分岐点
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公務とイベントで大忙しだった夏季休暇はあっという間に過ぎ、遂に運命の2学期が始まった。
シャルルはゲームでは2学期の終わり頃に殺される。まだ数ヶ月先の事ではあるが、シャルルは不安で仕方がない。
「フィリップ、僕が死んだらカロリーヌのことをよろしくね」
「何大袈裟な事言ってるんですか。死ぬような行事じゃないですし、寧ろシャルル殿下がちゃんと加減してくださいよ?」
「フィリップは僕を過大評価し過ぎ。それは僕よりエリックやエルネストに言うべきじゃないかな」
「自覚が無いのが一番質が悪いんですよ」
フィリップはそう言いながら呆れたようにため息をついた。
フィリップの言う行事とは、魔法使用必須の闘技大会のことである。夏季休暇明けすぐにあるその行事は、魔法がきちんと身についているかを確認する為の年に2回行われるこの学園の一大イベントだ。
闘技大会といってもスポーツ大会のようなもので、ルールは単純。競技者は魔力を込めた魔力玉というものを作り、対戦相手のそれを壊すなり消すなりした方が勝者となる。ちなみに相手に怪我をさせた場合は失格だ。
男女混合学年ごとの一対一のトーナメント方式で、去年はシャルルが優勝した。
もちろんシャルルの先の発言はこの行事を思っての発言ではないのだが、先程のHRで言われたその話をしながら歩いていたところでの発言であったのでフィリップの反応は正しい。
シャルルは不意に不安になって思わず言ってしまった発言だったわけだが、いたずらに不安を煽りたいわけではないのでフィリップの勘違いをそのままに話を合わせた。
もう少しで校舎を出ると言うところで、フィリップが険しい顔をして足を止めた。
周りを見ても特に不審なところは無いし、焦っている様子でもない為、シャルルはイザベルから連絡が入っているのだろうとフィリップが口を開くのを待った。
「シャルル殿下」
「イザベル?」
「はい。まず最初に言っておきます。カロリーヌ殿下は無事です。怪我ひとつありません」
フィリップの言葉を聞いて、眉間に皺を寄せながら「ああ、今日だったのか」とシャルルは思った。
2学期最初のイベントだ。
「カロリーヌ殿下が、何者かに階段から落とされました。階段の上にいたところで催眠系の魔法を使われたようで、カロリーヌ殿下本人は害を加えられたとは気づいておりません。偶々通りかかったディアマン嬢が助けてくれたようで、彼女にカロリーヌ殿下を任せて現在イザベルが犯人追跡中です」
(う~~~ん……カロリーヌが無事なのは良かったんだけど……配役がなぁ……)
シャルルはフィリップの説明を聞いて更に眉間の皺を深くした。
このイベントは、ゲームでは結構重要なイベントなのだが、当然こんな展開ではない。
カロリーヌを階段から落とすのはベルナデットだし、魔法などではなく物理的に突き飛ばしていた。
そしてカロリーヌはその時点で一番好感度が高い攻略対象に助けられ、逃げていくベルナデットを目撃した2人はそれから協力して彼女を追い詰めていく。ちなみにこの時点で全ての攻略対象の好感度が一定以上に達していないとカロリーヌは打ちどころが悪く昏睡状態になってしまいゲームオーバーとなる。
夏季休暇のイベントで攻略対象たちの好感度がそれなりにあることは確認できていた為シャルルはここでバッドエンドになることはないとは思っていたが、実際に無事だと聞いて安心した。
だが同時に新たな問題が発生してしまった。このイベントが結構重要だとされていたのは、ここでほぼルートが確定するから。つまり。
「場所は?」
「ご案内致します」
瞬間移動で置いて行かれてしまうのを防ぐためだろう、フィリップはシャルルに場所を教えることなくそう言って歩き出したので、シャルルは大人しくフィリップの後に続いた。




