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星祭り


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 星祭りの会場にシャルルがクロエを伴って訪れると、会場は大きくどよめいた。

 シャルルがちらりと周囲を伺うと皆一様に驚いた顔。婚約者が誰かは秘密にしていたが、本当に気づかれていなかったらしい。


 会場にはカロリーヌの姿もある。その隣にはシャルルの目論見通りフィリップの姿。

 しかしそちらの方はあまり気にされてはいない。シャルルとクロエの衝撃が大きかったのもあるが、フィリップはシャルルの護衛である。護衛の意味と、下手な相手と連れ添うことで下世話な噂が立ってしまうことを懸念した為シャルルが彼にエスコートをお願いした、と大抵の人は思っているのだ。


(よしよし、2人は周囲に煩わされずに星祭りが楽しめそうだね)


 シャルルがそう思い薄っすらと満足そうな笑みを浮かべると、注目していた周囲が更に騒めく。

 その様子にクロエが声を潜めてシャルルに忠告する。


「シャルル、今はフィリップが傍にいないし、ものすごく注目されているから言動には気を付けてね」

「おっといけない。暫くカロリーヌのことは考えないようにするべきだな」

「私としては今のシャルルだったらもう素を見せても大丈夫と思うけれど」

「油断は禁物だよ、クロエ。それに、素の僕のことは僕の大切な人たちが知ってくれているから十分だ。それに……」


 シャルルは悪戯を思いついたような顔をした後、そっとクロエの耳元に唇を寄せた。


「周りに見せない顔を知ってるって、恋人として最高じゃない?」


 突然のシャルルの行動に驚いてクロエはパッとシャルルから距離を取った。その顔はほんのりと赤い。

 ポーカーフェイスを保ちながらも楽しそうなシャルルの様子に、クロエはしてやられたことに不満そうにしながらも笑って「確かに最高ね」と返した。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ゲームでは星祭りでカロリーヌは攻略対象から思いを打ち明けられる。ただしこの段階では「伝えたかっただけ。返事はいらない」と言われ、まだ結ばれることはない。


「カロリーヌ殿下に、その、畏れ多いことに『お慕いしております』と仰っていただきまして……」

「うんうん。それでそれで? フィリップは何て答えたの?」

「いえ、カロリーヌ殿下は『伝えたかっただけだから返事はいらない』とも仰いましたので」

「……それで返事をしなかったの?」

「はい。どちらの返事をしたとて、自分では不敬が過ぎますので……」


 フィリップの返事に、シャルルは思わずジトっとした目でフィリップを見た。


(幸せな話の報告の筈なのに随分気まずそうな顔だなとは思ってたんだよね。まあゲームのシナリオ的にもそうかなぁとはちょっとは思ったけどさぁ!)


 シャルルは星祭りを十分に楽しんだ後、寮に戻るとまだフィリップは帰ってきていなかった。

 暫くして帰って来たフィリップはどこかぼんやりとした様子で、シャルルが声をかけるとそこで初めてシャルルの存在に気づいたらしくびくりと肩を跳ねさせた。

 大変珍しいフィリップの姿に「これは明らかに何かがあっただろう」と思ったシャルルが嬉々として尋ねた結果、返って来たのがそんな答えで。


「フィリップ」

「……はい」

「前も言ったけれど、僕はカロリーヌを幸せにしてくれる相手なら誰でもいいんだ。身分なんて関係ない」

「それは……シャルル殿下はそう仰いますが……」

「少なくとも父上と母上は反対なんてしないと思うよ。それにあり得ないとは思うけどもし反対するようなら僕も一緒に説得するし。城の人たちもフィリップのことを知ってる人は誰も反対しないと思う。あ、でもカロリーヌのファンからのやっかみは仕方がないから受け入れてね」

「……」

「まあ僕だってフィリップが嫌だって言うなら無理強いはしないよ」

「そんなことはありません!! ありません、が……今までそんな風に考えたこともなかったので、その……」

「うん、すぐに答えを出さなくてもいいよ。ただ、ちゃんと考えてあげて欲しい。カロリーヌは返事は要らないって言ったかもしれないけれど、それは君の為に言ったんだと思うから。君の中で答えが出たならどんな答えであれちゃんと伝えてあげて?」

「……分かりました」


 フィリップは心底困ったという顔でそう言うと、「今日はもう寝ます」と言って自室へ入って行った。

 そんなフィリップの背中を見送った後、シャルルは何とも言えない顔でぼそりと呟いた。


「配役が逆なんだよなぁ」


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