第54話 失格者たち
レイルが保護されてから数日後…… 夕暮れの第三高等学校。ソファとテーブルが置かれ、奥の壁には窓がありその前に黒く輝く机が置かれていた。ここはレイたちが通う高校の校長室だ。机には中年の男性が椅子に腰かけまっすぐに前を向き、机の前には陽菜乃が立っていた。
「生徒たちからの証言もあります。温守君への磯先生の行為はやりすぎです」
「わかりました」
男性と陽菜乃は三日前に起きた虎太郎から、レイへの暴力について話をしているようだ。
陽菜乃の前にいる男性は小太りで、髪の毛は短く白髪の混じった七三分け。顔は丸く目はぎょろっとしてまん丸で、鼻は低く口は大きめの口をして額は常に油でてかっている。服装は灰色のスーツに派手な柄のネクタイをしめていた。
机に肘をおき男性は両手を組んで難しい顔をした。
「ただ…… 校内での発砲は危険でやりすぎです。やはり彼には処分を……」
「教頭!」
レイを処分しようとする男性、陽菜乃は両手を机について叫ぶ。男性の名前は古淵鷲士、五十三歳。校長室にいるが彼は校長ではなく教頭だ。第三高等学校の校長は高齢で、現在は病気で入院しており、彼が校長の代理を務めている。
身を乗り出すくらい顔を前につきだし陽菜乃はジッと古淵の顔を見た。
「彼の銃の所持は番傘衆として認められた行為です」
「しっしかしですね。教師に向けて発砲するなど…… まずは話し合いを……」
「その教師が話をせずに校庭で軍人を押さえつけて殴ったんですよ。結果がどうなるかくらいわからないんですか」
「ですが…… 生徒が教師に向かって……」
「教師という立場ならそこを理解し慎重に行動すべきでは?」
古淵は陽菜乃の問いかけに黙ってしまった。彼はハンカチを出して額の汗をぬぐっている。陽菜乃は姿勢をただすとジッと古淵を見た。
「温守くんへの処分は無しにしてください。いいですね?」
「わかりました。訴えを起こした磯先生にもその旨を伝えます」
「ふん!」
大きく鼻で息を吐いた陽菜乃は、古淵に背を向けて扉の前に立って振り返る。
「ありがとうございました」
頭を下げて礼を言った陽菜乃は扉を開け出て行った。
「ふぅ…… クソ!」
悔しそうにする古淵、直後に扉が開いた。黒いパンツスーツの姿の女性が立って居た。紫色の長い髪をした美しい姿の女性は、扉を開けたまま古淵に笑顔を向ける。彼女は古淵の秘書で話し合いの陽菜乃との話の間は外で待機していた。
「磯先生をお連れしましょうか?」
「お願いします」
座ったまま女性に頭を下げる古淵、にやりと笑った女性は扉を閉めた。しばらくして再び部屋がノックされた。
「磯先生をお連れしました」
「どうぞ」
扉が開いた。女性が扉を押さえ、横を向き虎太郎に向かって部屋の中を手で指していた。虎太郎は彼女の促され校長室の中へ入る。古淵は虎太郎を見て右手をあげる。
「悪いねぇ。わざわざ来てもらって」
「教頭先生! あいつの処分は……」
陽菜乃の時と違い女性は虎太郎に続いて部屋に入り、扉を静かに閉め彼の背後へと忍び寄っていた。彼女は右手の指を鳴らす。
「うわ!?」
女性が指を鳴らすと同時に天井が青白く光り、天井が液体のように波打って、ごつごつとした緑色の植物の根のような触手が垂れてきた。触手は虎太郎に手足に絡みつき両腕を上にして縛り上げた。
「きゃはは。処分なんてするわけないじゃん。目立つ行為はしないでっていつも言ってるよね?」
下品に笑いながら女性は虎太郎の前に回り込んで彼の顔を覗き込む。
「なっなんですか!? この人は? きょっ教頭?」
「黙りなさい。彼女は我らが女神様だ」
「そうだよー!」
ニコッとほほ笑んだ女性がスーツをつかんで、引っ張ると服が破れて白いローブを身にまとったヘスティアへと変わった。虎太郎はヘスティアに謁見したことはなく驚いて声をあげるのだった。
「へっヘスティア様!? ありがたき…… ギャッ!」
右手を下に回しヘスティアは、虎太郎の股間をわしづかみにした。驚きと急所をつかまれた痛みで彼は声をあげた。
「私たちは聖獣様に受け入れてもらうために活動しているのよ。あなたは何なの? 傘と喧嘩なんかしてやる気ある? しかもあの処女に熱をあげてるわよね…… 臭いでわかるの…… よっ!!!」
「うわああああああああああ!!!」
ぎゅっと強く股間を握り虎太郎の顔が苦痛に歪み悲鳴のような声をあげる。ヘスティアは満足そうに虎太郎を見つめている。
「はぁはぁ…… おっお許しください」
ヘスティアはは虎太郎の股間から手を離した。にやにやと笑って虎太郎と見ながら、ヘスティアは右手を自分の顔へ持っていき手についた臭いを嗅いでいた。
「クンクン…… あらぁ。シュウくん。この子…… 童貞じゃん! つまんなーーーーーーーーい。はい!!! 終わりよ。終わり終わり!!!」
「へっ!?」
「もっ申し訳ありません」
慌てて立ち上がって古淵はヘスティアに頭を下げた。すぐに顔をあげ古淵は虎太郎と蔑んだ瞳で見た。
「磯先生…… どうやらヘスティア様のお眼鏡にはかなわないようですね…… 残念です」
「うん。私はこの子嫌い! 破門にしましょう」
二人の会話を聞いていた虎太郎が慌てて口を開く。
「なっ!? なぜですか! わっ私は聖獣様に身を捧げる覚悟があります。どうすれば……」
両手を上にあげ縛られたまま虎太郎は、うろたえた表情でヘスティアに訴える。彼女は古淵をチラッと見た、目があった彼は笑顔を向けた。
「聖獣様への忠誠を誓う?」
「もっもちろんです」
「じゃあこれ!」
「これは……」
ヘスティアは薄く透けたローブから見える、大きな胸の谷間に手をつっこんで一枚のチラシを出し、虎太郎に突き出した。チラシはツマサキ市で行われる夜祭のものだった。市民への告知はまだ行われていないチラシを見た虎太郎は目を目を丸くする。ヘスティアはやや怒った口調で虎太郎に口を開く。
「傘は聖獣様の夜を奪う気なの。許せないでしょ。聖獣様に夜をお返ししなさい」
「はっはい。かしこまりました」
大きくうなずく虎太郎、ヘスティアは笑顔で彼の耳元に口を近づける。
「そしてね…… あなたは…… あの女教師を……」
「そっそんな!? よろしいのですか? 神聖なる夜会でそのような……」
「構わないわ。聖獣様へ捧げるのよ。あなた達の神聖なる純潔を!」
「わっわかりました」
うれしそうに頬を赤くして返事する虎太郎。ヘスティアは満足げに笑った。
「それじゃあ…… 力をあげるわね!」
「んふぅ!」
笑顔でヘスティアは、虎太郎の唇に自分の口を近づけた。青白く光りだすつやっぽい彼女の唇、なんとも言えない色気をはなつ唇を見た、彼の股間は大きくふくれあがった……
「グボオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
ヘスティアの口から緑色の太い触手が飛び出し、虎太郎の口の中へ入っていく。苦しそうな表情になり、圧迫された目は大きく開き飛び出しそうになっていた。
虎太郎の口に職種の尻尾が飲み込まれた。ヘスティアはうなずきながら口を手で拭う。同時に虎太郎と拘束していた触手が消えた。虎太郎はその場に膝をついて倒れた。ヘスティアは彼に近づき顎を手でつかんだ。
「じゃあ行きなさい。必ず成功させるのよ」
「はっはい…… すべてはヘスティア様の御心のままに……」
ヘスティアを見つめ恍惚な表情をうなずいた、虎太郎は立ち上がり静かに部屋を出ていくのだった。ヘスティアは古淵が座っている椅子の横に立って虎太郎を見送るのだった。
「なかなかよさそうね…… 彼…… 愚直で……」
「ありがとうございます。敬虔さは見習うところがありましたが少し目立ちすぎました。まぁ大義の為に身を捧げられるので本望でしょうが」
「ムっ!」
不吉な笑みを浮かべる古淵、横を向いて口を尖らせたヘスティアだった。彼女は古淵の肩をつかんで自分に向かせると顔を近づける。
「もう! いじわるね。そういうことは言っちゃダメよ。おかげで私と大河君が動きやすくなるんだから!」
「そうですね…… 大使様との時間をうまく利用できることを願ってます」
「ありがとう」
ニコッと笑って礼を言ったヘスティアは視線を下に向けて舌なめずりをした。
「はい。お仕事おーわり!」
ヘスティアがパチンと指をならした。天井からまた触手が伸びて来て古淵の両手を、椅子の背もたれ後ろで縛り付けた。もう一つの触手は器用に動き、彼のズボンのベルトを外した。
「えっ!? なっなにを!? ヘスティア様!?」
さらに触手は古淵のズボンと下着をずり下した。動揺する古淵にヘスティアは笑って答える。
「薫陶の騎士のシュン君! あなたは今から私…… ううん。あなたの女神を癒やすのよ」
「えっ!? そんな急に…… はうわ!!!!」
机の影でしゃがんだヘスティアは、古淵の股間に顔をうずめるのだった。椅子に座った古淵は背もたれに体をのけぞらせ頭を上に向けあえぐのだった。




