2番目の事件?
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「ごめん、もう一回教えてくれる?」
悪役令嬢ベルナデットとの邂逅を果たし、それから数日後のカロリーヌとのお茶会。シャルルはカロリーヌに聞き返しながらデジャヴを感じていた。
「驚きますわよね、学園に魔物が入ってくるなんて」
そう言ってカロリーヌは頬に手を当ててため息をついたが、シャルルが驚いたのはそこではない。その事件は知っている。2番目の事件だ。
最初の襲撃に失敗したベルナデットは、屋外で行う魔力制御の授業中に再び動く。
今度はフオより殺傷能力が高く、飛んで逃げてくれるため証拠が残りにくいオングルという鳥の魔物を使ってカロリーヌを狙ってくるのだ。ゲームではそうだった。
「その、魔物はベルナデット嬢を狙ったの?」
「ええ、どうやらベルナデットが6歳の時に殴って気絶させたことがあった個体だったようで」
「なんて?」
聞き間違いだろうか? 6歳の時にと聞こえたような気がして、シャルルは思わず聞き返した。聞き間違いじゃなかった。
「一瞬の出来事で私は何も見えなかったのですが、気づいたらベルナデットの近くに魔物が倒れていて。先生がとどめをさして調査機関に転送していました。皆さんが突然の魔物の襲撃に怯える中、ベルナデットとその侍従の方は冷静に先生とお話されていて、改めてすごい方だと思いましたわ」
カロリーヌがうっとりと語るのを聞きながら、1箇所どうしても気になるところがあったのでシャルルは神妙な顔でカロリーヌに尋ねた。
「ベルナデット嬢の侍従の彼のこともすごいと思ったの?」
不貞腐れたような声になってしまったシャルルの言葉を聞いてカロリーヌは一瞬なんのことか分からない顔をしたが、自分の言葉を思い返してクスクスとおかしそうに笑った。
「すごいとは思いましたがそれだけですわ。それにあの方もベルナデットの事しか見ていないもの。前にも話しましたけど、私の理想はお父様とお母様やお兄様たちのようにお互い想い合った関係ですから」
「そ、そう」
純粋なカロリーヌの言葉に、シャルルは後ろめたさから曖昧な返事をしてスッと目を逸らした。マクシミリアンとデルフィーヌはカロリーヌの言う通りまごうことなき相思相愛であるが、シャルルとクロエは利害の一致による偽りの関係である。
シャルルのこの態度もカロリーヌには照れ隠しのように映るらしく、嬉しそうににこにこと見つめられいたたまれなくなったシャルルはひとつ咳払いをした。
「そ、そういえば! カロリーヌのクラスにはエルネストもいたよね? 彼は大丈夫だった?」
「エルネストですか?」
突然の質問にカロリーヌはキョトンとして、その時のことを思い出すように視線を彷徨わせた。
シャルルは別に話題を逸らすためにエルネストのことを聞いたわけではない。
ゲームではベルナデットがオングルをけしかける為、当然彼女自身は対処などしない。カロリーヌに向かってくるオングルに対処するのはエルネストの役目だった。
最もまだ好感度が上がっていない状態なので、カロリーヌがお礼を言っても馬鹿にしたように鼻で笑われるのだが。
「ああ、思い出しましたわ。彼、確かベルナデットのことをジッと見ていました。彼にしては珍しく感心したような顔をしていたのであら? と思いましたの。」
「あのエルネストが?」
「ええ。もちろんお兄様に向けるような崇拝の眼差しには遠く及ばないものでしたけれど」
ふふふと笑いながら言うカロリーヌに、シャルルは乾いた笑いを返すしかない。
エルネストのシャルル信仰は年々酷くなっている。敬われているのなら安心だと思っていたが、最近は逆に何かのきっかけで失望されてバッドエンド一直線になってしまうのではないかと気が気ではない。
いつもは楽しい筈なのに話題のせいでいまいち楽しめないお茶会は、いつかと同じように難しい顔をしたフィリップがシャルルを呼びに来たことでお開きとなった。




