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第三話 だいたい前世で失敗したイケメンはヤンデレになりがち


【あれは死ぬ前の話だ。俺には好きな女がいた。そいつを何としてでも手に入れたいと思い、あらゆる策略を使って自分のものにした。……でも、おれはどうしてもそいつには、本当のことを言えなかった。大好きだと、言うことができなかった。俺はあいつに、「これは契約結婚だ。君を愛することはない。」と言ってしまった。そんな俺の冷たい態度のせいで、妻は自殺した。ああ、俺のせいだ。妻は俺に浮気相手がいると思っていた。でもそうじゃない。浮気相手ではなく、生き別れた妹だったんだ。生き別れた妹とは言いだせずに放っておいたら、このざまだ。ふふ……そのあと俺もすぐに自殺した。そして、これが二度目の人生。】



 えぇ……おっも……。


【前世とは違い。いまだに俺の前にあいつは現れない。そうだよな。俺みたいな人間の屑はどうせ何も守れやしないんだ】


 私はドン引きしていた。

 そりゃそうである。


 暗すぎる。重すぎる。病みすぎるの三段活用。完全に前世で失敗して闇堕ちパターン系のヒーローである。


 おいおい、大丈夫かよ。こんなやべー男が野放しにされてしまっていいのだろうか。貴族学院の入学資格って大丈夫ですか。いや、本当に。


【でも俺は、今世で彼女と似ている人に出会うことができた。もしかしたら、一度前世で死んでしまった彼女も、もう一度転生しているのかもしれない】



 ほう、なるほど。

 これはこれでよくあるパターンだな、と私は暢気に考えていた。


 きっとなんやかんやで前世の彼女に出会って、誤解を解き、再び愛を深めるタイプのお話だろう。


 一体、そんな大変そうなお相手は誰だろうか。

 彼にはぜひとも、頑張ってほしい。


 ただし、私の見ていないところでな。


【それは――俺の左横の席に座るアーチボルト男爵家のカンナ嬢だ】


「うっそぉ……」


「カンナさん、何かわからないことでもありましたか?」


「い、いえ、先生の教え方は非常にわかりやすいです。平凡な私にもよくわかりますありがとうございます」


 「平凡な私」と言う庶民ジョークが受けたのだろうか。教室は割とクスクスと笑い声が漏れている。


 そんな温かな空気の中で、私は冷や汗だらだらだった。

 え、私……、ロックオンされてるんですか……??




 いやでもおかしくないか。私は、中背中肉。くすんだ茶髪に、茶色の瞳。それに加え若干のそばかす、と言う何とも面白みのないモブ顔である。

 

 この右横のイケメンが、前世でべたぼれだった女性が私みたいなモブ顔なわけがない。

 なんだろう。それとも、この闇堕ちイケメンは、私みたいなモブ顔を溺愛するモブ顔ハンターだとでもいうのだろうか。


【いや、彼女は相当の美人だった。潤んだ翡翠色の目、頼りなげに笑う儚い笑顔、肌の柔らかさ。頬をくすぐる瑠璃色の髪。彼女の近くに行くだけで、甘い花のような香りが瞬時に漂った。カンナ嬢はそんな彼女に似ている】



 は??

 え、全然違くない???


 一体どこが似ているんですか、と私は疑問を隠せなかった。

 

 潤んだ……というよりドライアイ気味のぱさついた眼。モブ人生に命を懸ける笑顔。頬をくすぐりもしない若干痛み気味の茶髪。


 こいつ、私のどこを見て、前世の彼女だと思ってるんだ???


 転生次いでに眼の機能がイカレてしまったのだろうか。


【カンナ嬢の俺を見る目つきは、彼女に似ているし、カンナ嬢の口から出る発言も、前世の彼女にそっくりだ……】



 うそつけぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!

 うそつけ、嘘を!!!!!


 私は脳内でほえた。


 今のところ私、基本この教室で先生に謝るくらいの発言しかしていないんですけどぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!


 あんたの前世の彼女、聞く限り絶対そんなキャラじゃねぇだろぉぉぉぉぉ!!!!!



 やばい。

 しかも目つきってなんだよ。


 私、普通に人を見ていただけなんですけど……。

 この男を見るときは、絶対に変顔しながら見つめてやろう、と私は誓った。

 

 ダメだこいつ。早く何とかしないと。依存系メンヘライケメンで笑えるのは、自分が対象になっていない時である。こんな男に絡まれ続けたらいつの間にか、屋敷の地下に監禁されてそうである。



【ああ、監禁したい。彼女からすべてを奪い去って、彼女のすべてを俺で染め上げるんだ。もう前世のような失敗はしない。ただただ甘やかそう。食事もすべて、俺の手で食べさせてあげるんだ。そうして、俺は彼女と一つになる。】



 ほらね。

 下手な怪談とかよりよっぽどホラーである。


 いかん、いかんぞ。

 私は、絶対に逃げられない地下室の構想を楽しそうに練るヤンデレイケメンから意識をそらし、他の対象を見つけようと集中し始めた。


 なんかもっとこう……馬鹿な男がいいな。何も考えていなさそうなアホのぱっぱらぱーが恋しい。

 いやマジで。



 そうして、周囲をうかがっていた私だったが、ありえないほど適任を見つけてしまった。


 それは私の左横の男子である。

 派手な真っ赤な髪色に、盛大に着崩した制服。チャラチャラした外見。


 いいねいいね、と私は小躍りしたい気分だった。右横の闇堕ち男子には悪いが、入学初日の午前中の月曜一限目から重過ぎである。


 それに比べ、このだらしない男はどうか。

 どうせ何も考えずに生きているのだろう。

 いいね、こういう男こそまさに、私が望んでいたタイプ!!!!


 カチリ、と音がする。


 バリトン鬱ボイスは消え去り、代わりに能天気そうな男の声が響く。



【クソッ。体が熱い……全身がうづく……。ダメだ……早く、セックスをしないと……!!】



 ……あのお、疑問なんですけど、この学院、本当に大丈夫ですか??


イメージ;契約結婚もので失敗して前世の記憶を引きずっている系ヒーロー

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― 新着の感想 ―
[一言] 前と左右をやべぇのに囲まれた!! カンナ孃! 早く逃げるんだ! 領地に! できれば修道院に避難だ!! ほとぼり冷めた頃に出所するといいよ。
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