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次のイベントはミカエルである。
シャルルはエリックの時と同様カロリーヌを部屋から連れ出した。向かうは彼の父である宰相の王宮内の仕事部屋だ。
ゲームでは、スパイの女に渡す機密情報の載った資料を持ち出す為にミカエルは父の仕事部屋にこっそり忍び込み、お目当てのものを手にして部屋を出たところでカロリーヌに遭遇する。能力が一定に達しているとカロリーヌが彼の不審な行動に気づき、最終的にミカエルが自白するという流れだった筈だ。
カロリーヌとの時間を楽しみながら歩いていると、前方に宰相の仕事部屋とその前に立つ人影が見えて来た。近づくとそれはシャルルの予想通りミカエルだったのだが、その手に書類が握られていることにぎくりとした。まさか父親との確執が無くなっても結局スパイの女と出会ってしまったのだろうか?
「あら? ミカエル?」
「あ、カロリーヌ殿下、とシャルル殿下!」
カロリーヌもミカエルの存在に気づき声をかけると、ミカエルもこちらに気づき慌てて頭を下げた。
「宰相様に御用かしら?」
「うん。父さんったら絶対今日必要だからって昨日徹夜で作ってた資料を忘れて行っちゃったみたいで。ここで待ってたら会えるかなって」
「そうなのね。たぶんお父様のところに行けば会えると思うわよ?」
「それはそうなんだけど……流石に陛下の部屋には行けないよ」
シャルルはカロリーヌとミカエルの会話をポカンとした顔で眺めていた。
ミカエルがゲームと同じ理由で書類を持っていた訳では無かったことには安心したが、それ以上に非常に気になることがある。
「君たち、そんなに仲が良かったの?」
シャルルの質問に2人は揃って彼を見た後、まずカロリーヌが口を開いた。
「だってクラスメイトですもの。『学園では全ての生徒が平等』ですのよ」
「あの、すみません。カロリーヌ殿下のご希望でしたので……不快であればすぐに改めますので」
「ドヤ顔のカロリーヌも可愛いなぁ……じゃなかった。ミカエル、改める必要は無いよ。寧ろ僕はカロリーヌと仲良くしてくれて嬉しい。これからもよろしくね」
「勿体ないお言葉です」
恐縮して縮こまるミカエルを見てシャルルがそう告げると、ミカエルはホッと息をついて少しだけ緊張を緩めた。
「ただ不満はある」
「え……」
安心したところに不機嫌そうなシャルルの言葉が聞こえてミカエルはピシリと固まってしまった。カロリーヌはシャルルが何を言うのか不思議そうな顔で見ている。
「なんで僕にはそういう態度とってくれないの? もう結構長い付き合いだよね? もう緊張するとかない筈だよね? カロリーヌだけずるい!!」
シャルルが納得いきませんという顔で堂々と告げた言葉にカロリーヌはくすくすと笑った。
言われたミカエルは予想外の言葉だったのですぐに理解が出来なかったらしく暫くポカンとしていたが、やがて慌てながら言葉を返した。
「そんな恐れ多いこと出来ません!」
「僕の希望だよ?」
「それでも! 僕にとってシャルル殿下は王子であると同時に恩人なんです! 気軽に接するなんてとても無理です!」
「えぇー……」
シャルルはミカエルの台詞にとても聞き覚えがあった。ミカエルルートで父との確執を解決したカロリーヌが彼に言われた台詞だ。
(じゃあその時のカロリーヌの台詞に近いこと言ったらミカエルがくだけて話してくれるようになるのかな?)
良い事に気づいたとシャルルは早速実行に移した。
ゲームでそう言われたカロリーヌは寂しそうに目を伏せた後、潤んだ瞳で上目遣いをしながら「私はミカエルともっと仲良くなりたいのだけれど……どうしても駄目ですか?」と問いかけミカエルを陥落させる。
(あの時はそんなに思わなかったけれど、今思い出すとめちゃくちゃ可愛かったな。流石カロリーヌ。そりゃあミカエルも頷くしかなくなるよな)
シャルルは内心でしきりに頷きながら、効果があったらラッキーくらいのノリで実行した。
「僕はミカエルともっと仲良くなりたいとずっと思っているのだけれど……どうしても駄目かな?」
シャルルの方が背が高い為上目遣いは出来なかったが、少し屈んでミカエルの顔を覗き込みながら寂しそうな顔で訴えた。
それを見たミカエルは一瞬固まった後、ボッと一気に首まで真っ赤になった。
(おぉ、ゲームと同じ反応)
暫くそのまま待っていると、消え入りそうな小さな声で「が、がんばります……」と答えてくれたので「ありがとう」と言ってシャルルはミカエルから離れた。
「お兄様、あまりミカエルをいじめないでくださいませ」
「心外だなぁ。いじめてなんていないよ」
シャルルに呆れたような顔を向けたカロリーヌはミカエルに声をかけ、その後シャルルとカロリーヌの2人で宰相を呼びに行った。
カロリーヌがミカエルと仲が良いことが分かり、ミカエルの「頑張る」という言質もとれ、シャルルは大満足で次の公務へと向かった。




