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◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 いよいよ敵の本拠地潜入である。

 まぁ『敵』というのはゲーム上の話であり、現実ではただのカロリーヌの友達の家なのだが。



「初めまして、ランベール卿、レティシア夫人。短い間ですがお世話になります」

「初めまして。お世話になりますわ」

「わざわざ遠いところまでよくお越しくださいました。歓迎いたしますわ」


 シャルルとカロリーヌがディアマンの屋敷に到着すると、当主であるランベールとその妻であるレティシアが出迎えてくれた。ゲームと違い殺されても監禁されてもいない2人にシャルルは誰にも気づかれないようにほっと息を吐き出した。

 2人の横にはジェレミーとその妻でありエリックの姉であるフェリシテ、ベルナデット、そして恐らくコレットだろう女の子も立っていた。

 ジェレミーとフェリシテはシャルルと面識がある為特に緊張している様子はない。コレットは初対面の為少し緊張しているようだった。

 そしてベルナデットは、分かりやすく引きつった笑顔で冷や汗を流している。予想通りのその反応にシャルルは思わず苦笑した。




 ディアマン領へ向かう馬車の中、そういえばとシャルルはカロリーヌに尋ねた。


「カロリーヌはベルナデット嬢が男子制服を着ている理由は聞いてる?」

「理由ですか? 確か最初の自己紹介の際に家庭の事情と言っていたと記憶しておりますが」

「じゃあその家庭の事情の内容や彼女の家の事は?」

「いえ、そういったことはまだ聞いたことがありませんわ。お兄様はご存知なんですの?」

「いろいろあってほんのちょっとだけね」


 主にエリックとの手合わせの際にベルナデットが自爆したので。


「詳しい事はカロリーヌならそのうち本人から教えてもらえると思うから僕からは伏せるけど、ベルナデット嬢のあの恰好、家庭の事情じゃないらしいんだよね」

「あら、そうなんですの?」


 不思議そうな顔をするカロリーヌにシャルルは頷いた。


「前にベルナデット嬢がエリックと手合わせをしたときに、エリックに『この事はお母様には内密に』って一生懸命頼んでたよ。恐らく夫人はベルナデット嬢に淑女らしさを求めてるんだろうね」

「淑女らしいベルナデット……ふふ、全く想像出来ませんわ」


 カロリーヌはシャルルの言葉にクスクスと口元に手を当てて楽しそうに笑った。

 王都の社交界に全く出て来なかったベルナデットに対して、『ディアマン家の令嬢はとても美しく淑女の鑑のようなお淑やかで素晴らしい深窓の令嬢らしい』という有名な噂があるのだが、もしかしてその噂はレティシアがベルナデットを矯正するために流したのだろうかと思うとシャルルは笑えなかった。


「ええと、そういう事らしいから学校でのベルナデットの様子はあまり話題にしないであげた方がいいかもね」

「ふふふ、そうしますわ」




 そんな会話がなされたとは知る由もないベルナデットは、今どうやってカロリーヌへ口止めしようかと必死に頭を回転させていることだろう。

 そしてエリックに口止めした時にシャルルが一緒だったことを思い出したのか、はっとした顔をした後シャルルに縋るような目を向けて来た。シャルルにはそれが捨てられた子犬のように見えて微笑ましく思った。

 ご案内致しますと言ってレティシアが背を向けたのを見て、シャルルはカロリーヌに目配せをした。

 カロリーヌはクスリと小さく笑って、不安そうな顔をしているベルナデットにひとつ頷いて見せた。それを見たベルナデットは、ちゃんとこちらの意図が伝わったのだろう、ほっとして泣きそうな顔をしながらシャルルとカロリーヌに頭を下げた。

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