4
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
シャルルがゆっくりと目を開けると、目の前にあったのはボロボロと大粒の涙を流すカロリーヌの姿だった。
「カロリーヌ? どうしたの? 誰に泣かされたの?」
「お、お兄様……お兄様!!」
シャルルはカロリーヌに所謂膝枕をされている状態で、腕を伸ばし優しくその涙を拭った。
その行動に泣き止むどころか更に泣きだすカロリーヌにぎゅうぎゅうと抱きしめられ、シャルルは自分が何をしていたんだったかをぼんやりと思い出す。そして思い出してハッとした。
「そうだ、二コラ!!」
シャルルはカロリーヌの腕から抜け出し慌てて二コラを探すと、彼はシャルルが意識を失う前と同じ位置に立ってはらはらと涙を流していた。
シャルルはカロリーヌをそっとひと撫でしてから立ち上がり、そんな二コラを冷たい目で見据えた。
「僕は以前『君が僕の大切なものを傷つければそれなりの対応をする』と警告したよね?」
「あ……」
二コラがびくりと肩を震わせる。
「君はカロリーヌを泣かせたね? ならばその代償として君の大切な父上や兄上に何をされても仕方がないと思わない?」
「止めろ!! やったのは僕だ! だからやるなら僕を……」
「だからじゃないか。君を害したとして、心を痛めるのは君の父上や兄上だ」
シャルルの言葉を聞いて二コラは虚を突かれたような顔をしたが、すぐにその顔を歪めて自嘲する。
「僕に何かあっても、父上も兄上も何とも思わないよ」
「そんなことありません!!」
二コラの言葉に反論したのはシャルルではなく、いつのまにかシャルルの背後の少し離れた位置に立っていた女子生徒だった。
その女子生徒を見て、シャルルはすっかり忘れていた二コラルートの重要な設定をやっと思い出した。
二コラはスパイである。そしてその活動を手助けしている人物がいた。それが彼女、二コラの侍女であり、二コラの乳母の娘である。
彼女は二コラとその兄と一緒に育ち、二コラの兄と恋に落ちる。しかしガルデニアでは身分違いのその恋は許されず、2人ともそれはよく分かっていた。
そんな2人を何とかしたいと思ったのが彼女の兄だ。兄はとても賢い人で、自分が国の要人になれば妹の恋を成就させることが出来るのではと考えた。そして運の悪いことに、彼は宰相の下についたのだ。
兄は宰相に良いように利用され、さらに宰相はその妹をも利用するために「兄の悪事を黙っていて欲しければ自分のスパイとして働け」と彼女に囁いた。
兄を助けたいがもし自分が宰相の言う通りに動けば王家はただでは済まない。どうすればいいか分からず身動きが取れず泣いているところを二コラの兄に見つかり、話をしているうちに結局彼女は全てを白状してしまう。
「ラウル殿下は、宰相様から二コラ殿下と私を守る為に今回の任務を命じられたのです」
(そうだったそうだった、そんな話だったわ)
シャルルは呆然としている二コラに話す彼女の話を横で聞きながら、今の今まですっかり忘れていた二コラルートの設定を確認していた。
彼女は二コラとは無関係の一般生徒として潜入しており、二コラと密会している彼女を見つけ話を聞くことが二コラルートの重要な鍵だったのだ。
「レナルド陛下もラウル殿下も、二コラ殿下を大切に思っておいでです」
「ジョゼット……」
二コラと侍女の彼女――ジョゼットが見つめ合い、感動的なシーンなのだろうが。
「そちらに事情があることは分かりました。ですがだからと言って『はいそうですか』で終われないことは、お分かりですよね?」
割って入ったフィリップの冷たい声に、二コラは硬い表情で頷いた。




