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◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「それでその時のベルナデットが本当に可愛くて!」

「クロエは本当にベルナデットのことがお気に入りね」

「だってとっても可愛いんだもの! 私としてはリディとももっと仲良くなりたいのだけれど」

「貴女が警戒されるようなことばかり言うからでしょう? 全く、あまりそんなことばかり言っているとお兄様にも女性の方が良いのかと誤解されてしまうわよ?」

「大丈夫よ。ねぇ、シャルル?」

「はははそうだね」


 シャルルは夏季休暇の半分が過ぎた頃のとある昼下がりに、何故かカロリーヌとクロエと共にティータイムを過ごしていた。

 これは恐らくクロエとのイベントである。

 恐らくというのは、日付と時間は同じだが場所が違うからだ。実際のイベント発生場所はパーゴラだが、今いるのは王宮内のサロンである。



 そもそも、シャルルはクロエとのイベントを回収するつもりはなかった。何故ならカロリーヌとクロエは既に十分仲が良いのを分かっているからだ。

 それに事ある毎に釘をさしてはいるが、これ以上好感度が上がって万が一にもクロエルートに入ってしまっては困る。

 その為シャルルは今日はカロリーヌを誘うことなく公務をこなす予定だったのだが、訪れる予定だった施設から体調不良を訴えるものが多数出たため本日の訪問は中止になったとの連絡が急遽入りその時間の予定がぽっかりと空いてしまった。それがちょうどクロエとのイベントの時間だった為、シャルルはイベント発生場所であるパーゴラに行ってみようかなと何となく思いそちらに足を向けた。

 すると部屋を出て間もなくシャルルの部屋の方に向かってくるカロリーヌに遭遇した。話を聞くとシャルルの公務が中止になったと聞き、ならば時間もちょうどいいし一緒にお茶をしないかと誘いに来てくれたらしい。シャルルは勿論その誘いに頷いた。


 シャルルはカロリーヌと並んでいつもティータイムに使っている部屋へと向かったのだが、その道中でクロエに会ったので驚いた。何故なら今向かっている部屋はイベントの起こる予定だったパーゴラからは大分離れているのだ。

 カロリーヌが誘ったのかと思って確認したが、クロエは本当にたまたまここを歩いていただけだったそうで。

 せっかくだからとカロリーヌがクロエを誘い、図らずもイベントが成立してしまったのだ。



 ゲーム上ではクロエは両親と確執があり、イベントではクロエから両親に対する想いを聞くことが出来る。

 しかし実際にはクロエの家族仲は至って良好であり、何ならたまに「ちょっと過保護過ぎて困る」と言っているくらいだ。

 だから話題がクロエの家族の話ではないのは全然構わないし、ベルナデットの話題が出るのもカロリーヌと仲が良いようだしまあいい。

 ただクロエがベルナデットやリディとやらを口説いているようだとか、女の子が好きだと誤解されてしまうだとか言う話題は心臓に悪いから止めて欲しいとシャルルは思った。


(誤解どころかその通りだし、僕はそれを知った上で婚約関係を結んでいるのだけれど、もしそれがカロリーヌにバレたらその途端百合ルートまっしぐらとかなりそうで怖い……! カロリーヌが僕たちを本当の婚約者だと思っている限りクロエがカロリーヌに話すことはないとは思うけど、クロエがもうちょっと自重してくれないとカロリーヌに気づかれそうでヒヤヒヤする……)


 表面上にこにこと2人の話を聞きながら、シャルルは内心気が気じゃなかった。


「あ、ベルナデットと言えば。お兄様、近いうちに彼女の家に行くって本当?」


 カロリーヌからの質問に、やっと話題が変わるとほっとしながらシャルルは頷いた。


「ああ、来週行くことになったんだ。昨日決まったばかりなのによく知っているね」

「お父様が教えてくれましたの」


 ベルナデットの家、つまりディアマン家の屋敷に行くのは、そこにシャルルと同じ前世の記憶を持つ者がいると思われる為だ。でなければ本来隣国の手に落ちる予定だったディアマン家がここまで平和な筈がない。

 ただしシャルルはその人物が特定出来たからと言って今のところその人物をどうこうするつもりはないし、交流を持つつもりもない。前者の理由はディアマン家の変化が悪い変化ではないということで、後者の理由はこの国の国民として王子が前世庶民だと知ったら不安になるだろうと思うからである。

 じゃあ何のために確かめに行くのかというと、念のため本当にちゃんとした人物なのか確認したいというのもあるが、一番の理由は単純な好奇心である。


 元々シャルルは夏季休暇の終わり頃に練習としてどこかの領に視察に行ってこいと言われていたので、それにディアマン領を希望した結果許可が下りた。

 未だに『シャルル殿下はランベール卿に憧れている』という誤解は生きているためシャルルがディアマン領を希望することは予想されていたらしい。ただ最後まで渋い顔をしていたマクシミリアンから、「憧れるのは良いが、くれぐれも脳筋にはなるなよ」と真剣な顔で言われた。それが昨日の話である。


「お兄様、わがままを言っても良いかしら?」

「もちろん。カロリーヌのわがままなら喜んで叶えてあげるよ」

「お兄様、内容も聞かずにそんなことを言ってはいけないと思うの」

「それが分かるカロリーヌのお願いだから大丈夫だよ」

「シャルルは相変わらずね」


 今度は心からにこにこと嬉しそうに笑って言うシャルルにカロリーヌはため息をつき、クロエは苦笑した。


「じゃあ本当に叶えてくださいね?」

「もちろん! それで、可愛いカロリーヌはなにがお望みかな?」

「今回のディアマン領の視察はあくまで練習だと聞いたのですが、それは本当ですか?」

「そうだね」

「でしたら、絶対にお兄様の邪魔をしないと約束致しますので私も連れて行っていただけませんか?」

「もちろん良いとも」

「……お兄様、本当にちゃんと考えてから返事をしていますか?」


 カロリーヌのお願いに諾と即答したシャルルにカロリーヌはジトっとした目を向ける。

 そんなカロリーヌも可愛いなぁと思いながらも、それは表には出さずに苦笑しながらシャルルは答えた。


「もちろんちゃんと聞いているし、考えて答えているよ。さっきカロリーヌが言った通り今回の視察はただの練習で目的があるわけじゃない。まあ練習なのだからちゃんと視察自体はするけど、そこにカロリーヌが居たって何の問題もないよ。それにカロリーヌが居てくれたら長い馬車旅も退屈しないですむしね」


 まあ元々はフィリップと2人で瞬間移動で行こうと思っていたのだが、そこはわざわざ口にはしない。

 カロリーヌはそれを聞いてシャルルがちゃんと考えて返事をしたのだと納得し、「それならお願いしますわ」と嬉しそうに微笑んだ。

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