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Lv.1のチートな二人  作者: RYO
5/9

仲間


▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼



「私ら、友達でしょ。」



そんなありきたりな言葉に、感動した事があった。


誰も自分を知らない所。そんな思いから、幸香とも離れて寮のある高校を選んだ。

オタクな事がバレないように、比較的大人しく無難に過ごした。

誰とも深く関わらず、毎日適当に過ごして、退屈だった。でも、私は信じてた。

いつか幸香のように、大切な親友が出来るはずだと。アニメの見過ぎと言われれば、そうかもしれないのだが。

この頃の私は、信じていれば必ず報われるのだと、そう思っていたのだ。



「ねぇ、小鳥遊さんって、もしかして“マジカル☆ネネカ”好きなの?」



放課後、日誌を付けていた私に話しかけたのは、春日茉莉という、同じクラスの女子だった。

彼女はクラスの中心にいるような、明るく元気な性格。大人しく生きてきた自分とは正反対の人間だった。

当時ハマっていたマジカル☆ネネカのボールペンを使っていた私。グッズとはいえ、普通に売っていても可愛いデザインのボールペンなので、ほとんどの人がキャラクターグッズだと気が付かない。だから選んだのに、まさかそれが分かる人がいるとは。



「…貰い物。」

「へぇ、じゃあそのネックレスは?ネネカのヒーロー、ユウキのネックレスと同じでしょ?」

「…よく知ってるね。」

「私も好きなんだ。」



マニアじゃないと分からないようなグッズまで、言い当てられてしまう。予想もしていなかった言葉に、思っていた会話にならなかった。

ニッコリ笑顔を向けられると、言葉に詰まった。信じていた存在が、急に現れたのだ。

そう。彼女もまた、アニメ好きを隠している仲間だった。



「よかったらこの後アニメルトに行かない?欲しい漫画の発売日なんだー。」

「でも、私なんかとで良いの…?」

「なんで?私ら、友達でしょ。」



その日をきっかけに、私は茉莉とよく話すようになった。

部屋で一緒にゲームしたり、夜通しカラオケに行って寮長に怒られたりもした。

退屈な毎日が、楽しくなった瞬間だった。

ほらね、やっぱり人を信じると良い事あるんだよ。そうみんなに言いふらしたかった。

だけど、そんな楽しい日々も長くは続かなかった。



「ねぇ茉莉、あんた最近小鳥遊とよく連んでるよね?仲良かったっけ?」



昼休み、たまたま茉莉といつものメンバーが会話している所に出会した。出会したと言っても、教室には入らず、廊下でその会話を聞いてしまったのだが。



「え?そんな訳ないじゃん。だってアイツ、オタクだよ?」

「嘘、マジ?」

「マジマジ。部屋なんかゲームと漫画で汚いし、私服も超ダサい。アイツの使ってるボールペン、全部キャラグッズなんだよ。」

「うっそ、ちょっと引くわ。」



今思えば、彼女がオタクな事は自分が一番知っていた。

だって、言わなきゃ分からないようなキャラクターのグッズが分かったんだから。だって、カラオケで夜通し出来るくらいに歌を知っているんだから。だって、沢山同じゲームをしたんだから。

だけど、今更彼女の本心に気付いたって、もう遅い。あの時失った友情は、もう戻らない。


お互いがお互いの事を喋らないのが条件だった。だから、茉莉が普段友達とどんな会話をしているのか知らなかった。

普段の茉莉は、私の事をあんな風に貶すんだ。そう思った瞬間、怖くて一緒に居られなくなった。

どの言葉を信じたら良いのか、分からない。


私は翌日から不登校になり、そのまま茉莉とは顔を合わす事なく中退してしまった。



△▲△▲△▲△▲△▲



あの時あの子の言葉を信じなきゃ良かったと、何度も後悔した。だけど、友達にならなきゃ良かったとは思わない。

結果、幸香の大切さを再確認が出来たのだから。

ただもう少し、お互いがお互いの気持ちを理解し合えていたら、今の未来も変わっていたのかもしれない。



「ー…ねぇ、ゼロ。」



目の前にティアの顔が現れて、驚いて我に返った。

今になってそんな昔の事を思い出すなんて、思いもしなかった。心のどこかで、仲間なんて要らないと感じているのかもしれない。

信じられない仲間を作って後悔するくらいなら、普通の職に就いた方が良いのかもしれないと。



「大丈夫?」

「あぁ、平気。」



視界に三人の男女が映る。今日の授業は、パーティを組んで魔物狩り。

クラス中の連中はほとんど、俺達とパーティを組む事を反対した。

しかしリアンだけは、今でも変わりなく接してくれ、なんとパーティにも誘ってくれたのだ。



「せっかくオレ達がパーティに誘ってるのに上の空なんて、良い御身分だね。」



リアン・ミル・インフィニート、赤い髪と瞳が印象的なイケメンだ。ぱっと見の印象は日本にもよくいるチャラ男。

しかし以外にもこのクラスのトップ5で、実力はかなりあるようだ。



「アタシらのジャマだけはしないでよ。」

「シロ達の成績落としたら許さないんだから。」



[クロエ・オン・ターナー 17歳

魔人族 Lv.55 エスポワール学園 2年 Sクラス

HP/20041 MP/24023]


[シロナ・ユキ・ユニティア 17歳

擬人族 Lv.53 エスポワール学園 2年 Sクラス

HP/25232 MP/13219]



紺色ポニーテールの角娘クロエと、桃色ショートの猫耳娘シロナ。オセロのような名前だが、見た目は全く関係がない。

彼女達は1年の後半から、リアンとパーティを組んでいた二人。リアンの情けでパーティに入れてもらう事になった俺達だが、どうやら彼女達には歓迎されていないようだ。

それもそのはず。Sクラスの授業は課題の成功具合で成績が決まる。この世界における最弱の俺達は、きっと足手纏い以外にはならないだろう。



「大丈夫だって。この子達、良いスキル持ってるから。」



嬉しそうにリアンが語ると、クロエ達だけでなく、近くにいた生徒達はみんな驚いた顔を向ける。何故か敵視しているような鋭い眼光だ。

クロエは俺の前の机をバンッと叩いて、身を乗り出す。



「アンタ達、ダンジョンに行ったの?そのレベルで?どうやって帰って来たの?」



この世界にはいくつかのダンジョンが存在し、攻略した報酬としてスキルが手に入るようだ。途中で引き返すことは出来るが、ダンジョン攻略はそう簡単ではない。



「Sクラスではスキル持ちはオレを含めて5人しかいないんだよ。それだけ、スキルは貴重って事。」



ダンジョン一つ攻略につき一つのスキルなので、三つのスキルを持っているリアンは3つダンジョンを攻略した事になる。

俺達はスキルを披露した訳ではないが、辺境の地で育ちLv.1のままこの王都まで辿り着いた。一般的に有り得ないその状況を作り出したのが、スキルなのではないかとリアンが予想したのだ。

この世界で生まれ育った住人達に、違う世界から転生した時に貰ったスキルだと言っても信じてもらえそうにもない。ここは話を合わせた方が得策だろう。



「スキルの話はまた後でしましょう。今は色々教えてほしいわ。」



気を利かせたティアの提案に、5人は移動を開始した。





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