第38話 貫け!
ファイアボールが地面に叩きつけられた爆発を起こす。激しい爆風が周囲に飛び散り火柱が空へと伸び周囲を赤く照らし黒煙を充満させていく。レイから離れた場所で甘菜は根元に黒煙をまとう火柱を見つめていた。
「レイ君…… お姉ちゃんに心配かけて悪い子だね」
視線をゆっくりと火柱から外し甘菜はほほえむ。彼女の視線は火柱の中央に固定されていた。
「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
雄たけびをあげるアークデーモン、それは勝利というよりは悔しさがにじんだものだった。火柱が消え黒煙も徐々にうすくなっていく。薄くなった黒煙の隙間から青白い光が差し込む。火柱の下には天に向かって右腕を伸ばし、太刀をかかげるレイが立っていた。ファイアボールが着弾する直前に彼は太刀で火の玉を斬りつけ真っ二つにしていたのだ。
「ウガア!」
レイを見たアークデーモンは声をあげ青龍刀を両手に構えた。それを見たレイは太刀を下し切っ先をアークデーモンに向けた。
「今度はこっちから行くぞ」
腕を引き太刀を構えたレイは走り出す。アークデーモンは向かって来るレイをジッと見つめ青龍刀を構えたままジッとしていた。
青龍刀の間合いに入ったレイ、アークデーモンは動かない。アークデーモンは彼が瞬間移動するのを待っているようだった。しかし、アークデーモンの思惑と違い、レイは瞬間移動せずに構えたまま近づいて来る。
アークデーモンの近くまで来たレイは飛び上がり、太刀でアークデーモンの首を狙う。青龍刀でレイをアークデーモンが迎え撃つ。
「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
「ウリャアアアアアアアアアアア!!!」
怒号と同時に大きな音がする、アークデーモンの青龍刀とレイの太刀がぶつかり合った。
「ウガア!?!?!?」
レイが降りぬいた太刀がアークデーモンの青龍刀を弾く。太刀に負けたアークデーモンは、左手が青龍刀から離れ、両腕をあげた姿勢で後ずさりをした。素早く太刀を返して構えなおすとレイはジッと視線を上に向けた。
「その青龍刀! 邪魔だから! ここに置きな!」
アークデーモンの右腕の横へと、瞬間移動でやってきたレイ。彼はアークデーモンの右手首を太刀で斬りつけた。太刀の刃は鋭く振りぬかれ、アークデーモンの右手首を切り裂いていく。
「ウリャアアアアアアアアアアア!!」
太刀を振りぬいたレイ、アークデーモンの右手は切られ、青龍刀を握ったまま上空へと飛んで行く。回転しながら放物線を描き、アークデーモンの右手に握られたまま青龍刀は数十メートル離れた地面に突き刺さった。
アークデーモンの腕の先から勢いよく血が吹き出した。
「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!」
手の先を左手で握り顔を歪め、甲高く悲鳴のような声をあげるアークデーモンだった。レイは返り血で赤く点々がつくディスプレイをみつめ、静かに頭部のヘルメットのカメラのレンズを拭うのだった。アークデーモンの右手がわずかに白く光っている。血が止まりアークデーモンの表情が和らいでいく。アークデーモンは魔法で右腕の治癒を行ったのだ。
血を拭い視界が戻るとレイは、太刀を前にだして両手に握り、構えアークデーモンをジッと見つめた。
「そろそろ。終わらせようか!」
そうつぶやくとレイの姿が消える。彼はアークデーモンの背後に姿を現した。
「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
「遅い!」
振り向きざまにアークデーモンが左拳を突き出した。レイアークデーモンの左拳がレイを捉える直前に彼の姿が再び消えた。拳を空振りしたバランスを崩すアークデーモンだった。
「こっちだ!」
レイはアークデーモンのすぐ前の地面に姿を現した。叫びながらレイは太刀の切っ先をアークデーモンへと向けた。
「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!」
アークデーモンは再び左拳を振り上げ、レイに向かって突き出し殴りつけようとした。レイは顔を斜め上にあげ向かって来る拳を見つめている。
「かかったな……」
素早く横に太刀を構えたレイは足をだし左斜め前に出る。すれ違うようにして、向かって来る拳に向かって太刀をぶつけるようにして振りぬく。
グチャッという嫌な音がレイの耳に届く。太刀と拳がぶつかったレイの太刀は拳にめり込み、アークデーモンの人指し指から小指にえぐりこんだ。指からにじむように血が出て太刀を伝って地面に落ちていく。レイの足の前に点々と血が垂れていく。
ニヤリと笑ってゆっくりとレイは太刀を戻す。太刀が指から抜けると血がドバっと流れ落ちていく。
「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
顔を上に向け苦痛に顔を歪めアークデーモンが叫び声をあげる。
「これで終わりだ」
レイは瞬間移動でアークデーモンの首の横へと移動した。レイは両手に太刀を持って切っ先をアークデーモンの首に向けて一気に突き出した。太刀はアークデーモンの首の後ろに突き刺さり横に貫通した。右手を残し左手を離したレイはアークデーモンの背後に回り込んだ、彼は両手おいっぱいに開き、右手でを握り、左手で太刀の切っ先をつかむ。
「グググ!!」
首を貫通した太刀をレイに押さえられ、苦しそうな顔をするアークデーモンだった。アークデーモンはレイを排除しようと両手を伸ばすが、両手をつぶされておりうまくいかない。レイは必死に太刀の切っ先と柄を握ったまま未結に叫ぶ。
「先輩! 今だ! 撃て!」
「はっはい……」
返事をした未結。狙撃場所に選んだ建物の上で、スナイパーライフルを構える。彼女は確実に仕留められるように、アークデーモンの心臓に慎重に照準を合わせる……
「えっ!?」
「しっしまった!」
アークデーモンの左手が白く光った。左指の傷が癒えたアークデーモンにレイがつかまれてしまった。掴まれたレイは必死に伸ばしていた腕をつぶされるようになり両手を離してしまった。アークデーモンは首からレイを外すと彼を地面に投げ捨てた。
「グワ!?」
右肩から地面に叩きつけれたレイ、必死に右手をついてすぐに立ち上がった。
「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
叫び声をあげたアークデーモンはなぜかレイに向かわずに横を向いた。レイはアークデーモンが向いた方へと視線を向けた。アークデーモンの視線は地面に刺さった青龍刀へと向いていた。
「ねっ姉ちゃん! 青龍刀を撃って!」
「えっ!?」
「いいから!」
激痛が走る右肩を押さえたしせいで甘菜に向かって指示を出すレイ、彼女はすぐに腕を青龍刀に向ける。腕の装甲がせり上がって小型ガドリングが出て来る。
「ポインターを使って…… うまく……」
装甲から伸びる赤いレーザーポインターをジッと見つめ甘菜はガドリング砲を発射した。銃声が響いて二十発ほどの銃弾が青龍へと向かって行く。発射された銃弾のほとんどは青龍刀に当たらなかったが二発だけ青龍刀に当たった。地面に刺さっていた青龍刀が銃弾により倒れた。
「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
振り向いたアークデーモンは左手を甘菜に突き出した。ファイアボールの火の玉が甘菜に向かって飛んだ。ファイアボールを撃ったアークデーモンは振り向いて青龍刀を目指す。
「キャッ!? あれ…… レイ君!」
ファイアボールが甘菜に届く直前に、レイは彼女を瞬間移動で救いだしていた。レイと甘菜は燃え盛る地面の背後に立っていた。炎越しにアークデーモンの背中が見えていた。
二人の後方でレイと甘菜と同じアークデーモンの姿を見つめる未結だった。彼女はスナイパーライフル構え照準をアークデーモンの背中に合わせる。
「そこです」
引き金を引いた未結。追い詰められたアークデーモンは、青龍刀を拾うに夢中で彼女が背後からライフルで狙っていることなど気付けるはずがなかった。
銃声が轟くと同時に深夜の暗闇を切り裂き、エーテル鋼弾がアークデーモンの心臓を貫くのだった。




