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滅んだ地球では銃と魔法と、パワードスーツが活躍する。  作者: ネコ軍団
第2章

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第53話 異文化コミュニケーション

 エルフの少女は椅子に座った甘菜の膝の上に乗っている。目の前に立って居る杏は、机の上に置いたタブレットを操作しエルフの少女に顔を近づける。


「じゃあ…… 始めるわね」


 少し緊張した様子で、エルフの少女に声をかけた。愛生は杏の側に立っており、他のメンバーは自席について見守っていた。


「チーインズドネイシア?」

「???」


 杏はレイたちが理解できない言葉を、エルフの少女になげかけた。エルフの少女は首をかしげた。杏は小さくうなずいてタブレットをまた操作する。


「違うみたいね。ガーリア。ラジールゼンアール?」

「???」


 タブレットを操作しながら、また杏は理解できない言葉で、エルフの少女に声をかけた。エルフの少女は再び首をかしげた。彼女の反応を見ながら杏はまた小さくうなずく。


「これも違うのか…… じゃあえっと…… アイルウェルンズ?」

「アイール!」


 杏の言葉に今度は嬉しそうに笑顔で反応するエルフの少女だった。杏は嬉しそうに笑い、自分を指さしてさらに言葉を続ける。


「おぉ! スコッテショリーショ杏!」

「アッアンズ…… スコッテショ! レイル!」


 エルフの少女は自分の胸に手を置いて杏に答えた。杏は彼女の言葉を聞くと小さくうなずき全員に口を開く。


「この子はレイルって名前みたい」


 嬉しそうにはずんだ声で、エルフの少女の名前を全員につげた。愛生以外の者は驚いた顔をする。


「杏ちゃん…… この子の言葉が分かるのか?」

「うん。おじいちゃんの資料にいくつかエルフ言語はあったからね…… よしこれでなんとかなりそう」


 杏はタブレットを操作しながら、レイの問いかけにうなずいて答える。タブレットから手を離した杏は彼女の後ろに居る愛生へ口を開く。


「愛生さんのスマホに翻訳機能を送ったわ。これで彼女とコミュニケーションをとれるはず」

「ありがとうございます。よかったですわ。これでレイルちゃんとたくさんお話しできますわ」


 嬉しそうに笑う愛生、杏はレイルの前に立って彼女に顔を近づける。


「レイル。イスンスリーシャンマーク?」

「アンドゥーラルーシ! ボッケドニアアニーア! アンドゥーラジャーシーフェロー……」

「アイル! モンテゲーロラルーシドニアニーア?」

「アッアイール……」


 笑顔でうなずいた杏は石川へ顔を向けた。


「レイルは帰り道はわからないみたい。ここで保護するしかないわね」

「大丈夫なのか?」

「うん。大丈夫よ。武瑠お兄ちゃんには保護することになるかもとは伝えてるから…… 後はコミュニケーションをとって情報をできるだけ引き出すしかないわね」

「そうか」


 腕を組んでうなずく石川だった。


「レイルの保護は開発部と生体調査部でするから安心してね」

「あぁ。申し訳ないけど頼むな」

「いいのよ。私もエルフと話せるの楽しいから!」


 笑顔でうなずいた杏はまたレイルに顔を近づけた。レイルは杏を見て笑う、言葉を話せる彼女が居てうれしいようだ。


「アキマルタンエストーニア!」

「アイール!」


 体を斜めにして手で愛生を指して話をした杏。レイルは彼女との話を終わると、甘菜の膝から下りた。


「キブロス!」


 右手をあげて甘菜に笑顔を向けるレイルだった。


「甘菜姉ちゃんにありがとうって言ってるのよ」

「そうなんだ。いいこだね」


 レイルの頭を撫でた甘菜だった。甘菜が撫でるのを辞めると、レイルは愛生の元へ駆けて行った。愛生はしゃがんでレイルを抱きしめるのだった。


「石川のおじちゃんとみんなに一つお願い。開発部が公表するまでレイルの存在は内緒よ。彼女は大人しいけどレインデビルズには違いないからね。特に市長とかに知れたら面倒だからね」


 全員が小さくうなずくのだった。レインデビルズは人類の敵であり、レイルは小さい子供であってもレインデビルズなのだ。町の人間たちによりレイルが迫害される可能性は高く、彼女の保護を秘密にするという杏の言葉に皆すぐに納得したのだった。

 杏はさらに石川に尋ねる。


「他にレイルの存在を知ってるのは?」

「加菜ちゃんと武瑠だけだよ」

「わかった。なら知られても執行部までね……」

「加菜ちゃんには僕から伝えておくよ」

「ありがとう」


 石川は右手をあげ笑顔で答える。杏はうなずいて答えると愛生とレイルの元へ向かう。愛生はレイルと手をつないで立って居た。近づいてきた杏に愛生は困った顔でたずねる。


「杏ちゃん。レイルちゃんをどこに連れて行けばいい? さすがに基地内に住まわせるのは……」


 レイルと手をつないだ愛生が杏に尋ねる。杏はポケットからカギを出した愛生に差し出した。


「町はずれの五十一番倉庫を使って…… あとは外に出るときにこれをかぶせればいいわ」

「うーーー」


 鍵を愛生が受け取ると杏はポケットに手を突っ込み。大きな麦わら帽子を出してレイルにかぶせた。彼女の特徴的な耳は帽子と髪に隠れ目立たなくなる。帽子をかぶせられたレイルは、少し不満そうに両手でつばを持った。その後、彼女はかぶせられた帽子を上目で不思議そうに見つめていた。愛生はその様子を見てほほ笑んでいる。


「後は…… ご飯ですねぇ。おっぱいとかあげればいいのかしら……」


 大きな自分の胸を下からつかんでレイルを見る愛生だった。


「愛生さん!? あの…… お祖父ちゃんの資料からあるんで…… というかそもそもおっぱいなんてでないですよね?」


 子供のいない愛生の胸からはもちろん母乳はでないはずだ。しかし、彼女は自信満々に杏に答える。


「あらぁ。ママは子への愛があれば母乳くらい出せますわ。そっちの方がいいですわよね? レイルちゃんも!」


 愛生は体を曲げレイルの顔を覗き込み、胸を持って母乳を与える動作をして笑顔で同意を求める。言葉を理解できないレイルは首をかしげている、彼女は愛生が笑顔なのが嬉しいのか笑っている。杏子は愛生の行動に額を押さえて首を横に振るのだった。


「もう! 変な物を食べさせようとしないでください! 保護するんですから!」


 杏は愛生とレイルの間に体をいれ両手を広げた。愛生は体を起こして残念そうな顔をした。


「ほわぁ!? 変な物ってひどいですわ…… そうだ!」


 視線を動かしレイを見た愛生は何かを思いついた顔をした。彼女は胸をつかんでレイに向け声をかける。


「レイちゃん! 飲んでみませんか? 私のおっぱい! ほら! 飲んでみたら変な物じゃないってわかりますから!」


 愛生はレイに近づいて胸を差し出しだ。後ずさりして逃げようとするレイに愛生は胸を突き出し迫ってくる。


「えっ!? あっあの……」


 近づいてくる愛生の大きな胸に、動揺したレイはしどろもどろになって声がでない。レイの背後から近づいた甘菜が、二人の間に割って入った。


「ダメです! レイ君には私のおっぱいがあるんですから! ねぇ?」

「えっ!? 姉ちゃんまで何を!?」


 振り向いた甘菜は自分の胸をつかんでレイに向かって差し出す。戦場では勇ましいレイも、姉の突然の奇行に混乱し再びあとずさりを始める。今度は未結がレイと甘菜の間に両手をいれた。未結は両腕を開き二人を押してはなした。


「ダメです! そんなの不潔です!」

「ちゃんと毎日シャワー浴びて洗ってるから不潔じゃないもん!」


 甘菜は未結と顔を近づけ、不満そうに口を尖らせる。眉間にシワを未結も負けじと、甘菜にきつい顔を向ける。

 二人を見た愛生は困った顔で、右のほおにひと指し指をあてるのだった。


「あらあら姉妹喧嘩かしら…… ダメよぉみんなで仲良くしないとママは悲しいですわ」

「「誰のせいだと思ってるんですか!!!」」


 同時に愛生に顔を向け叫ぶ甘菜と未遊だった。杏がレイルの手を引いて愛生の背中のつかんだ。


「もう! 愛生さん! さっさと行くわよ! ごめんね。みんな!」

「あらあら!? またねー! レイちゃーん! 甘菜ちゃーん、未結ちゃーん」


 背中を杏に押され愛生は事務所から名残惜しそうに出て行った。


「ふぅ…… えらい目にあったぜ」


 事務所の扉が閉まるとレイは、小さく息を吐き額の汗をぬぐう仕草をした。彼の背後にすっと甘菜が寄って来る。甘菜は冷めた目でレイを見つめる。


「なんか残念そうじゃない? 本当は愛生さんのおっぱい飲みたかったんでしょ?」

「ばっばか。んなわけあるか!」

「ふーん…… やっぱり代わりに私のあげようか?」

「やめろ! もう!」


 笑顔で甘菜は胸を張ってレイに近づく。レイは両手を前にだして拒否する。彼の背中の裾を誰かが引っ張った。


「じゃあ私のじゃダメですか?」

「えっ!? もう先輩まで……」


 振り向いたレイ、背後に未結が立っており顔を真っ赤にし、彼女の平たい胸に手を当てていた。甘菜が二人の間に両手をいれて割り込んだ。


「ダメ! レイ君はお姉ちゃんのが良いよね。私の方が大きいし!!」

「なっ!? 大きければいいってもんじゃないですよ。形とか柔らかさとかありますし! 甘菜さんのは大きいだけで硬そうですもんね」

「なっ!? 未結ちゃん! ひどい! ぺったんこ!」

「ぺっぺったんこ…… 胸は大きいとすぐに垂れるそうですよ!」

「きーーーーーーーーーーーー!!」

「いい加減にしろ! 両方いらねえよ!!!!!」


 目の前で醜い争いをする二人に、顔を真っ赤に左右の手で二人を軽く、どけ自分の席へと逃げ帰るレイだった。二人はさみしそうに彼の背中をみつめる。その後、互いの顔を見て眉間にシワを寄せる甘菜と未結だった。


「ははは! もてもてですぇ。レイ君は」


 自席に戻ってきた、レイに向かい席に戻っていた黒田が、笑いながらからかってきた。レイは冷めた目で彼を見た。


「いやぁ。マー君ほどじゃあ……」


 にやにやして愛生が、使った愛称で黒田を呼ぶレイだった。黒田はマー君と呼ばれ顔を真っ赤にする。


「レッレイ君?! そのあだ名で呼ぶのやめたまえ!」

「どうしようかなぁ…… うーん。やっぱりマー君で!」

「きっ君と言う人はぁ!!」


 怒ってレイを捕まえようとする黒田、レイは彼の手をかわして背中を向けて逃げ出すのだった。


「はぁ…… もう本当に…… なんだったんだ…… あの人……」


 レイを追いかける黒田、甘菜と未結は互いに睨みあっている。石川は机の上に肘をつき手にあごを乗せ、四人を眺めながらため息をついてつぶやくのだった。

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