始まり
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その日、オルタンシア王国第一王子シャルル・オルタンシアは衝撃を受けた。
以前から小さな違和感はあったのだ。初めて聞くはずの地名や名前に聞き覚えがあったり、知らないはずの計算がスラスラ出来たり、魔法を使えることが特別なことに感じたり。
そんな小さな違和感に首を傾げながらも、まあそんなこともあるかと深く考えてこなかった。
しかし5歳になったので歴史の勉強を開始しましょうと言われ、家庭教師のオーレリアンに国の成り立ちを教えてもらった時、今までの違和感が全て解消された。
(これ、妹がやってた乙女ゲームの舞台だ!?)
そのことに気づくと同時に自分の立ち位置についても思い出してしまい、思わず絶望してえぐえぐと泣き出した。授業中に何故か突然シャルルが泣き出したわけだが、オーレリアンに動揺はない。
何故なら王子はめちゃくちゃよく泣く。
犬が怖かったとか、転んで膝を擦りむいたとか、褒められて嬉しかったとか、花が咲いているのに感動したとか。子供らしい理由だったりおおよそ子供らしくない理由だったりとにかくよく泣く。
そのため原因は分からなかったが、オーレリアンはまあいつものことかと思い、ただそっとハンカチを差し出すだけだった。