魔法学園
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「でもやっぱり納得出来ないんだよな~」
「突然なんですか?」
「ん~、なんでもない」
「だったらそんな気になるような独り言は止めてください」
「はは、気を付けるよ」
王子である自分に容赦ない言葉を投げかける彼にシャルルは笑った。彼はフィリップという名前で、シャルルの侍従でありルームメイトである。
あれからエルネストやエリック、クロエやミカエルといった攻略対象たちとはそれなりに交流をして良好な関係を築けている。ジェレミーもドナシアンの義理の息子という関係上度々顔を合わせているが、ゲームのジェレミーとは似ても似つかないとても良くできた好青年のまま変わりはない。
相変わらず天使のようなカロリーヌに何かあってはいけないので念のため鍛錬は続けているが、特に大きな問題もないままシャルルは昨年いよいよゲームの舞台である魔法学園へ入学した。
魔法学園への入学はこの国の全ての国民の義務である。
この世界では全ての人が訓練をすれば魔法が使えるようになるため、オルタンシア王国では身分に関わらず全ての子供たちに16歳から3年間、全寮制の学園に通い魔法についての正しい知識を学ぶことが義務化されている。それはたとえ王族であっても例外ではない。
まあ大抵の貴族たちは各家庭で先んじて魔法の教育を受けているため、実際のところは魔法を学ぶというより社会性を身に着けることがメインなのだろうとシャルルは思っている。
と言ってもそれは貴族に限った話で、平民にとっては学園の存在意義通り正しい魔法の知識を学ぶ場所だ。そのため貴族との無用な諍いによって勉学に支障が出ないようにと、学園内では生徒は皆平等という校則が定められており、それを破ればどんなに身分が高かろうがそれなりの罰を受けることになっている。
さて、シャルルの同室であるフィリップだが、彼はシャルルより2つ年上であり現在19歳である。しかしシャルルと同じく昨年度入学だ。
学園は16歳で入学、となっているが、年齢など本人の自己申告である。ここで先ほどの話に戻るが、この学園では全ての生徒は平等であり、それに伴い使用人の同伴は認められていない。
そのため大抵の貴族は我が子と歳の近い使用人の年齢を偽り、同じ年に入学させるのだ。
そんなわけでフィリップは現在シャルルと同じ17歳ということにされてこの学園にいるのだが、実際は19歳と言っても疑われるくらいの老け顔、良く言えば落ち着いた凛々しい顔である為、恐らく彼が17歳だと本気で思っている人はいないだろう。実際担任の教師にも初授業でもの言いたげな顔をされていた。
「とりあえず、シャルル殿下に不都合のある悩みではないのですね?」
「うん。納得はいかないけどとりあえず僕にとって都合はいいことだよ」
「ならいいです」
そう言ってフィリップは手を止めていた明日の準備を再開した。
シャルルは自室でゲームのことを考えながら独り言を言っていた為、それが癖になってしまいたまにフィリップの存在を忘れこうして独り言を言ってしまうことがある。
その独り言は大抵シャルルが現状に不安を覚えた際に呟くので、最初の頃はフィリップにもわりとしつこく聞かれたが、どれだけ聞いてもシャルルが話す気はないと気づいてからは軽い確認とちょっとした苦情は言われるもののそれ以上は追及しないようになった。
「そういえば、カロリーヌ殿下が先ほど学園にお着きになったらしいですよ」
「ちょっとそれを早く言ってよ! 会いに行かないと!!」
「シャルル殿下、ステイ。いくらシャルル殿下でも女子寮には入れませんよ。変質者になりたいなら止めませんが」
「そんなことするわけないだろ! イザベルに外で待ってるって伝えてくれ」
シャルルの言葉にフィリップはため息をつきながらも言われた通りのことをイザベルに伝えた。
イザベルはカロリーヌの侍女で、フィリップの双子の姉だ。彼らはテレパシーのようなものが使えるらしく、カロリーヌが到着したこともその能力で彼女から聞いたのだろう。
ちなみに2人は双子だが見た目は全く似ておらず、老け顔のフィリップに対してイザベルは童顔でよく子供に間違えられている。彼女も確実に担任から不審な目で見られることだろう。
「『すぐに行きます』とのことです…ってシャルル殿下!!」
カロリーヌからの伝言を聞いて、シャルルはあっという間に搔き消えた。
学園内であり危険はほぼ無いとはいえ、侍従であると同時に護衛も兼ねている自分を置いて飛び出していったシャルルに憤りながら、フィリップは走ってシャルルの元へ向かった。




