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「結論から申し上げますと、今回もやはり隣国が絡んでいるようです」
「オングルから何か出た?」
「首輪を付けられた痕跡がありました」
「そう……」
フィリップの報告はシャルルの想像通りのものだった。
この『首輪』とは物理的なものではなく、魔力で魔物を縛るものでありゲーム上でもそうやって魔物にカロリーヌを襲わせていた。
ただしこの魔法には欠点がある。術者が近くにいないといけないのだ。首輪という呼ばれ方も、『飼い主が近くでリードを握っていなければいけない、使い勝手の悪い代わりに出来損ないでも使える魔法』という揶揄から来ている。
その性質からゲームでは学園内にいるベルナデットに実行させていたが、今のところ彼女はあちら側についていない。というより、あちら側の邪魔になっている。
ベルナデットが実行者でないということは、当然別の実行者がいるわけで。
「隣国と断定したということは、犯人が捕まったの?」
「はい。学園内に不審な者がいたため捕らえていたのですが、その者からリードの痕跡が出たので先ほど連行致しました」
「男?」
「はい」
そこまで聞いて、シャルルは難しい顔をして黙り込んだ。
(ゲーム上で出て来たスパイは女だった。今回捕まった奴以外にもスパイがいると考えた方がいいだろうな。捕まった奴が何か情報を吐いたら良いんだけど、スパイだしなー。あんまり期待しない方がいいか)
「シャルル殿下」
呼びかけられてそういえば話の途中だった顔を上げると、フィリップが微妙な顔をして見つめていた為シャルルは首を傾げた。
「どうしたの?」
「……シャルル殿下は、一連の事件について何かご存知なのでしょうか?」
意を決したようにそんなことを言われて、シャルルは目を丸くした。これまでの会話の中でそう思われるようなことを言っただろうかと思い返してみても、特に思い当たることは無い。
「ご存知なのか」と聞かれれば、「知っていると思ってたけど僕の知っているのと違った」と言うのがシャルルの回答である。しかしそんなこと言えるわけがない。もっと言えば上手く説明できる自信がない。
「僕はカロリーヌとフィリップから聞いた情報しか知らないけど、何でそう思ったの?」
「それは、シャルル殿下の態度が」
「態度?」
「妙に冷静というか、怯えないのが異常というか、涙目で慌てふためかないのなんて殿下じゃないというか」
「お前が僕のことをどう思ってるのか良く分かった」
「自分だけでなく、シャルル殿下を知る人は皆そう思うかと」
「……」
疑わしいことを言ってしまったわけではなかったことには安心したが、冷静だから異常という認識は如何なものか。しかし普段の行いを思い返して反論も出来なかったシャルルは、とりあえず八つ当たりに目の前のフィリップのほっぺたをつねっておいた。




