最初の事件?
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「カロリーヌ様が狙われたと思われます」
「やっぱりそうか」
カロリーヌのクラスでの騒ぎの後、フィリップはシャルルに頼まれて情報収集を行っていた。
フィリップはその間シャルルの護衛が居なくなるため最初は断ったが、常に教師か騎士かイザベルの目のあるところにいることという条件で渋々引き受けた。
その結果分かったのは、怪我人は出なかったこと、その功労者がベルナデットらしいということ、そしてその矢が隣国で使われている魔道具であったことだった。犯人は捕まっていない。
フィリップはシャルルが意外と冷静な事に驚いた。
「もっと取り乱すかと思いました」
「これでも王族だからね。隣国との関係も良好とは言い難いし、命を狙われることもあるとは分かってるつもりだよ」
「分かってるなら護衛を撒かないでください」
「……善処するよ」
シャルルはフィリップからグサグサと突き刺さる視線から目を逸らして思案する。
(恐らく今回の事件がゲームで言うところの聖女覚醒イベントだったんだろう。席もイザベルがカロリーヌの窓側の隣に座っていたらしい。魔物じゃなくて弓矢だったのは、恐らくベルナデットが隣国についていないから。あの手引きにはベルナデットが絡んでいた筈だから)
「犯人は捕まりそう?」
「難しいでしょうね。遠くの木立の隙間から矢が放たれる瞬間を見たというディアマン嬢とその侍従がすぐに犯人を追ったらしいのですが、辿り着いた時にはもう犯人どころか靴跡など何の痕跡も残っていなかったとのことです」
「……追った?」
「はい」
「ベルナデット嬢が?」
「はい」
(ええええええーっと??? 遠くの木立から矢が放たれた瞬間を見た? カロリーヌは1-Bだったよね? 去年僕が居た教室の筈だから、遠くの木立ってたぶんあの1kmくらい離れてるアレ? あんなとこから放たれた矢が見えるの?? ってか何で授業中に遠くの木立見てたの? やっぱり仲間で合図でもあったの? いやそれだったら阻止する意味が謎すぎる。無いな。ってことは……)
――ベルナデットも『オルタンシアの乙女』を知っているのかもしれない。
「フィリップ。明日の放課後、ベルナデット嬢にお礼をしに行こうか」
「畏まりました。何をご用意致しましょう?」
「そうだなぁ……用意はしなくていいよ。彼女の望むものをあげよう」
「そんなこと言って『王妃の座』とか言われたらどうするんですか」
「大丈夫だよ。恐らく彼女はそんなもの望まない」
もしゲームの知識があるのなら、確実に死ぬ予定の王子なんて望む筈がないから。
フィリップが確信を持って言い切るシャルルを訝しげに見ていたが、シャルルはそれを無視し明日ベルナデットにどう聞こうかと考えを巡らせた。




