カロリーヌの想い人
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実技のイベントの次は、今年度2度目の学力テストである。
カロリーヌは相変わらず女子寮での勉強会の他は図書室での勉強とシャルルとの勉強会しかしていない。
ただもし闘技大会の時に気づいた推測が正しかったとすれば、シャルルとの勉強会が違った意味を持つことになる。
(まあ実際そうだったとしたら僕としては大歓迎なわけだけど)
何せシャルルは自身の侍従で護衛でもある彼を誰よりも信頼している。彼ならば確実にカロリーヌを幸せにしてくれることだろう。
唯一かつ大きな問題としては身分の差であるが。
(もしカロリーヌの結婚相手が時期国王になるのなら問題かもしれないけれど、実際王になるのはカロリーヌだ。そんな彼女を支えるのも、現状僕の侍従で頭も良いフィリップは能力面でもうってつけだと思うんだよね。それに……)
シャルルは頬杖をつきながら目の前で唸っている赤褐色の頭を見た。
「解った?」
「う゛ーん……もう1回教えてくれるか?」
問いかけに顔を上げたエリックは、情けない顔でシャルルに助けを求めた。
テストが1週間後に迫った頃、放課後の廊下を歩いていたシャルルは突然横から伸びてきた腕によって空き教室に引きずり込まれた。
すぐに後を追って教室に入って来たフィリップが一瞬殺気立ったが、引きずり込んだ相手――エリックの情けない顔を見てすぐに呆れた顔に変わった。
「どうしたのエリック」
「シャルル殿下、頼みがある……オレに、勉強を教えてくれないだろうか……!」
「は? …………えぇえ!?」
シャルルはそのエリックの頼みに驚いた。何せエリックはこれまでドナシアンに何度怒られても、困ったドナシアンに頼まれたシャルルに言われても、シャルルから相談されたマクシミリアンに諭されても「自分は騎士になるのだから少々成績が悪くても平気だ」と言って全く聞く耳を持たなかったのだ。
「何? 勉強しなきゃ死ぬとでも言われたの??」
「いや……」
シャルルの冗談にスッと視線を逸らして言い淀むエリックに、シャルルはふとこの反応に既視感を覚えた。あれは確か夏季休暇中にカロリーヌと一緒に話した時。
「ああ、ベルナデット嬢か」
シャルルの呟きに、エリックは分かりやすく肩を跳ねさせた。
「な、なんで……」
「5歳からの親友を舐めちゃいけないよ。それにそもそもエリックは分かりやすい」
「ぐっ……」
「で? 成績の悪い男なんて~とでも言われたの?」
「彼女はそんなこと言わねーよ。ただ、勉強は出来た方が良いと思うって言うから」
「……そう」
エリックの言葉を聞いてシャルルはドナシアンに同情した。
あんなに彼が息子の為を思って言った言葉はスルーした癖に、好きな子の説得でもないちょっとした一言で変わるなんて。
シャルルの気持ちを正確に読み取ったフィリップは、「そんなものですよ」と何でもない顔で言い放った。
「まぁ理由はどうあれ、エリックがやる気になったのなら何よりだよ。勉強を教えるのはもちろん構わないよ。いつにする?」
「! ありがとう! オレはいつでもいいが、出来るだけ早い方が助かる」
「じゃあ今からしようか。エリックの部屋でいい?」
「おう! ホント助かった。全く分からなくてどうしようもなかったんだ」
そうしてシャルルは一度自分の部屋に戻った後、フィリップと共にエリックの部屋へと向かった。
そして現在。
どこが分からないのかと尋ねたシャルルに対し、エリックは全部と元気に答えた。
そのあんまりな答えにシャルルはどうしたものかと考えた末、とりあえず問題集から今回のテストの範囲の問題を指定して解いてみてもらうことにした。今のところ10問中9問で躓いている。
「この問題はここの部分がポイントなんだ。こう書いてあるってことは……」
(そもそも攻略対象たちのことをカロリーヌが恋愛対象として見てなさそうなんだよな。エリックとエルネストについては僕の友人って感じだし、クロエとミカエルはただの友人っぽいし、二コラはそもそも接点がないし。エリックは苦手な勉強を頑張っちゃうくらいベルナデット嬢が好きだし、エルネストは僕の事を信仰してるし、クロエは相変わらず女の子が好きだけど今のとこ僕の婚約者だし)
シャルルはエリックに勉強を教えながら、頭の中はカロリーヌのことでいっぱいだった。
(うん、やっぱりフィリップがベストだな! 流石カロリーヌ! 見る目がある! 天才!)
本人に確認したわけでもないのに勝手に納得して、シャルルはカロリーヌとフィリップの恋を勝手に応援することにした。
エリックの勉強についてはとても全てやっていては間に合わないと早々に見切りをつけ、重要そうなところにヤマを張ってそこだけでも頑張れと励ましてとりあえず解散した。




