表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/22

第七話 主人公気質人間、大量発生中 


 ――沈黙と興味で包まれた教室。 

 しかし、私の耳にはこうしている間にも、しっかりとアホイケメンの声が流れてくる。


【やはり、カンナ嬢……さすがだな。みんな君に注目しているようだ。でも最後に彼女のハートを射止めるのは僕だ。そうして、僕らは二人は新しい領地を作り、いつしか二人で新しい国を作るんだ】


 私はごくり、とつばを飲み込んで正面の男を見た。

 茶髪の癖毛に、地味な割にどこか気品の漂う仕草。


 この人……完全に、領主経営系ヒーローだ……。



【カンナ。前世から君は人気があったね。でも大丈夫、すぐに僕のことしか考えられなくさせてあげるよ。身も心も、ね】


 不穏んんんんんん!!!!!!!


 右横を見る。

 艶やかな長髪に、どこか曇った眼つき。

 そして、その眼に映るのは明らかな独占欲。たしかに、一度身を委ねたら完全に堕とされそうなヤバさである。

 どこかのちょろい吸血鬼より、よっぽど吸血鬼っぽい。

 こいつは、闇堕ち系ヒーローか……。


【ふん。まあ他の男どもに負ける気はしないな。彼女を性的に満足させてあげられるのは、俺だけだ】と左側からはやけに色っぽい声。


 ムーンライトノベルズ系ヒーローである。頼むから月曜一限から「性的に満足」とか言わないでほしい。

 それともあれか。私はそんなに性的に不満足そうな顔でもしてたのかな?????

 アッハッハッハ。死にたい。


【なるほど……。これが人間の女性をめぐる戦い。でも僕は負けない!!】


 あんたはもうちょっと忍べややああああ、と私は脳内で人外系ヒーローにほえた。


 百歩譲って、貴族学院に入学はわかるよ。でも、もっと大人しく過ごせばいいのではないか。

 こいつは、本当に夜の一族としての危機感があるのだろうか。


 真面目に聞きたい。

 まあ、確かに大切にしてくれそうな雰囲気はあるが、この人について行った瞬間、吸血鬼同士でとんでもない争いが勃発するんだって。


 アッハッハッハ。

 嬉しいね。



 





 そこで、ようやく他の男に注目し始めたのか、主人公気質な男たちが、他の男に対して、絡み始めた。


「へえ、そんな地味なやつが、おれのカンナと踊ろうってのか」と、脳内ピンク男――グレイズが、アレックスに言う。


 いや、その前にいつから私がお前のになったんだよ。


「貴様……! 失礼だぞ。この第一王子……じゃなかった。この名もなき地味な貴族アレックスに対して無礼だぞ!!!」

 

 いや、名も無き地味な貴族って自称するもんじゃないぞ、と私は思った。

 そもそもこの王子、口が滑りすぎである。さっきから「王族」と言いまくっている。守秘義務も何もあったもんじゃない。


 一方の反対側では、

「ふん。貴様のようなぽっと出に何がわかる。俺と彼女は前世からの仲だ。」

「へえ、それを言うなら、僕だって種族を超えた仲だ!!」

 と言う世にも電波な会話がなされていた。


 馬鹿お前! 

 でかい声で言うなってぇ!!!


 前世の記憶を持つイケメン、と吸血鬼のイケメン。どっちか片っぽでも処理が大変なのに、両方同時に張り合わないでほしい。





 そんな混迷した状況で、私は何とか一筋の光明を探し求めていた。

 たしかにまずい状況ではある。

 こんなクラスの注目を浴びるような予定は、私のスケジュールにない。これまでも、そしてこれからも。


 しかし、である。

 

 まだ解決の糸口はある。

 そう。簡単なことだ。


 幸い、この騒ぎは、まだクラスの中にとどまっている。運がいいことに、他クラスや上級生には、知られていないのだ。どうにかしてこの状況を鎮め、なんとかしてクラス中の人間を懐柔する。

 それしか方法は――、



 しかし、私の地味ライフをここまで追い込んでくれた男子生徒4人はクラス中の話で終わらせてくれるつもりはなかったらしい。


「ここまで揉めるとあらば、仕方ないな」と第一王子アレックスが言った。


「ああ」とヤンデレイケメン、クレメンスもうなづく。


「もちろんだ」と自信ありげにグレイズが笑う。


「さっさと終わらせましょうか」と吸血鬼も答えた。



「「「「決闘だ」」」」



 はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?!?!!?!?!?!?!?!??!?!?



「それは、一番悪手だろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」と私は恥も外聞も、ついでに地味キャラとしての誇りも投げ捨てて叫んだが、残念ながら降ってわいたゴシップに熱狂していたクラスの歓声に、私の嘆きはかき消されてしまった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ