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その裏で


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「怖い思いをさせてしまい、本当に申し訳なかった」

「巻き込んでしまってごめんね」


 事件の翌日、シャルルと二コラはベルナデットに深く頭を下げていた。




「あ!」


 事件の後の話し合いが一段落ついたところで、ジョゼットが焦ったような声を上げた。

 皆の視線が集まったところで、ジョゼットがカロリーヌを見ておずおずと告げた。


「あの、ですね。宰相様はこれまでの失敗はディアマン様のせいだと思っていらして、今回は邪魔が入らないようにと手を回されたようで……」


 それを聞いてサッとカロリーヌの顔が蒼褪める。


「ベルナデットをどうしたの!?」


 カロリーヌは本気で心配しているが、シャルルとフィリップ、そしてイザベルは全く心配はしていなかった。

 何せあのベルナデットだ。何かしようとしたとしても、その相手が返り討ちに合う結果しか見えない。


「その……魔法で作った犬をけしかけると仰られて」

「「「「…………」」」」


 二コラは不思議そうな顔をしているが、シャルル達4人は押し黙った。

 4人はディアマン家でのあの恐慌状態を見ているからこそ、その攻撃が如何に彼女に有効かが良く分かっている。


「え、と……今その犬は?」

「宰相様が作った魔道具で出現させたものですので、込められた魔力が尽きたら消えると仰っていましたのでもう消えているかと」

「そう、良かった」

「けれど恐らく1時間程度は付き纏われていたかと」

「……二コラ、明日僕と一緒に謝罪に行くよ」

「う、うん」


 深刻な顔でそう言うシャルルに、二コラは良く分からないながらもこくりと頷いた。




「えっと……つまりあの犬はペルル先輩の飼い犬だったってことですか?」

「うーん、まあちょっと違うんだけど似たようなものかな?」

「成程」


 あまり詳しい事情は話せない為取り敢えず二コラがそう言うと、ベルナデットは納得したように頷いた。


「あの、質問してもいいですか?」

「ああ」

「何故私が昨日彼に追いかけられたことを知っているのでしょう?」


 ベルナデットの質問にシャルルと二コラは顔を見合わせた。

 確かに実際その場にはシャルルも二コラも居なかったのでそれは当然の疑問だ。

 二コラはどこまで話して良いのか分からずシャルルを見たので、シャルルは話せる範囲で事情を説明する為ベルナデットの方を向いた。

 心なしかベルナデットの目が輝いているのは何故だろうとシャルルは内心首を傾げながらも彼女の質問に答えた。


「国家機密に関わってくるからあまり詳しい事は話せないんだけど、ちょっと今僕らの周りが騒がしくてね。ベルナデット嬢が何度か偶然僕らを助けてくれたから、相手方から『邪魔だ』と判断されてしまったらしくて」

「?????」


 出来るだけぼかしてそう伝えると、ベルナデットは意味が分からなかったらしくポカンとしている。

 それに対しベルナデットの後ろで控えていた彼女の侍従であるアランが不機嫌さを隠さず口を開いた。


「カロリーヌ殿下を助けたから、国家間のいざこざにお嬢様が巻き込まれた、と?」


 アランの問いかけに、シャルルは申し訳なさそうに頷いた。

 そこで漸く事態を理解したベルナデットが驚いて口を開いたのだが。


「え!? 私が犬を苦手としていることって、国を超えて広まっているの!?」

「お嬢様、問題はそこではないです」

「何を言っているのアラン! 大問題よ!!」


 ベルナデットにとっては国家間のいざこざに巻き込まれたことなど自身の弱点が広まることに比べればどうでもいいことらしい。

 彼女の事を良く知らない二コラは戸惑っているが、先程まで不機嫌だったアランはそんなベルナデットの様子に冷静さを取り戻したようで、バツの悪そうな顔でシャルルと二コラに頭を下げた。


「先程は失礼な態度をとってしまい申し訳ありませんでした」

「いいよ。学園では皆平等だ。カロリーヌもいつも言っているでしょ? それに君の怒りも最もだ。恋人が危険な目にあったらそりゃあ冷静でいられないよね。今回の件に関してはきちんと解決したから安心して?」

「え?」

「え?」

「え?」


 シャルルの発言に、ベルナデットもアランも固まった。

 その反応にシャルルも首を傾げる。


「え? カロリーヌ、いつも言ってるよね?」

「あ、え、ええ、はい。いえ、そこではなく」

「あ、事件の方? 教えてあげたいのは山々なんだけどちょっとこれ以上は難しくて」

「ええと、その、そこでもなく……」


 混乱しているアランに対し、ベルナデットは何か思いついたような顔で口を開いた。


「もしかして、カロリーヌから何か聞きましたか? それとも噂の方でしょうか?」

「うん? 何が?」

「私とアランは恋人ではありませんよ」


 ベルナデットの発言に、シャルルは目を丸くした。

 エリックには悪いが2人が想い合っているらしいことをカロリーヌから聞いていたし、少し前にアランが派手にベルナデットに告白したらしいという噂も耳に挟んでいた為てっきりそうなのかと思っていたのだが、どうやら違ったらしい。


「そんなに恋人同士に見えますかね?」

「まあいつも一緒だし、主人と使用人にしては距離も近いしね」

「私とアランは幼なじみでもあるので!」

「ふうん?」


 嬉しそうにそう言うベルナデットに対し、シャルルは相槌をうちながらちらりとアランを見る。それに対しアランは居心地が悪そうに身じろいだ。


「じゃあ今度の星祭り、ベルナデット嬢は誰と行くの?」

「う゛……ま、まだ未定です」

「彼じゃないんだ?」


 シャルルの言葉に、ベルナデットはポカンと口を開けた。


「その発想は無かったですわ」

「あー、これ僕余計な事言っちゃったかな?」


 シャルルの不用意な発言のせいでその発想に気づかせてしまい、エリックにごめんと心の中で謝っているうちにあっという間にベルナデットのエスコート役はアランに決まってしまった。


「ところで二コラは星祭りはどうする予定?」

「ジョゼットを誘ったよ。残念ながら兄上はいないけど、雰囲気だけでも楽しんでくれたらいいなって」


 そう言って笑う二コラは本心からそう言っているようで、恐らくジョゼットに恋をしているわけではないのだろう。

 昨日まで全く関わりがなかったので当然なのだが「カロリーヌを誘った」と言われなくてシャルルはホッとした。


「そう言うシャルル殿下は?」

「僕は不参加の予定だよ」

「え? そうなの?」

「うん。いろいろと事情があってね、去年も不参加だったんだ。けどすごく綺麗でロマンチックらしいから、君たちも楽しんでね」


 シャルルがそう言うと、二コラは少し申し訳なさそうな顔をしながらも頷いた。 


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