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勝負の行方


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 訓練場の一角が野次馬で溢れかえっている。

 昨日教室前の廊下という目立つ場所で約束を取りつけてしまった為、その話は思った以上に広がってしまったようだ。

 しかしそんな周りのことなど気にもならない様子で、エリックとベルナデットは今から始まる戦いに瞳を輝かせてお互いを見つめている。


「武器は模擬剣のみで、相手に致命傷となる攻撃を加えた方を勝者とします」


 審判役を頼まれたアランの言葉に2人が了承の意を示した。


「それでは、始め!」




「マジかよ……」


 エリックは地面に仰向けに倒れてぽつりと呟いた。

 周りの野次馬たちは誰一人声を上げず、人で溢れかえっているのにも関わらずまるで時が止まったかのように静まりかえっていた。

 シャルルも目の前の光景が信じられず呆然とした。


(エリックが一瞬で負けるなんて……)


 勝負が始まった瞬間、ベルナデットの姿が消えた。

 それはシャルルのように瞬間移動の魔法を使ったのではなく、凄まじいスピードで彼女がエリックへと駆け寄ったからで。

 野次馬たちがベルナデットを見失っている間に彼女はエリックの背後に回り込み剣を振りかぶったのだが、エリックも負けてはいなかった。

 誰もが彼女を捉えられない中しっかりとその動きを見切り、振り向いてベルナデットの攻撃を受け止め、弾かれて体勢を崩した所で急所である首を狙った。問題はその後だ。

 体勢を崩したと思われたベルナデットはまるで猫のように柔軟な動きでスルリとエリックの攻撃を避けたと思えば、それだけでなく彼の攻撃の勢いを利用してくるりと自分と相手の位置を入れ替え逆に喉元にピタリと剣を突きつけたのだ。


 誰もがエリックが勝つと信じて疑わなかった為、未だに目の前で起こった出来事が信じられない。

 もちろんシャルルも当然のようにエリックが勝つと思っていた。


「あの、エリック様……」


 立ち上がりはしたものの未だ呆然としているエリックへベルナデットが声をかけた。

 謝罪でもする気か? とシャルルはベルナデットを見たが、その表情を見て「あ、これ違うわ」とすぐに理解した。何故ならベルナデットの目がキラキラとしている。あれは謝罪をする人間の顔ではない。


「お相手いただきましてありがとうございました! とっても楽しかったですわ! それで、あの、もしよろしければまたお手合わせをお願い出来ますでしょうか……?」


 最初は元気いっぱいだったのに、最後は恥じらうようにもじもじしながら上目遣いでお願いをするベルナデットに、ああいうあざとい仕草は悪役令嬢らしいなとシャルルは思った。

 しかしその『お願い』の内容がどう考えても悪役令嬢ではないなとも思った。

 そんなベルナデットのお願いにエリックは一瞬動揺した様子を見せながらも、すぐに笑顔で了承の意を返し、次の約束まで取りつけていた。

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