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滅んだ地球では銃と魔法と、パワードスーツが活躍する。  作者: ネコ軍団
第2章

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第52話 急に母が来たので

 特務第十小隊の事務所。自席に石川が座っていた。彼の前には自販機で買ってきた飲みかけの缶コーヒーが置かれていた。机の上に肘を置いた石川が前をジッと見つめる。


「でっ…… 連れて来ちゃったと…… はああああ」


 石川の視線の先に甘菜が立ち、彼女の太ももの後ろからエルフの少女がのぞいている。レイと甘菜は森で気絶したエルフの少女を保護し基地へ連れ帰って来た。心配そうに甘菜の後ろで未結が見つめている。石川がチラッと黒田を見た、彼は石川と目があうとにこにこと笑う。年長者である黒田から、何かしらの説明があると期待した石川だったが、笑みをかえされるのみだったので彼は少し困った顔をするのだった。

 甘菜の横に立って居たレイが口を開く。


「どうします?」

「どうしますって…… あのね。ここに連れてくる前に連絡をくれよ。こっちだって受け入れ態勢ってもんがな……」


 エルフの少女を見つめ、眉毛を下げより困った顔をする石川。エルフの少女は人間の言葉はわからないが、石川の表情で自分が、あまり歓迎されてないと察してしょんぼりとうつむくのだった。


「大丈夫だよ」

「ラランス!」


 優しく声をかけ甘菜が、エルフの少女の頭を優しく撫でてほほ笑む。少女は撫でられ嬉しそうに目をつむっている。難しい顔で石川がジッとレイを見た。


「だって…… 機内で目を覚ましたら姉ちゃんにくっついて離れないし…… それに」


 隣で仲よさそうにしている甘菜と、エルフの少女を見たレイは真剣な表情をした。


「かわいそうじゃないですか! 小さい子が一人でレインデビルズに追われたんですよ……」

「もう…… わかったよ。とにかく来てしまったんだからな。なんとかするしかないな」


 幼い頃にレインデビルズに両親を殺され、逃げていた自分とエルフの少女が重なった彼は保護しなきゃという使命感のみで行動した。帰投する際に加菜や未結が本部に連絡を促したが、受け入れを拒否されることを恐れ連絡しなかったのだ。

 石川は机に置かれた電話の受話器に手をかけ、体を横にし甘菜の後ろに居る未結を呼ぶ。


「未結ちゃん。彼女の状態は? 危険なウィルスとかは持ってないよな?」

「はっはい。V428で甘菜さんに生体スキャンを行ってもらいました。異世界の病原菌などは確認できませんでした…… むしろ……」

「むしろなんだい?」


 未結が背中を向けている、エルフの少女をチラッと見て石川に答える。


「彼女の表面に付着していたものはほとんど地球の物質でした。環境変化による酔いなども確認できません」

「つまりこの子は地球に来て長いと……」


 小さくうなずく未結だった。石川は小さく息を受話器を持った。


「ふぅ。わかった。とにかくまずは未結ちゃんのお兄さんに報告をしないとな」


 受話器を耳に当て石川は未結の兄であり、番傘衆の総司令である武瑠へ電話をする。


「石川だ。忙しいのに悪いねぇ。実は……」


 武瑠に事情を説明する石川、深刻な表情で話をしている彼をレイ、甘菜、未結の三人は心配そうに見つめていた。エルフの少女は甘菜の太ももをギュッと捕まえたまま不安そうにしていた。


「はい。わかった……」


 大きくうなずいて石川が電話を終えた。室内にいる全員が彼に注目する。


「調査に杏ちゃんがこっちに来る。それまでこの子を見張ってくれってさ」

「わかりました」


 武瑠は杏を特務第十小隊に派遣し彼女が調査に当たるという。四人は杏を待つことになったのだった。各自は席に戻り待機している。エルフの少女は甘菜の膝の上に座り、レイが甘菜に促され時々ぎこちなく彼女の相手をしていた。

 十分ほど後。事務所の建物のドアが開く音がして、パタパタという廊下を走って来る足音がする。杏が来たのだろうと全員が身構えた。


「こんにちはーーーー!」


 事務所の扉が開かれ、中に入って来たのは…… 杏ではなく年齢は十代後半から二十代前半くらいの若く背の高い女性だった。唖然とする特務第十小隊の面々。彼女は番傘衆のようで彼らと同じ灰色の迷彩服を着ていた。彼女は丸顔で目は丸くやや垂れて瞳の色は髪は長く腰のしたくらいまであり、一部の髪を左右の耳の下あたりから編み込み胸元まで垂らしていた。女性は甘菜のように全体的にふわふわとして、おっとりした雰囲気に包まれていた。


「あらあら。いましたわー!」


 女性はエルフの少女を見ると一目散に駆け寄っていく。


「ほわぁ。あなたですね。かわいいですわねぇ。今日からわたくしがあなたのママですわよ! さぁおいでー」


 甘菜の膝に座るエルフの少女に無合って、女性はしゃがんで両手を広げた。顔は聖母のように優しく神々しい雰囲気をかもすが、その目は輝きまるで獲物を見つけた獣のように血走っていた。エルフの少女は女性の目を見て、怯え甘菜の胸にすがりつくようにする。怯えたエルフの少女を抱きしめ女性を軽く睨む甘菜だった。


「なっ誰ですか!? 怖がってるんでやめてください」

「あらあら…… 言う通りですわね。ごめんなさい。怖いですわよねぇ。このお姉ちゃんが横でいっぱい怒っていたら」

「えっえっ!?」


 右手の人指し指を立て頬に当てて、女性は首をかしげてにこにこ笑っている。甘菜は自分がエルフの少女を怖がらせていると言われ驚く。

 直後に事務所に杏が駆け込んできた。彼女は事務所に入って膝に手をついて顔をあげた。


「はぁはぁ。愛生さん! なんで一人で行っちゃうの!!」

「えっ!? いやですわ…… 申し訳ありません。あまりにもこの子が心配でつい…… 本当に申し訳ありません」


 女性は杏に呼ばれ我に返ったのか、甘菜とエルフの少女に謝るのだった。立ち上がりレイは杏の元へと行って女性を指した。


「杏ちゃん…… この人は?」

下溝愛生(しもみぞあき)君。生態調査部の部長さんですよ」

「部長!? そういえばどこかの式典で見たような……」


 黒田が杏より先に答える。女性の名前は下溝愛生、年齢は二十二歳。番傘衆で生体調査部の部長だ。生態調査部は文字通り、レインデビルズの生体調査し習性や弱点を調べている。

 愛生は黒田を見て大きく目を見開いて驚いた顔をする。


「ほわぁ!? マー君じゃないですか! 久しぶりですわね! そうかぁ。特務第十小隊に異動になったんだもんねぇ。えらいえらい!」

「やっやめてください! 愛生君。黒田と呼んでくれといつも」

「肩ぐるしい呼び方は相応しくないですわ。わたくしたちは同期なんですから! わたくしにとってはいつもかわいいマー君ですよ? かわいいですわねぇ」


 立ち上がって駆け寄って黒田を抱きしめる愛生だった。そのまま彼の頭を撫で続ける。愛生の行動にレイは驚き呆然と見つめていた。黒田は撫でられながらレイに手を伸ばす。


「レイ君! 見てないで助けてください!」

「えぇ…… あっあの。もういいんじゃないですか。えっ!?」


 レイは黒田の横に立って愛生の手を伸ばす。愛生は近づいてきたレイの手をつかみ両手でがっしりを掴む。


「あらあら。君はレイちゃんですわね。お噂は聞いておりますわ。わたくしは下溝愛生ですわ。よろしくお願いします」

「よっよろしくお願い…… むぎゅ!!!」

「ほわぁ。よしよし。これでレイ君も私の子供ですわね」

「やっやめてください…… ほわぁ……」


 愛生はレイの頭をつかんで自分の胸に押し付けると撫で始めた。抵抗をしようとしたレイだったが、彼女の撫でる手が気持ちよく身をゆだねてしまう。


「ちょっと! レイ君に何してるの! やめてください」


 慌てて甘菜が愛生とレイの間に手を入れて止めようとする…… パッとレイから手をはなし、体の向きを変えると愛生は甘菜も抱きしめ撫で始めた。


「あらあら。あなたが甘菜ちゃんですわねぇ。あなたのことも聞いますのよぉ!」

「むぎゅ! やっやめて……」

「ほわぁ。弟を守ろうとしたいいお姉ちゃんですねぇ。でも私には甘えていいですわよ…… ママですから!」

「なっ!? 私はレイ君のお姉ちゃんで甘えるなんて……」


 甘菜は必死に抵抗しようとするが、愛生のいい匂いと柔らかく心地良い体が彼女を優しく包みこんでいく。愛生は甘菜の顔が緩む瞬間を見逃さず手を彼女の頭へと持っていく。


「よしよし」

「ほっほわぁ……」


 甘菜も抵抗できずに愛生に、撫でられて気持ちよさそうに目をつむるのだった。愛生は最後に椅子に座ってジッとしている未結を見てニヤリと笑った。


「ごめんなさいねぇ。未結ちゃんもママがいなくて寂しいですわよね。おいでー」

「いっいえ…… 私は…… 別に」

「ほらほら! 遠慮しなくていいですわよぉ! あなたはここでは最初のわたくしの娘なんですから!」

「ほっほわぁ!!!」


 愛生は甘菜から手をはなすと素早く、未結の前に移動し彼女を抱きしめて撫でるのだった。実は愛生は未結の訓練所時代の教官である。満足げに未結を撫でる愛生の後ろに杏がやって来た。


「もう。愛生さん! 大人しくして!!!!」

「ほわぁ!? わかりました……」


 杏に注意された愛生は未結から手をはなすのだった。愛生は名残惜しそうに未結を見つめ、黒田、レイ、甘菜、未結は苦笑いをするのだった。

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