対面
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「ベルナデット・ディアマン様はいらっしゃいますか?」
フィリップがカロリーヌのクラスの入り口あたりにいた生徒に尋ねると、その生徒はまずフィリップが教師か生徒か判断しかねて困った顔をした。その後同行者を見て判断しようとしたのかフィリップの後ろに視線をやったところでシャルルの存在に気づき、慌てて教室の中に入って行った。
程なくして出てきたのは男子生徒が2人。おかしい。
「自分はディアマン様を呼んだのですが……」
フィリップが戸惑ってそういうと、片方はにこりと笑い、もう片方は何ともいえない顔をした。
その画面越しに見たことのある笑顔に、シャルルは驚いて目を見開いた。
「私がベルナデット・ディアマンですわ」
「僕はお嬢様の侍従のアランです」
「え? ベルナデット・ディアマン様? え??」
「うちのお嬢様がすみません」
フィリップが混乱しながら目の前の2人の間で視線を行き来させていると、ベルナデットの侍従だと言うアランが申し訳なさそうに謝罪した。
フィリップが状況を呑み込めないのも無理はない。
「なぜ男子制服を?」
「家庭の事情ですわ!」
(どんな事情だよ!?)
(((分かる)))
シャルルが内心で盛大に突っ込んでいると、後ろに見えたクラスメイト達がしきりに頷いている。きっとみんな同じ気持ちなのだろう。
ベルナデットと名乗る相手はブロンドの髪にペリドットの瞳。その点はゲーム通りなのだが、サラサラのロングヘアーはスッキリとしたショートカットに、制服は何故か女子制服ではなく男子制服に変わっている。見た目は完全に王子様だ。
「えっと……殿下、私に何か御用でしょうか?」
首を傾げて尋ねるベルナデットに、シャルルはハッとして本来の目的を告げるべく口を開いた。
「昨日の事件の事を聞いたよ。まず、勇敢な君の行動に感謝と称賛を」
「勿体無いお言葉です」
「それと、妹が怪我をしなくて済んだことに対してお礼がしたい。何か欲しいものはある?」
「欲しいもの、ですか?」
「そう。僕の用意できるものなら何でもいいよ」
「殿下」
時と場合によっては危うい発言をするシャルルをフィリップが名前を呼んで咎めた。
ベルナデットはと言うと、シャルルの申し出にキラキラと瞳を輝かせている。
「でしたら私、殿下と手合わせをしてみたいですわ!」
「お嬢様!?」
今度はベルナデットの発言をアランが名前を呼んで咎めた。
「だって殿下とっても強そうなんだもの。お兄様はお相手していただいたことあるって言ってたもの。殿下が何でもいいって仰ってくださったんだもの。この学園では全ての生徒が平等の筈だもの」
余程シャルルと手合わせがしたいのだろう、ベルナデットは口を尖らせて苦言を呈する自らの侍従につらつらと自分の正当性を訴えている。
一方シャルルは予想の斜め上の希望に表面上は冷静に考えながら、内心盛大に焦っていた。
(まずいまずいまずい! ジェレミーがベルナデットは彼に匹敵するくらい強いって言ってたけど、この子も脳筋か!! どうしよう!? いくら強くたって女の子に剣を振るうなんて無理無理! ……斯くなる上は)
「ベルナデット嬢」
未だアランにつらつらと訴え続けるベルナデットを呼ぶと、彼女はシャルルを期待を込めた目で見つめた。
「まず、僕は君と手合わせすることは出来ない」
シャルルの答えにベルナデットは残念そうに眉をへにょりと下げ、従者2人はあからさまにホッとした顔をした。
「けれど、僕より強い友人を僕の代理として紹介しよう。それでどうだろうか?」
続いたシャルルの言葉にベルナデットは一転して嬉しそうな顔になった。シャルルの言う『友人』とは当然のようにエリックのことだ。困った時のエリック頼みである。
満面の笑みで「よろしくお願いします」と言うベルナデットにひとつ頷いて、翌日の放課後訓練場でと約束を取りつけてその場は解散した。




