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結論として、前世の記憶を持つのが誰かは分からなかった。
けれど収穫はいろいろあったので、シャルルとしては今回のディアマン領への視察の成果は上々である。
1つ目の収穫は、ベルナデットと以前より親しくなれたこと。
まず、今回の視察中は素のシャルルの性格で過ごした。
そもそもランベールとジェレミーはシャルルの素を知っているし、ゲームと違って現実のディアマン家は信用に値すると思ったからだ。
ベルナデットや彼女と一緒に学園へ通っている使用人の2人は驚いていたが、シャルルがイタズラっぽく笑いながら「家庭の事情だよ」と言ったら3人揃って引きつった笑みを浮かべていた。
しかしシャルルが素をさらけ出したことにより、親しみを感じてくれたらしいベルナデットと普通に会話が出来るようになった。その中で学園でのカロリーヌの様子を知ることが出来たのはシャルルにとってとても嬉しかったのだが、その話の中でベルナデットがうっかりいつものように「カロリーヌ」と敬称なしで呼んでしまいレティシアに怒られていたのは少し申し訳なく思った。
2つ目の収穫は、ベルナデットの弱点を知れたこと。
女の子の弱点を収穫というのは人としてどうかとは思うが、ベルナデットはゲームでは悪役令嬢である。今のところその片鱗は全くないが、今後そうならないとも限らない。
万が一のことを考えると、弱点が分かったのはやはり収穫だろう。
さて、そのベルナデットの弱点だが、ディアマン家の屋敷の中にあった。いや、いた。
話の中で、ディアマン家にはマカロンという名前のペットがいるとジェレミーが教えてくれた。それは主に彼が世話をしているゴールデンレトリバーらしく、動物好きのカロリーヌはキラキラした目で会いたいと言った。
マカロンの部屋にはジェレミーとベルナデットが案内してくれたのだが、ベルナデットは死地に赴くような顔をしていたし、ジェレミーはそんな彼女を心配する視線を向けていたのでその時点でシャルルは大体察した。流石にそのマカロンが駆け寄って来たのを見て泣きながら逃走する程とは思わなかったが。
ジェレミー曰く、産まれて間もないマカロンがディアマン家にやって来た時からずっとという筋金入りのもので、本人も克服しようと頑張っているが未だにそれは達成出来ていないとのことだった。
3つ目の収穫は、現実のディアマン家を知れたこと。
シャルルの中ではこれまでディアマン家はどうしてもゲームの中の負のイメージが拭えなかった。
しかし死ぬはずだった両親、存在しないはずの妹、描かれていなかった使用人たち、それら皆が仲が良く、屋敷は暖かい雰囲気に包まれているその光景を実際に目にし、シャルルはやっとこのディアマン家はゲームの中のそれとは違うことを実感することが出来た。
それを目の当たりにしたからこそ、シャルルは前世の記憶を持つ者がいたとしてもそれはきっと悪い人ではないだろうと安心することが出来た。
もちろん本来の目的であるディアマン領の視察もきちんと行い、シャルルとカロリーヌは夏季休暇が終わる前にディアマン領を後にした。




