第39話 希望の夜明け
「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
心臓を貫かれたアークデーモンは空を向き胸を押さえ苦しみだした。燃え盛るファイアボールの後ろで並んでたつ甘菜とレイはジッと苦しむアークデーモンを見つめている。レイはそっと甘菜の右手に自分の左手をそえる。
「これであいつもさよならだな…… !!」
視線を下に向けそっとつぶやくレイ、安堵からか彼の言葉に、わずかに笑いが含まれていた。甘菜がレイが添えた手を強く握り返した。レイは少し驚きながら顔をあげ彼女の方に顔を向けた。
「レッレイ君!!」
甘菜が前を指してレイに向かって叫ぶ。レイは慌てて前を向く。
「あいつ…… まだ動くのかよ……」
口をあけ唖然として言葉を失うレイだった。時間が経ち消えかかるファイアボールの炎の先に、胸に右腕を置き、左手を前に伸ばして歩くアークデーモンの姿が見えた。アークデーモンは甘菜によって倒れされた青龍刀を左手につかみ拾い上げた。
「来るぞ!」
腰に手を伸ばし打刀の柄をてにかけたレイ、甘菜は小さくうなずくのだった。
「「えっ!?」」
甘菜とレイが同時に驚きの声をあげた。
「フィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン」
アークデーモンはレイたちに向かって来ることなく、青龍刀を天に向けて掲げた姿勢で立って居た。口を開いているが声は出ておらず代わりに低く震えるような音を出していた。
「なんだこの声は……」
右手を打刀から耳の辺りに持っていくレイ、不快な音と地面に叩きつけれた時の肩の痛みで、彼は顔をゆがませていた。
「何かと共鳴している…… ううん…… 何かに呼びかけてるのかしら……」
アークデーモンを見つめながら甘菜がつぶやく。音を聞き続けている彼女は、アークデーモンが出す音に不安と不快感を覚えなにか不気味に思えた。甘菜はレイに顔を向け叫ぶ。
「レイ君! 嫌な音だよ。止めようよ」
「止めるって…… 先輩! アークデーモンをもう一度狙撃できますか?」
「はっはい!」
レイの狙撃依頼を受けた未結は再度、照準をアークデーモンに合わせる。不快な音に集中力を乱されるかけたが、息を止め自信を落ち着かせた彼女は引き金を引いた。銃声が轟いて銃弾がアークデーモンを再び狙う。しかし……
「はっ弾いた……」
銃弾をアークデーモンは左手に持った青龍刀で弾き返した。エーテル鋼弾により、青龍刀は曲がってしまった。アークデーモンはかまわず曲がった青龍刀を天にかかげ不快な音を出し続けた。
「クソ! もう一発……」
「ダメです! もうエーテル鋼弾が……」
エーテル鋼弾でなければアークデーモンに有効なダメージを与えられない。レイは悔しそうにアークデーモンを見つめている。ふと彼の視線に自分がアークデーモンの首にさした太刀が見えた。
「やってみるか…… よし! 俺が仕留める」
「でも、どうやって!?」
「こうするんだ!」
レイの姿が消えた。彼はアークデーモンの首へとやってきていた。そこには…… 動きを止めるために突き刺した太刀がアークデーモンの首に突き刺さっていた。レイは両手で太刀の柄をつかんだ。
「かてええな!」
両手で太刀の柄を掴み首を必死に押し込むレイだった。太刀はアークデーモンの首の骨に当たり止まっていた。右肩を負傷したレイは全力がだせずにいたのだ。
「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
アークデーモンは手首のなくなった右腕で首をはたたく。レイを首からはたき落とそうというのだ。何度もアークデーモンの右腕がレイに叩きつけられる。体がゆれレイは太刀から手をはなしそうになる。
「クソ! このままじゃ…… えっ!?」
衝撃が止まってレイが振り返った。そこにはタワーシールドを持ち、レイのかばうようにして甘菜が浮かんでいた。彼女はレイを助けようと飛び上がってやってきたのだ。
「姉ちゃん!?」
「私は大丈夫だよ! はやく! 首を!」
振り向いてレイに向かって右腕を伸ばし、首を指さして叫ぶ甘菜だった。
「いや! ちょっと! こっちへ」
「キャッ!」
レイは甘菜に左手を伸ばし、彼女の右腕を伸ばして引き寄せた。甘菜の肩に手を回したレイは叫ぶ。
「せーのでスラスターを止めろ!」
「わっわかった」
「せーの!」
二人のパワードスーツのスラスターが止まった。浮力を失った二体のパワードスーツの重さにより太刀が斜めに回転し首を削っていく。レイは右手で太刀を押しこんでいく。二人の体がアークデーモンの首を中心にして回転していくと同時に太刀はアークデーモンの首の骨を削り切っていく。
「これで! さよならだあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
耳をつんざくような断末魔が響く。甘菜とレイの二人は、浮き上がるよう感覚に襲われる。太刀はレイと甘菜を重りのようにして回転しアークデーモンの首を切り落とした。わずかに背面の肉と皮膚でつながっていたが重さで首は地面へと落下した。現代の房総半島の主アークデーモンが消えた瞬間だった。
「やったね! レイ君!」
「おう!」
レイと甘菜の二人は放り投げられたようになっていた。太刀を捨てたレイは、甘菜に手を伸ばし彼女を引き寄せる。甘菜を抱きかかえたまま二人で地面に着地した。地面に甘菜を下し空を見るレイ、真っ暗だった空がしらみ始めていた。いつもと変わらぬ青空だったが、アークデーモンがいなくなった空は、より青く澄んでいるようにレイは見えたのだった。
「先輩! 俺たちやりましたね!」
「えぇ…… でも…… 運はないようですね」
「レイ君…… あれ……」
「クソ!」
空を見ていたレイの表情が曇る。アークデーモンが消え澄んでいた、青空に真っ暗に染まっていったのだ。
「「「「「「「「「「「「「「「ガウアアアアアアアアアアアア!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「キシャーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」」」」」」」」」」」」」」」
空を覆いつくるレッサーデーモンの群れに、地上を埋め尽くすガルフの胸が現れたのだった。二種のレインデビルズ数は千を簡単に超える。レイは現れたレインデビルズを見て気付いた。
「ははっ。さっきの音か!!!」
「アークデーモンはこの助けを呼んだんだね」
「チッ! 王様のくせに最後は部下頼みかよ」
舌打ちをしたレイは腰にさしている打刀に手をかける。
「姉ちゃん。先輩。いける?」
「頑張る! 弾も武器もないけど盾でガンガンしてやるんだ」
「私もあまり弾はないですけど…… 頑張ります」
甘菜は左手に持ったタワーシールドをかかげ、未結は狙撃場所で通常弾のマガジンをセットする。アークデーモンとの戦闘で消耗した三人に、この数のレインデビルズを片付ける力は残っていない。しかし、三人は番傘衆だ、町を守る彼らに逃げると言う選択肢はなかった。
「よーし。なら少しでも数を減らしてやるか…… 町のやつらの負担も減るしな」
レイは打刀を抜いて甘菜の前に出た。大事な姉を少しでも長く生き残らせるためだった。
直後……
「「「「「「「「「「キシャーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」」」」」」」」」」
一閃の赤いレーザーが上空でレッサーデーモン達を薙ぎ払った。レーザーで体を焼かれたレッサーデーモンが落ちてガルフ達を巻き込み燃え上がる。
「大神さん……」
振り向いたレイに二体の機械犬を引き連れた大神の姿が映った。上空には戦闘用ドローンのピヨチャンが悠然と旋回していた。
「僕だけじゃないぞ!」
「「「えっ!?」」」
レッサーデーモンの群れのはるか上空に十数機のV428が飛来していた。
「よぉ! お前さん達! 生きてるか! いやぁ。さすがだねぇ。アークデーモンを倒してしまうなんてなぁ」
「「「隊長!」」」
聞きなれた石川の声に三人はホッと安堵の表情を浮かべた。隊列を組んだV428の後部ハッチが開き、パワードスーツの姿が見える。
「あたしもいるよ! おい! 武瑠! あいつらはあたしらの…… いや町の英雄だ。殺すんじゃないよ」
「わかってるよ。総員出撃しろ。特務第十小隊を救助し必ず町へ連れ帰るんだ!」
V428から大量のパワードスーツが降下する。武瑠が率いる第一兵団の精鋭たちにより、レッサーデーモンとガルフの一団は駆逐されるのだった。




