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そもそもシャルルは親しい相手の前以外では常に気を張って氷冷の王子の仮面を被っている。
なので大抵の人間はシャルルを恐れてあまり近づいてこないし、二コラについても同じ対応をしていれば問題ないだろうと思っていたのだが。
「シャルル殿下、さっきの授業で分からないところがあったんだけど聞いてもいいかい?」
「……どれ?」
「ありがとう。助かるよ」
「シャルル殿下、フィリップ、次の移動教室なんだけど場所が分からなくて。良ければ一緒に行ってもらえないかな?」
「……仕方ないね」
「ごめんね。早く覚えるよう頑張るよ」
「シャルル殿下、フィリップ、友好を深める為に君たちと一緒に昼食をとりたいのだけれど……迷惑かな?」
「…………構わないよ」
「本当? 嬉しいな」
「辛い。罪悪感が半端ない」
二コラが編入してきてから数日、シャルルは日に日に募っていく罪悪感に毎日部屋に帰るなりフィリップに泣き言を零していた。
「しっかりしてください」
「あんなにわんこのように懐いてくれてるのに素っ気ない態度しかとれないとか自分をぶん殴りたくなってきた」
「どうせ演技です。あの男が捕まったから代わりとして送られてきたに決まってます」
「違う。僕には分かる。あれは彼の素だ。友達になりたい」
「絶対駄目ですからね。友達ならエリック様だけで我慢してください」
「ううう……」
フィリップも慣れたもので、シャルルの嘆きに相槌をうった上でしっかりと釘をさすのを忘れない。
二コラは確かにスパイだが、あの人懐っこい性格は彼本来のものだ。話す度彼と仲良くなれたら楽しいだろうなと益体のないことをどうしても考えてしまう。
なのにシャルルはそれをフィリップに理解してもらう術を持たないし、情報を流さない為に塩対応しなければいけないし、その度に二コラが寂しそうな顔をするのが見ていられないし。
(……いっそ二コラに全て話すか?)
それは一種の賭けである。上手くいけば全てが解決するが、失敗すればその瞬間オルタンシア王国は滅ぶかもしれない。
流石にそこまで思い切れないと小さく首を振り、もう少し耐えるしかないかと深くため息をついた。




