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結局1年の部はエルネストが優勝した。
しかしカロリーヌは別にエルネストを応援していた様子でもなかったし、屋台も2年の部が終わったら一緒に回ろうと誘ってくれた。その誘いを受けることによって好感度アップイベントが滞ろうが、シャルルに断るなんて選択肢はない。
2年の部は当然のようにシャルルが優勝し、次いで2位がフィリップ、3位がクロエだった。
「あー悔しい!! 今年こそ優勝してやるって思ってたのに、まさかフィリップにまで負けるなんて!!」
「シャルル殿下のおかげで随分魔力制御が上達しましたので。カロリーヌ殿下が入学してからは殊更」
「なんかトゲがあるね? 魔力制御が上達するのは良い事じゃない」
「お兄様、あまりフィリップを困らせてはいけませんよ?」
「じゃあ私もシャルル殿下と一緒に居れば来年は優勝できるかしら……?」
「クロエ、僕をパワースポット的な何かと思ってない? そういう事じゃないからね?」
シャルル、フィリップ、カロリーヌ、イザベルに偶然出会ったクロエを交えて、現在屋台を物色中だ。
シャルルは前世の記憶があるのに加えてよくお忍びで出かけているため屋台は珍しいものではないが、カロリーヌはこういった雰囲気は初めてなので目を輝かせながらいろんなお店を覗いている。
クロエも侯爵家のお嬢様であるため初めてかと思いきや、平民の娘にアプローチしていた時によくこういう雰囲気の場所に出かけていたのだとシャルルにこっそりと教えてくれた。ちなみに例のごとくその子には振られてしまったらしいが、今でも友人関係は続けているそうだ。
「お兄様、あれは何ですか?」
「うん? ああ、わたあめだね。砂糖で出来てるんだよ」
「お砂糖? お砂糖があんなにフワフワになるんですか?」
「食べてみるかい?」
「! はい!」
「では私が買ってきますので少々お待ちください」
「カロリーヌ、一緒に行って好きなものを選んでおいで」
カロリーヌの返事を聞いてすぐにイザベルが1人で屋台の方へ歩き出してしまったので、シャルルはカロリーヌに一緒について行くように促した。
このわたあめはゲーム中でも出て来たアイテムで、動物を模した可愛らしい形をしている。選んだ攻略対象によって形が違った筈なので、カロリーヌが選ぶ形によって今どのルートなのか分かるかもしれないとシャルルは思った。
(まあ単純に自分で選んだ方がカロリーヌも楽しいよねっていうのと、絶対イザベルがどれを選んだらいいか迷うだろうなって思ったのもあるんだけど)
暫く待っているとカロリーヌとイザベルがわたあめを1つ買って戻って来た。カロリーヌが持っているわたあめは。
「……くま?」
くまなんて出て来ただろうか? しかも淡い緑色だ。
「カエルらしいですよ」
「カエル」
カエルなんて確実に出てきていない。なぜ可愛らしい動物が並ぶ中敢えてそのチョイスなのか。
「カロリーヌはカエルが好きだったの?」
戸惑っていたのはシャルルだけではなかったらしく、クロエが困惑しながらカロリーヌに問いかけた。
それにきょとんとしたカロリーヌは、手にしたカエルのわたあめを見てからふふっと微笑んだ。
「別に本物のカエルは好きではないけれど、このカエルは綺麗でしょう?」
確かに一見カエルに見えないが、綺麗とは? シャルルとクロエが首をひねっていると、カロリーヌがわたあめをイザベルの横に掲げた。
「ほら、イザベルの瞳の色とよく似ているの。だからついこれにしてしまったわ」
その嬉しそうな言葉にシャルルは思わず同じ色を持つ隣の侍従に目を向けそうになり、慌てて堪えてカロリーヌに笑顔で「そうだね」と返した。
(いや、まさか、ね?)
過った可能性を一概に否定することは出来ず、かと言って断定するには弱い。
けどまあ今はカロリーヌとのお祭りを楽しむ方が優先だよな、と、シャルルはとりあえず考えるのは帰ってからにしようとそれを一旦頭の隅に追いやった。




