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滅んだ地球では銃と魔法と、パワードスーツが活躍する。  作者: ネコ軍団
第2章

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第64話 遠征の前に

 ツマサキ市にあるレイと甘菜の家。窓の外に夕日が見える自室で、レイは両手に迷彩柄のリュックを持っていた。ベッドの上には弾薬や携帯食糧や下着などが散乱しており、彼は淡々とリュックにそれらをつめていく。


「レイくーん。ちゃんと準備できた?」


 荷造りが終わりリュックを閉じた直後、部屋の扉が開いて甘菜が顔をだす。振り向いた彼は笑顔で彼女に答える。


「あぁ。大丈夫だよ」


 返事を聞いた甘菜は部屋の中へ入って来てリュックを指す。


「ほら鞄の中ちゃんと見せて!」

「なんでだよ」


 閉じたばかりのリュックを開けて、見せろと言われ抵抗するレイだった。抵抗された甘菜は不服そうに口をとがらせる。


「お姉ちゃんがチェックしてあげるの! ほら! 昔は修学旅行とかで保護者チェックってあったじゃん!」

「はぁ!? あのなぁ。それは子供の場合だろ!! 下着とか入ってるんだぞ!」

「もうお姉ちゃんはそんなことじゃ恥ずかしがりません」

「俺が嫌なの!!」


 リュックに手を伸ばそうとする甘菜、リュックと彼女の間に体を入れリュックを抱え込んで背中を向け守るレイだった。


「こーら! わがまま! 悪い子!」

「うるせえ!」


 必死にリュックを守るレイ、甘菜は強引に彼からリュックを奪おうと手を伸ばす。


「何してるの! うるさいわね」


 扉がまた開いて夏美が二人を叱りつけた。二人の動きが止まった。レインデビルズ相手にひるむことはない二人だが、母に叱りつけられるとすぐに手を止めるのは子供と変わらない。


「レイ君が荷物を見せてくれないの! ちゃんと確認しなきゃダメなのに!」

「必要ないって断ってるだろ!」


 二人の言い分を聞いた夏美。呆れた顔で甘菜に口を開く。

 

「もうあんたねぇ。レイだってもう大人なんだからほっときなさい!」

「そうだよ! ほっといてくれよ」

「ぶぅ…… わかった」


 ほっといてくれと言われ、甘菜は下唇を突き出し名残惜しそうに、レイの部屋を後にするのだった。レイはほっと安堵の表情を浮かべる。

 十数分後…… 戦闘服に身を包みリュックを背負った二人が一階へと下りて来た。今日は杏から言われたデーターセンターへの遠征に出発する日だった。


「お弁当とみそ汁だよ。夕飯に食べな」


 下りて来た二人に見えるように、風呂敷に包んだ重箱とスープジャーをカウンターの上に置く夏美だった。中身は夜祭の時と同じく重箱におにぎりが詰まっていて、スープジャーには味噌汁が注がれている。


「おぉ! ありがとう。おばさん」

「わーい」


 嬉しそうに二人は風呂敷包みとスープジャーを持った。店の出口へと向かう二人。慌てて駆けて来た夏美が背後から二人を抱きしめた。


「えっ!? 叔母さん……」

「お母さん……」


 ギュッと二人を抱きしめる夏美の手は震えている。抱きしめる力が強くなっていき、夏美とレイは密着するように引き寄せられる。


「二人は大人だけど…… いつまでもあたしの子供だよ。だから…… ちゃんと帰って来るんだよ」


 泣きそうな震える声の夏美だった。二人は横を向いて顔を見合わせてうなずいた。二人は夏美の手の上にそっと自分の手を置く。


「大丈夫。帰ってくるさ」

「うん! 二人でちゃんとただいまって言うよ。だから大丈夫だよ。お母さん」


 二人が夏美の手を強く握りはなす、夏美は静かに手を外しおろす。振り返った二人の目に涙を溜めた夏美が映る。今にも泣きそうな夏美が精いっぱいの笑顔を作った。


「わかった。いってらっしゃい」

「あぁ。行ってきます!」

「行ってきまーす!」


 手を振って笑顔で扉を開け、二人は外へと出て行った。笑顔で二人を見送った夏美は扉が閉められると、静かに近くの椅子に座り顔を手で覆うのだった。

 外へと出た二人は軍用車両で、迎えに来た未結とともに基地へと向かう。基地の脇に巨大な軍用艦が停泊している。長方形の飛行甲板を持ち、前面にウェルドッグを備えた艦艇だ。


「あれ…… 米軍が使ってた強襲揚陸艦だろ? まだ動くのあったんだな」


 軍用艦を見つめレイがつぶやいた。

 

「えぇ。PA334です。首都奪還用にオポシットタウンで整備させみたいですね」

「ははっ…… 昔だったら囚人に軍用艦を改良させてたら問題がとか文句をいわれただろうな」

「ですね。でも…… そんなこと言ったら何もできないですよ。ここは」


 強襲揚陸艦はツマサキ市や大島などの施設奪還用に杏が整備させていたものだった。ちなみに名前はPAは略称で正式にはパーフェクトアプリコット334が正式名称である。


「遠征軍はあれに乗っていくのか……」


 うらやましそうに強襲揚陸艦を見つめるレイだった。彼は強襲揚陸艦に乗ってみたいのだ。


「私たちは先遣隊としてV428で上陸しますからね」


 ハンドルを握って前を見ながら未結も少し残念そうにする。彼女も強襲揚陸艦に乗ってみたかったようだ。特務第十小隊の任務はV428で先発し上陸地点の安全を確保することだ。

 軍用車両は事務所には寄らずにガレージへ直接向かう。


「おぉ。来たなお疲れさん」


 ガレージに置かれたV428のハッチの横に石川が立って居て、やって来たレイたちに手を振る。未結は石川の前を通りすぎ車両をV428の中に停車させた。

 車から降りた三人は石川の元へ向かう。未結は彼をまじまじと見つめる。普段は戦闘服を着ているだけだが、今回はボディアーマーを装備しヘルメットを抱え腰には拳銃が見える。


「わざわざ見送りに来てくれたんですか?」

「いや…… 僕も一緒にこれに乗るんだ。途中まで一緒だ」


 V428を右手の親指で指さして答えた石川、彼はそのまま抱えていたヘルメットを被って顎の下でベルトを止める。


「えぇ!? 珍しいですね」

「あぁ。まぁ。お前さん達が東京にいる間は船で待機してるがな」


 石川が現場に出ることは滅多になく驚く未結だった。


「そろったね」

「おはようございます」


 ハッチの前に加菜と黒田がやって来て三人に声をかけた。


「そろそろ出発ですか?」

「いや…… あと二人だけ乗客が来るから待ってな」


 ガレージの入り口に視線を向けた加菜、二人の乗客という言葉に質問したレイは首をかしげるのだった。しばらくするとガレージの前に車が停まり、直後に杏と大神がパタパタと走ってガレージへと入って来た。杏はピンクのリュックを背負い、大神はレイたちと同じ迷彩柄のリュックを背負っていた。

 

「おまたせー!!!」

「おまたせしました」


 ハッチの前で待つレイたちの元へと駆けてきて頭を下げる二人。レイは二人を見て驚いた顔をする。


「杏ちゃんと大神さんも一緒なのか?」

「うん。途中までね。大神さんの装備は船で運ばないといけないからね。途中でPA334に乗り換えよ。石川のおじちゃんもね」


 笑顔でレイの質問に答える杏だった。


「ほら! じゃあ行くよ! さっさと乗りな」


 加菜が膝に両手をつき、息を整えている大神の背中を軽く叩き、全員に搭乗をうながすのだった。全員がV428に乗ると機体がゆっくりと動き出す。夕日に照らされる空へとV428は飛び立った。

 上昇するV428の窓から強襲揚陸艦PA334が見える。遠征軍のパワードスーツや物資が搬入されていた。レイと甘菜の二人は窓の前に並んで立って外の景色を見つめていた。


「私たちは東京湾第三ゲートに泊って明日の早朝に出発よね」

「そうだよ。夜明けと共にPA334の本隊が出撃する。安全確保のために先行隊を出すけど夜間飛行は危険だからな」


 作戦内容の確認する二人だった。特務第十小隊は本隊であるPA334に、先行し豊洲へ向かい。豊洲市場付近の安全を確保することが第一の任務だ。その後は本隊と合流しデータセンターへ同行する。


「それともう一つ理由があるのよ」


 二人の会話に杏が割り込んで来た。レイと甘菜が振り返ると二人の背後に杏がいつの間にか立って居た。


「海ほたるに居るレイルに会って少し話そうかと思ってね」

「えっ!? レイルちゃんは東京湾第三ゲートに居るの?」

「うん。他の皆には内緒だよ」


 レイルに会うと聞いて驚く甘菜だった。杏は甘菜に笑顔でうなずいて答える。すぐにV428は東京湾第三ゲートへと到着するのだった。

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