。接続できるコネクタがあったのかケーブルを使いタブレット操作基盤をつなげた。


「やっぱり…… 無暗に空けなくてよかった」


 タブレットの画面を見ながら小さくうなずく杏だった。


「セキュリティは七重…… さすがおじいちゃんね。管理者権限のパスワードでの解除は不能ね…… セキュリティを解除して扉を解錠するには…… なるほど…… 一個三時間かしらね……」


 振り返った杏は大神に向かって口を開く。


「翔さんに連絡しくれる?」

「はっはい」


 階段の入り口にいる翔。周囲を警戒する、彼のディスプレイの右下に杏の姿が映る。杏を見た翔が声をかける。


「どうでした?」

「解錠に丸一日くらいかかります。プランAは廃棄。プランBへ移行してください」

「わかりました。一緒に夜明けを迎えましょう」

「私はすぐに解錠作業にかかります。後は頼みました」

「了解です」


 翔が返事をすると杏が姿が消えた。小さく息を吐いた翔は視線を前に戻した。


「シンシア…… 全員に通信回線を開いてください!」

「リョウカイシマシタ…… オハナシクダサイ」


 うなずいた翔はまっすぐ前を向いたまま口を開く。


「皆さん。聞こえますか。指揮官の相原です。明日の朝まで部隊はここに駐留し山神博士を援護します」


 翔は遠征隊全員に向けて通信回線を開き指示を伝え始めた。杏が言っていたプランAとは、データ回収が数時間で終わる想定のものだ。プランAではデータの回収と撤収を同時に進めツマサキ市に即時帰還するためのものだ。プランBはデータ回収に一日以上かかる場合で、データセンターに陣地を構築し杏の護衛をしながら夜を超えデータ回収後に撤収する。


「すべての車両を敷地内の駐車場へと即時に移動し、データセンターの防衛体制を構築と夜間戦闘の準備をお願いします。以上」


 通信を終えた翔は真顔で廃車が静かにたたずむ地下駐車場の光景を見つめていた。

 レイたち遠征隊はレインデビルズの巣窟である東京で最低でも一夜を過ごすことになったのだった。


「よし! ここの歩道橋の手前にバリケードを作成してくれ」


 データセンター二階につながる歩道の前に、レイと甘菜と第三師団の兵士三人が立って居た。レイの指示で甘菜と兵士三人がバリケード用の資材を持って歩道を塞ぐ。


「出来たよー」

「ありがとう。じゃあ次……」


 ディスプレイの左下に表示された、データセンターの周辺の地図へ視線を向けるレイだった。地図にはバリケードを設置する場所にバツマークが描かれている。地図を見つめるレイに急に通信が入る。


「おい!? どこへ連絡を……」

「レイ君。ちょっといいですか?」

「あっはい。なんだ?」


 レイに大樹と翔からの通信が入った。


「作業ご苦労さま。バリケードの地図に君の意見を聞きたいんだ」

「おい! 余計なことを言うなよ。俺が作ったんだ!」

「大樹! 黙っててくれ!」

「チッ……」


 舌打ちをした大樹。レイは大樹のことは気にせずに、翔の指示通りに地図を見つめ気になったことを伝える。


「えっと…… 北にある交差点を超えて来る敵を多く想定して北側の守りを厚くしています」

「当然だ! 北にはいくつものレインデビルズの巣があるんだからな」

「はい。それはいいんですけど……」

「なにか? 気になることがあるのかい?」


 レイは小さくうなずき、ディスプレイの地図の南側へ視線を向けた。


「はい。南にある俺たちが超えて来た首都高速は途切れてない。あそこを渡って来る敵ももう少し警戒した方が……」

「おい。何を勝手なことを言ってるんだ?」


 大樹がレイの言葉を遮った。首を横に振ったレイは不満げに彼に答える。


「勝手って…… 聞かれたから答えただけだ。すいません。相原指揮官。副指揮官様は俺の意見は聞きたくないみたいなので通信を終わりますね」


 通信を終わらせようとするレイだった。しかし、大樹はレイの態度が気に入らないのかさらに食ってかかってくる。


「おい! 貴様! 階級をいえ! いくつだ!」

「階級って…… 姉ちゃんが二番だから…… 俺は三番傘(さんばんがさ)だ!」

「ふん! 俺は六番傘(ろくばんがさ)だ! 俺の方が階級が上だ! 少しは口の利き方を考えるんだな」


 指を伸ばしながら考えてレイは大気に答える。鼻息を荒くしてレイに向かって叫ぶ大樹だった。番傘衆には役職の他に階級がある。階級は十二段で一番下は一番傘(いちばんがさ)で、次は二番傘(にばんがさ)と増えて、一番上は十二番傘(じゅうにばんがさ)まで続く。重要な役職につくには階級が上がることが必須である。ちなみに、総司令官の武瑠は十一番傘で杏は十番傘である。


「大樹! なら黙るのは君ですよ。僕は指揮官で七番傘ですからね。彼は僕の許可を得てこの会話に参加しています」

「クッ…… クソが!」

「うん!? 大樹!? あぁ! もう……」


 通信を切った大樹だった。彼は翔と一緒ではなくデータセンターの屋上にいた。大樹は部下十名と屋上のヘリポートの修繕や弾薬を運び込び陣地を構築作業をしていた。


「おい! 少し外す。あとは任せたぞ!」

「はっはい」


 大樹は部下に作業を任せ、一人で屋上から室内へと入っていった。屋上の扉から室内へ入り一階下へ下りた大樹。薄暗い廊下を一人で歩いていた。


「クソが…… 誰がここを制圧したと思ってやがる……」


 ぶつぶつとつぶやきながら大樹は廊下を進む。ある部屋の扉の前に差し掛かった時に扉の向こうからかすかに音がした。


「うん!? まだ生き残りがいやがったか!」


 扉の向こうかうの音に大樹が気づいた。部屋の中にリザードマンの生き残りが居るようだ。腰に手を回し大気は装甲に収納していた、サブマシンガンを抜き安全装置を外し扉に手をかけた。

 静かに扉を開けて中へと入る大樹だった。部屋の中は倉庫のようだ。ビルの修繕に使う資材などが乱雑に置かれている。奥には段ボールが積まれて置かれている。段ボールには水や乾パンという文字が見え、災害用の備蓄の一部が置かれていたようだ。

 段ボールの後ろで何かが動いた気配がした。


「出てこい!! 撃ち殺してやる!」


 天井に向け威嚇するようにサブマシンガンを乱射する大樹だった。銃声に反応するように段ボールの横に何か飛び出して来た。


「えっ!? はははっ! 俺にもまだ運があるようだ」


 飛び出して来たものを見て大樹はニヤリと笑うのだった。

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