異世界ちゃんぽん
異世界転生は夢だ、誰しも願ったことがあるだろう。今の自分とは違う強大な力、変身した後のかっこいい姿。憧れだ、憧憬だ、焦がれてやまない理想郷だ。だが、1つ考えてみて欲しいのだが絶対に嫌な世界観のゲームはないだろうか。例えば死にゲー、難易度高めで3桁死ぬのがザラにあるゲームの住人になるのは嫌だろう。例えばターン制RPG、なんで相手が動くまで待っていなければならないのかと思うだろう。例えば横スクロール、1・2回殴られたら問答無用で即死する身体になりたいか? いいや嫌だろうさ。で、ここからが本題だ。
「待て待て待て!! 死ぬうううううううう!? 体力ゲージぶっ飛ぶ!!」
「置いていかないでぇえええええええ!!! 私は相手が一回動き終わるまで動けないのぉおおお!!!」
「ちょ、進むしかできないから急な転身できないんだってばぁああああ!!」
最初に説明をしよう、俺の名前は鹿羽。なんと良い感じに異世界転移に成功した勝ち組だった。だった、過去形だ。今は違う、負け組だ。なんでか、俺の適応された異世界法則が【魂風味】だったからだ。
「俺のステ振りじゃあんなのにはまだ勝てねえから!!」
異世界法則の特徴は経験値を溜めて拠点に戻るとレベルアップができる、そしてレベルアップした時に好きなステータスに数値を割り振れる。で、一番特徴的なのは。
「あんた死んでも復活するでしょ!! 魂の場所は覚えていてあげるから囮やってよ!!」
「それでもクソほど痛いのは変わりねえんだよ!!」
死んでも拠点で蘇るこれが俺の異世界法則の最も強力な能力にして弱点だ。だって何度も死ぬのに精神は耐えらないんだから。
「お前こそお得意のターン制はどうしたんだよ!!」
「あいつの行動まだ終わってないから私まともに動けない!!」
「くそが!!」
なんだかんだで仲間になったこいつ、巡里の異世界法則は【順番風味】。相手自分の行動を一回ずつ行わなければならないというルールが自分にのみ課されている。その代わり攻撃やその他行動を邪魔されることはない。加えてHPが尽きないかぎり行動に支障が出ない、MPがあれば覚えている魔法は使いたい放題という特典もある。あと寝ると全回復する。
「それにもうHPもMPもギリギリなの!!」
「使えねえな!!」
「私にそう言うなら、あっちの進むしかできない人にも言ってよ!!」
「あいつはもうどうしようもねえから!!」
あっちの進むしかできない人とはもう1人の仲間の横移のことである。こともあろうに横移の異世界法則は【絵巻物風味】二次元のルールを三次元に無理矢理落とし込んだ結果、
橫移は進むことしかできなくなっている。厳密には向いている方向にしか進めない状態だ、しかも普通の状態の時に殴られると一撃で破裂して死ぬ。一応残機の概念はあるそうだが1000や10000とかいう大きな数ではないそうだ。ルールが特殊な分はまれば強いが今は無理そうだ。
「ヤバい!! あっ」
「くそっ、ヨコがやられたか!!」
破裂音が聞こえたから1体減ったな。ある程度余裕があるようだったが後で残っている数を把握しておいた方が良いな。俺とは違って一瞬で終わるから死の感覚はないのが羨ましい。ちなみに破裂音は特徴的なので分かりやすい、なんかティウンティウンっていう音がする。
「まずいぞ、これは全滅するかもな」
「え、棺桶は回収してね」
巡里はHPが0になると棺桶が召還されて中に入れられる。そこから更に一定時間経過すると本当に死ぬようだが回収して特定の儀式をすると復活する。
「あれ面倒だから嫌なんだよ」
「じゃあ死なないで、私を守って!!」
「死にゲー体質の俺に言うな!! っていうかまだ行動終わんねえのか」
今の相手は依頼で来た洞窟に眠っていたドラゴンっぽい奴だ。翼が退化して飛べないようであるが重さと速さは一線級だから俺の盾じゃ受けきれずに潰される。スタミナゲージの概念も俺にはあるので一定以上の攻撃は避けるしかねえ。今打開できる要素は2つ、行動できるようになった巡里か2機目の横移がなんとかするかだ。
「今は逃げるしかねえ」
「あ、いけそう」
「マジか!! 頼んだ!!」
「えっと、攻撃コマンド。魔法、属性は何が良いかな」
「なんでも良いから早くしてくれ!! お前にターゲットがいかなくなったから俺に全部攻撃が来てるんだからな!!」
「ああ、はいはい。とりあえず雷でいいかな。初級雷魔法を使用します」
ピコンという音がどこからともなく聞こえた、この音は攻撃開始の合図だ。雷魔法って言ったな? どうか効いてくれよ、俺の知識だと竜には雷が効くと思うんだけど。
「あ、外れた」
「ばかやろおおおおおお!!!」
軽快な音をさせながら雷があらぬ場所に落ちた。確率で外しやがるんだあいつ、あー駄目だ、ここに来てミスとかありえねぇ。こりゃ全滅か。
「ふっふっふっふ!! 待たせたな!! 道ばたに浮いてるブロックからゲットしたこれでその竜を倒す!!」
「ヨコ?」
戻って来た横移がなんか不敵な笑みを浮かべながら登場した。見ると手には虹色に光るキノコ的な何かを持っている。
「やぁあああああああああああああああああああああ!!!」
キノコを貪り喰った瞬間に横移の身体が虹に光り始めた。
「おまっそれ」
「これこそムテキノコ!! いまから30秒間僕は無敵なんだ!!」
「正面から行くな!! 喰われ……る……から」
変な音楽をどこからともなく流しつつ走ってきた横移が普通に喰われた。これで2機目もなくなったか。
「はーっはっはっは!! ムテキィイイイイイイ」
「あれ絶対食べちゃ駄目なキノコだろ」
と思ったら、腹かっさばいて出てきやがった。
「はぁ、なんとかなったな」
これが俺の異世界だ。なかなか愉快だろ? はは、死にてぇ、死ねねえけど。