反抗してもいい頃
ご無沙汰しております。
前回の投稿からおよそ1年。完結マークを付けた私でありましたが、直近いろいろ我慢しきれないことがありまして再び筆を執った次第でございます。
端的に言いますと、事故りました(テヘペロ。
車、全壊で廃車でございます。
……順立ててお話しますと、事の発端は昨年の冬。
当農園は夏と秋に大きな繁忙期が訪れます。夏はなんとか乗り切れたのですが、問題は秋。天候に恵まれ、近年ありえないほどの豊作に湧いたのでありますが(湧いたのは義父の懐だけです。我々の給料に何の変化もありませんので)コンテナ箱の持ちすぎで腰をやってしまったのです。
ギックリ腰? いえいえ、腰椎ヘルニア。
これがね、ビックリするほど痛い。初めは腰の辺りに違和感を感じるんですよ。お風呂に入ってあっためていれば治るかな、と1か月。今度は痛みが太もも辺りに落ちてきましてね。痛みもシクシクからジクジクに変化して、こりゃまずいなと。
知り合いの接骨院に行って電気やら湿布やらいろいろ処方してもらったのですが、時すでに遅し。痛みはいよいよ足の爪先辺りにまで落ちてきて、痛くて歩けなくなりましてですね。
それでもなんとか秋の繁忙期は切り抜けたんですが、暖かくなったら治るよという柔道整復師の言葉を信じて4カ月たっても痛みは引かず、とうとう整形外科に行ってみたわけなんですよ。結局ヘルニアということで、痛み止めの薬とブロック注射で痛みが治まるのを待つことになったのですが、この痛み止めの薬が曲者で、神経性の薬なので飲むと強烈な眠気に襲われるんですね。
飲んでみてさすがに危険だと思ったので、なるべく車の運転はしないようにしていました。
しかし、一向に脚の痛みはよくならず薬の量も増えに増え、そうこうしているうちに夏も近づき注文を受け付ける時期になりまして。現況の円安のあおりを受けた資材農薬肥料の高騰に喘ぐ農家が次々作物の値上げに踏み切る中、値上げもせずに踏ん張った当農園に注文が集中したこともあり(現段階で昨年のおよそ3倍)寝る時間さえなくなって、しかし農作物が育つと共に義父の「農作業しろよ」の突き上げに根負けし、仕方なく……本当に仕方なく畑に出ることになって今に至るというわけです。
早い話が居眠り運転です。
申し開きもございませんが、一つ言い訳をするならば事故ったのは自分の家の敷地内でしたので、怪我人もなく自損というとこで済みました。
家が見えたとたん、気が緩んで意識が途絶えたんですね。ぶつかった時のことをなんにも覚えていないんですよ。
とまぁ、それが笑い話で済むわけもなく。
もとから私の過労を心配していた周囲の皆さんには「いいから休め」と言われ、旦那や娘たちには命の心配をされ、いよいよ私も義父に物申す時が来たなと立ち上がったわけなのです。
「今年度は前年度より〇百件注文が多いのは資料を見ていただければわかると思います。それに加えてライバル農家の注文が早々と中止になっています。今の状態でも睡眠時間を削りに削って作業してるんです。繁忙期でもないのに毎日午前様なんですよ。農作業と事務作業を兼務するのはもう無理です。事務作業に専念させてください」
言いました。言ってやりましたよ!
「事務専念なんて、だったらお前の農作業は誰がやるんだ」
「誰か一人、臨時に作業員を雇ってください」
「んな金どこにあるんだ!!」
あるだろ!! この間、稼ぎが多すぎて税金何百万払ったって飲み友達に自慢してたやろがい!!
「なら誰がこの事務整理をするんですか」
しかし社長からの反応は一切なし。それどころかこの状況を一過性のものと思っている節さえある。
馬鹿が!! 現状の説明しただろが!!
注文はお中元に向けてまだまだこれから増えんのよ!?
「それに私は、ヘルニアで足が痛くて、このまま作業を続けると本当に忙しいときに動けなく……」
「ヘルニアか。オレも昔なったことがある。手を借りないと歩けないほど痛かったが、いつの間にか治った」
聞いてねぇわボケ。
「オレなんて今は足の付け根からふくらはぎまでビリビリ痺れて、毎日のように接骨院に通ってるけど一向に良くなんねぇ」
それは老人性のものだからヘルニアと一緒にされても困るのだが?
相談しているのはこっちなのに、どうしてマウントをとられなければならないのか。こちとら病院に行く暇すらないんですがね?
結局埒が明かず「事務を優先するので農作業はセーブします」と折衝案を突き付けて帰ってきたわけなんですが。
***
「ということがあってだね。あんたの父親、頭どうかしてるわ」
「うん。まぁ、生霊だと思って」
いっちばんタチ悪いやつ―!!
……私が我慢すれば周囲が円滑に動くとか、理不尽に耐えれば上手くいくとか、社長のYesマンにならずに少しでも反撃できてれば、今この腰の痛みに泣くことも残業の多さに胃が痛くなることもなかったのかな……なんて思っても後の祭り。健康な体なんて戻って来やしません。仮に戻ってきたとしても一朝一夕にはいかないのは目に見えてます。
相手が生霊であるならば、今後はもう無視するだけです。
生霊の顔色なんて窺わずに、私は私の体を労わりながら仕事に邁進しようと思います!!
悪霊退散!!!