第33話 特務第十小隊集合
「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」
腕を伸ばし青龍刀の切っ先を天に向け、勝利の雄たけびを上げるアークデーモンだった。深夜の廃墟並ぶ静かな住宅街に現代の王であるアークデーモンの声が響き渡る。周囲に居る獣やレインデビルズはその声に恐怖し沈黙するのだった。
しかし、周囲を威圧するアークデーモンを、恐れることなく近づく者たちが居る。響き渡る駆動音、急加速しながら装甲車両が住宅街の路地を曲がり、アークデーモンの背後へとやって来た。
「そこ!」
装甲車両の銃座についていた未結が、重機関銃でアークデーモンを狙撃する。銃弾は太ももに当たり強靭な肉体によって弾かれてしまう。
「ウガアアアアアアアアアアア!!」
振り向いたアークデーモンが、声をあげ青龍刀を振りかざす。
「かかりました。レイさん! 後退してください」
「了解」
装甲車両を操縦するのはレイ、銃座には未結がつき後部に甘菜が乗っていた。三人は未結の千里眼とレイの瞬間移動で飛んで来たのだ。大神は装甲車両の定員により、機械犬を乗せられないため三人から遅れて移動していた。
後退を始めた装甲車両に向かってアークデーモンが青龍刀を振り下ろす。レイはジッと上を見つめながらレバーを引く強さをあげる。装甲車両の後退速度が上がっていく。
「おっと! あぶねえ」
青龍刀は装甲車両の前に、振り下ろされ道路を壊し砂煙をあげた。
「後退しながら左に曲がってください!」
「あいよ」
レイは装甲車両を操作し、路地へと入っていく。狭い路地で車体ギリギリの幅しかなく、住宅地の塀を削りながら装甲車両は進む。アークデーモンは逃げた車両を追いかけてきた。
「甘菜さん! 銃座を代わってください!」
「えっ!? でも……」
「当てなくていいですから! 早く!」
「わっわかった」
未結と入れ替わり銃座につく甘菜だった。重機関銃に手をかけ甘菜は恐る恐る射撃を開始する。未結はしゃがんで装甲車両の床に置かれた、スナイパーライフルを持ち上げた。
装甲車両は速度をあげ、路地を抜けようとしていた。しゃがんでスナイパーライフルをもち進行方向を見つめてい未結がレイまた指示をだす。
「そのまま通りを左に曲がってください」
指示通りにレイは路地を抜け左に曲がる。アークデーモンは路地を踏みつぶしながら、装甲車両を追いかけて来る。足をとられているのか装甲車両との距離は先ほどよりも離れていた。
「二区画ほど後退して再度左に曲がってください」
「わかった」
車体後部に立って指示を出す未結、彼女はスナイパーライフルの弾倉を確認する。立ち上がった未結は前を向き、通りをジッと見つめる。車体が斜めになると右手を上にあげた。
「止めてください」
「えっ!? わかった」
「甘菜さんも射撃を停止してください」
「はっはい」
未結は装甲車両と射撃を同時に停めるように指示をした。二人は彼女の指示に従った。装甲車両が停止してわ一秒も経たずにアークデーモンが通りへと出て来た。右手でアークデーモンを指し未結は指示をだす。
「今です! 車を動かして射撃も再開してください」
レイは装甲車両を動かし、甘菜は射撃を再開する。甘菜が撃つ銃弾はそのすべてが、アークデーモンからそれたが射撃音や周囲の建物に当たる音にアークデーモンは反応した。装甲車両を見つけたアークデーモンはレイたちを睨みつけた。
「ウガアアアアアアアアアアア!」
声をあげアークデーモンが走り出す。直後に装甲車両は路地へと消えて行った。未結はスナイパーライフルを準備してレイの隣に立った。
「通りに出たらまた左に曲がって、全力で後退して距離を取ってください」
「わかった…… 頼んだぜ。先輩」
「はい」
装甲車両のフロントに銃口を出し、狙撃の用意を始める未結だった。装甲車両は路地を抜け、アークデーモンが居た通りへと戻って来た。指示通りに左に曲がり後退するレイだった。銃座で重機関銃の弾を、補充しようとした甘菜が横を向いた。
「レッレイ君! あれ……」
甘菜がレイを呼んだ。振り向いたレイ、甘菜は固まったまま通りの横にあるアークデーモンによって破壊され更地に近くなっている場所を指していた。そこには……
「ヤマさん!!!!」
つぶれた二式のパワードスーツが転がっていた。パワードスーツの左肩にわずかに見える丸に特十と書かれた文字、この文字によりつぶされたパワードスーツはヤマさんだとわかる。レイは体中が熱くなり、沸き上がってくる怒りを押さえることができなくなる。
「クソがあああああああああああああああああああああ!!!!!!」
装甲車両を停止させ叫ぶレイ、彼は振り向いて床に置いてある太刀に手を……
「ダメ!!」
レイの隣に居た未結が手を伸ばし彼を止めた。
「せっ先輩!? どいてくれ! ヤマさんを助けるんだ!」
伸ばしてきた未結の手をはたくレイだった。はたかれた手を見た未結、彼女の目は潤み涙でにじんでいく。首を横に振り未結は真顔でレイを見つめた。
「レッレイちゃむ! よく見て! ヤマパイセンはもう死んでるよ! いつも言ってるでしょ冷静にって!」
万理華の口調を真似しながら、つぶれたパワードスーツを指す未結だった。パワードスーツはつぶされ機動停止しており動く気配はない、中の搭乗者が生きている可能性はない。現実を突きつけられたレイはハッとする。
「えっ!? あっ…… あぁ……」
返事をしたレイに未結はにっこりとほほ笑み。優しくいつもの口調で声をかける。
「おっ落ち着きました?」
「先輩…… わるかった。つい熱くなった……」
「車両を動かしてください」
「あぁ」
指示に従うレイだった。彼は名残惜しそうにヤマさんのパワードスーツを見るのだった。レバーを握る彼の右手にそっと上に未結は自分の手を置く。レイは未結の行動に思わず顔を彼女に向けた。
「大丈夫ですよ。ヤマさんの回収は後にします」
「後って…… そんな」
まっすぐ前を向いたまま、毅然とした態度で未結はレイに答える。
「もっもし…… ヤマさんが私たちと同じ立場ならそうします。任務を優先するって…… だから……」
左手を胸に当て静かに語る未結だった。三人の中で一番ヤマさんとの付き合い長い彼女はヤマさんのことを一番理解していた。レイは未結の言葉に静かにうなずいた。
「そうだな。行こうか。先輩」
「はっはい!」
レイは全速力で装甲車両を後退させる。未結はスナイパーライフルを構えた。
「甘菜さん。射撃を止めてください」
「はーい」
指示通りに甘菜は射撃を止める。銃声と薬きょうが落ちる音が止まり、装甲車両の走行音だけとなった。未結は続けて甘菜に指示を出す。
「盾を装備していつでもプラズマシールドを展開できるようにお願いします」
「わかったよー」
銃座から出て甘菜は、タワーシールドを装備し車体後部で待機した。
「シンシアさん。重射撃モードです」
「リョウカイシマシタ」
スナイパーライフルを構える、未結のパワードスーツの、ふくらはぎから金属の脚が飛び出した。小さく息を吐いた彼女は、照準を前に向けたままでジッとする。
「ウガアアアアアアアアアアア!!!」
装甲車両が百メートルほど後退すると、アークデーモンが走って路地を駆け抜けて来た。通りに飛び出したアークデーモンは首を左右に振りレイたちを探す。
「そうです…… こっちに顔をむけてください……」
アークデーモンを冷たい目でみながら、静かにつぶやき未結は息を止める。彼女の望みはあまり時間がかからず叶うことになるのだった。顔を右に向けアークデーモンが止まった。笑顔になるアークデーモン、後退する装甲車両を見つけたのだ。
「そこです!」
静かな廃墟に声が轟く。未結はスナイパーライフルの引き金を引いたのだ。銃弾は青白い光の閃光となり、一直線にアークデーモンへと向かっていくのだった。




