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滅んだ地球では銃と魔法と、パワードスーツが活躍する。  作者: ネコ軍団
第2章

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第42話 補充人員

 海水採取船ビューティアプリコット号にサハギンが出現する少し前。ここはツマサキ市にある番傘衆の基地の地下。

 照明が照らす短い廊下を戦闘服を着た未結は静かに歩いていく。廊下の突き当りの扉を彼女が開けた。


「クッ」


 扉を開けた未結の耳に激しい銃声が届き、火薬のにおいが鼻をつく。扉の向こうは広い空間に仕切りのついたブースが並び、戦闘服を着た隊員が数十メートル先の的に射撃を行っていた。ここは番傘衆の射撃訓練場で、彼女は拳銃を携えて未結は訓練にやって来たのだ。


「おぉ! 未結ちゃん。いいところに来たね」


 訓練場に入ると一人の中年男性が未結へと近づいてきた。小太りで黒髪の短い髪をした、体形と目も鼻も丸い優しそうな中年男性は、訓練場の管理を務める寒川徹(さむかわとおる)という。


「あいつを見てみな」

「えぇ!?」


 管理人の寒川がある射撃ブースを指さした。そこには一人の男性が射撃を行っていた。未結は男が使うブースの後ろに立った。


「すごい……」


 男は迷彩柄の戦闘服に肩に届くほどの髪を後ろで結び、無精ひげを生やして細長い糸のような目をしていた。彼はイヤーマフをつけ古い回転式拳銃をいわゆるリボルバーを使い、天井からつるされた人型の標的の胸を正確に撃ちぬいていった。

 そのあまりに正確な射撃に未結は目を奪われていた。全て弾を撃った男はブースのカウンターに拳銃を置くと、横に置かれたもう一丁のリボルバーを持った。


「えっ!?」


 目を見開いて声をあげる未結。男は拳銃を左手で構えて射撃を始めたのだ。番傘衆では左右での射撃訓練はあるが個人で訓練する場合は利き手のみで行う場合が多い。さらに使う手が変われば多少なりにも射撃精度に影響があるはずだが彼は……


「左手でも正確に…… すごい!!! すごいです!」

「!!」


 声が大きくなり思わず叫んでしまった未結。男はイヤーマフをつけていて彼女の声ではなく気配を感じてふりむく。振り向いた男は未結を見て、細い目をさらに細くしてにこやかに口を開く。


「おやおや。そんなに怖い顔で見つめられると緊張しちゃうなぁ」

「えっ!? すっすみません!」


 邪魔をしてしまったことに、頭を下げ謝罪する未結だった。男はイヤーマフを外しながら、未結に背中を向け二丁の拳銃をケースにしまう。


「僕はもう引き上げますからこちらをお使いください」

「えっ!? いや他も空いてるし私はここを使いたいわけじゃ……」

「いえ。ごゆっくり」

 

 ケースを持ち上げ右手をあげて男は去っていく。


「あぁ。行っちゃいました……」


 射撃訓練場のドアを開け男は外へと出て行った。未結は寒川の元へと駆けていく。


「寒川さん。あの男性は誰ですか?」

「名前…… えっと…… 黒田(くろだ)だな…… あっ!? あいつ…… 所属を書いてない。もう困るんだよなぁ」


 射撃訓練場に置かれた名簿を見ながら、寒川が男の名前を未結につげるのだった。


「黒田さん……」


 未結は男が去っていた扉を見ながらつぶやくのだった。

 訓練を終えた未結は地上の事務所へと上がって地上へと出た。階段のわきに大きな四角い建物がある。


「先輩!」

「未結ちゃーん」


 四角い建物ガラス戸を開け、レイと甘菜が出て来て未結に声をかけてきた。


「射撃訓練、終わったの? 私たちもちょうど終わったところ」

「おっお疲れ様です……」

「もう本当に疲れたよー」


 未結はうかない顔で甘菜に挨拶をする。甘菜は笑顔で彼女に答える。二人が出て来たのは戦闘訓練場、柔道や剣道などの同情の他にパワードスーツのシミュレーターや市街地や草原などを再現した模擬戦闘場や、さらに杏が作った仮想戦闘空間もある。

 ちなみに射撃訓練場は戦闘訓練場の地下にあり、戦闘訓練場からも行けるが外にある階段を使う方が近い。


「レイ君ったら私が女の子なのに剣術の手加減してくれないんだよ。ひどいでしょ」


 甘菜は未結の手を握り、レイに顔を向け彼女に甘えるように訴える。


「手加減したら訓練にならないだろ。それにシミュレーターでオスのオークの頭を簡単につぶしといて何が女の子だ…… うん!?」


 未結に甘えようとする甘菜ににあきれて、首を横に振ったレイだった。彼は未結がうかない顔をしているのに気づく。


「先輩どうしたの? なんか浮かない顔をして?」

「あっあの…… レイさん…… 甘菜さん……」


 顔をあげレイと甘菜の顔を、交互に見た未結は自分を指さし静かに口を開く。


「私の顔…… 怖いですか?」

「「えぇ!?」」


 驚いて顔を見合せるレイと甘菜だった。二人は互いにどう答えたらいいかわからず困った顔をする。少しの沈黙の後にレイは頭をかく仕草をしながら慎重に口を開く。


「いやぁ。怖いと思う時はあるけど普段は別に怖くは……」

「やっぱり…… 怖いんですね……」

「まっまぁ…… 射撃する時の冷静な表情とかは少し……」

「うぅ……」

 

 しどろもどろに答えるレイにうつむいて悲しそうにする未結だった。甘菜はしっかりしろと肘で彼をつつくのだった。


「あっあの…… その…… 怖いというかかっこいんだよ! それに真顔でターゲットを狙う先輩は綺麗だし!」


 顔を真っ赤にしてうつむくレイだった。レイの言葉を聞いた未結は頬を赤らめ、満更でもないような顔で両手で頬を押さえる。


「そっそんな…… 綺麗なんて」

「……」


 浮かれる未結を目を細め冷めた表情に向け、甘菜は手を伸ばし彼の肘の上の肉を拭くの上から思いっきりつまむ。急につねられたレイは痛みに顔をゆがめた。


「なっなんだよ! なんで急につねるんだよ!」

「別にー!! ほら! もう事務所に戻るよ!」

「あぁ! 待って下さい!」


 口を尖らせレイの背中を押し強引に事務所に連れて行く甘菜だった。置いてかれた未結は、二人を慌てて追いかけるのだった。

 三人は事務所へと戻って来た。ガレージ横の階段を上がって事務所へと入る。


「戻りましたー」


 甘菜が先頭で扉を開け、事務所に残った石川に声をかけ中へと入り、レイと未結が続く。


「おかえりー」


 自席に居た石川は笑顔で右手をあげ三人を迎えいれる。彼の席の前に戦闘服を着た男が立って居り振り返った。男を見た未結は驚くのだった。


「あっあなたは……」


 未結を見た男は先ほどと同じように、目を細くしてにこやかに彼女に声をかける。


「やぁ。先ほどの怖いお嬢さんじゃないですか」


 二人の様子を見た石川が未結に視線を向けた。


「なんだ。未結ちゃんは顔見知りかい?」

「いえ。さっき射撃訓練場で私が失礼なことを……」

「ふふふ」

 

 男は未結を見て笑っている。首をかしげたレイは男を見て石川にたずねる。


「隊長、この人は?」

「あぁ。黒田は補充人員だよ。山手のな…… 彼らがさっき話したうちの隊員だ。自己紹介してくれ」

「はい」


 黒田と呼ばれた男は真顔になり姿勢を正すと三人に敬礼する。


「本日付けで特務第十小隊に配属された。黒田正義(くろだまさよし)といいます。よろしく」

「えっ!? はい。温守冷夜です」

「私は温守甘菜です」

「きっ如月未結です。よっよろしくお願いします」


 三人は黒田に敬礼し名乗る。男は黒田正義、二十四歳で殉職したヤマさんの補充人員だった。


「如月くんに甘菜くんにレイくん…… 皆さんの活躍はしってますよ。あのアークデーモンを倒したという」

「いやぁ」


 恥ずかしそうにするレイ、甘菜と未結は緊張してるのか動かずに黒田をジッと見つめていた。


「よし! 席はそこ。レイの隣だ。後の細かいことは未結ちゃんに聞いてくれ。頼んだよ。未結ちゃん」

「はっはい。じゃあどうぞこちらへ」


 未結は黒田に自分の向かいの席を指して座るように促す。黒田が席に着こうとすると、すぐに彼女の席の電話が鳴り響く。未結は電話に出る。


「はい。特務第十小隊です…… えっ!? はい…… わかりました」


 レイと甘菜と石川の表情が変わる。未結の様子から出動要請があったのだと察したのだ。受話器を置いた未結はすぐに石川へ顔を向け口を開く。


「大島海域で作業中の海水採取船ビューティアプリコットがレインデビルズに襲われ出動要請です」

「わかった。すぐに迎え。黒田…… お前さんもだ」

「了解です」


 黒田は敬礼し石川に返事をする。レイと甘菜と未結は戻ったばかりの、事務所から黒田を連れ飛び出していくのだった。

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