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「あ、お兄様、フィリップ、おはようございます」
「あれ? おはようカロリーヌ、どうしたの? イザベルは?」
寮から出ると、男子寮と女子寮の間にカロリーヌが立っていた。何故か1人で、近くにイザベルの姿はない。
「それが朝私が起きた時にはもう居なくて。手紙が置いてあったのだけれどすごく急いでたみたいで、『ちょっと出かけます。詳細はフィリップに』とだけ書いてあったから聞きにきたのだけれど」
カロリーヌの話を聞くと、フィリップは「全くアイツは……」と言いながら大きくため息をついて、ちょっと待ってください、とシャルルから見えないようにして何かメモを書きだした。
書き終わるとそのメモを折り畳み、カロリーヌに渡した。
「イザベルは王宮の用事で呼び出され、そちらの対応に当たっています。ここで話せるような内容ではないので、誰にも見られないようにこのメモを読んでください」
「今読んでは駄目なの?」
「シャルル殿下にも秘密の内容ですので」
「あら、そうなのね」
「え、何それ気になる」
「出来るだけ早めに読んでいただけると助かります」
「ええ、分かったわ」
「ねぇねぇ何で僕には内緒なのさ?」
「秘密なんですから言えるわけないでしょう?」
「いや、そうなんだけどさぁ」
「お兄様、あまりフィリップを困らせては駄目ですよ?」
「助かりますカロリーヌ殿下」
シャルルは一人だけ除け者にされたような気がして自分に隠されている理由だけでも聞こうとしたのだが、カロリーヌに窘められてしまい渋々引き下がった。
「そういえばイザベルがいないのなら戻ってくるまで僕らと行動する?」
シャルルは自分は可愛いカロリーヌと一緒に居られるし、カロリーヌはフィリップと過ごせるし名案だと思いカロリーヌに尋ねたのだが、それに対してカロリーヌは首を横に振った。
「1年の私と2年のお兄様とでは教室も離れていますから一緒に行動するのは大変だと思いますし。それに朝ベルナデットと会った時にイザベルのことを話したら、『それなら今日は一緒に過ごしましょう』と言ってくれたんです。だから心配いりませんわ」
「そっか」
シャルルはカロリーヌに断られたことは残念に思ったが、ベルナデットが一緒ならば安心かなとも思い笑顔で相槌を打った。
シャルルとカロリーヌが一緒にいると常に認識疎外をかけておかなければならないなと思っていたフィリップは密かに安堵し、恐らくそれが分かっていただろうカロリーヌからにこりと笑顔を向けられた。
「今はベルナデット嬢は?」
「お兄様に用事があるからと言って先に行ってもらっていますわ」
「なら教室までは一緒に行こうか」
「はい!」
朝の手紙の件で少し凹んでいたシャルルだったが、思いがけずカロリーヌと登校することが出来てすっかり手紙のことなど忘れ、「今日は良い日かもしれない」と思っていた。




