表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lv.1のチートな二人  作者: RYO
3/9

王都へ



時の狭間で開かれた扉の先は、大草原だった。

見渡すと遠くに街が見える。しかし、元居た日本とは違う。

ここが女神の言っていた異界か。



「無限収納に説明書が入ってたな。」



俺はステータス画面を開き、無限収納の中から説明書をタップする。

空中に小さな魔法陣が描かれ、一冊の本が現れた。

不思議なもので、日本語でも英語でもないが、何が書かれているかはちゃんと理解出来る。

ティアが本を開いて説明してくれた。



“アリーヤ”…6つのエレメントで均衡を保っている世界。それぞれのエレメントを守る国の中央は“アナスタシア”と呼ばれ、アリーヤで1番大きな王都である。



「そういえば俺らのステータスプレート、エスポワール学園2年って書いてたな…もしかして、学園の生徒だってもう決まってんのか?」



王都アナスタシアを中心に、火の国“ファイラ”、水の国“ウォーリス“、風の国“ウィンディア、“土の国“アースィム“、光の国“ホーリア“、闇の国“ダークリオ“が各方面に存在する。

今俺達がいるのは、恐らく各国から王都に繋がる道の一つ、“ロイヤルロード”だ。

このアリーヤは、俺達の元居た世界に比べるとまだまだ発展途上。生活の水は川や井戸から汲み、火は一部の地域を除いて魔法でしか付ける事が出来ない。

電気が通っている国はあるが、テレビや携帯電話等の便利な道具は一切ない。

魔法と武術が発達しており、それを学ぶ学園が王都に存在する。それがエスポワール学園。三つの校舎に分けられた、この世界唯一学び舎。

武術に特化した武術クラス。魔法に特化した魔法クラス。そのどちらか、またはどちらもが特定以上と判断された場合は、Sクラスとなる。



「ポケットに学生証が入ってた。やっぱりSクラスみたい。」

「俺もだ。…マジか、学校かぁ…。」



思わず呟いた。

感覚で覚える派の俺は、勉強があまり好きではない。記憶力もイマイチで、前世ではよく学校をサボっていた。



「学ばないと何も始められないでしょ。」



せっかく生まれ変わったのに、戦争に巻き込まれてまた死ぬのはごめんだ。

幸せな未来を掴む為に、アリーヤの常識に触れるのは悪くない。



「けどなぁ…せめて冒険者ギルドとか、そっちが良かったなぁ。」

「冒険者ギルドに登録するには、四人以上のパーティを組む必要があるみたいよ。」



つまり、二人ではギルド登録が出来ないという事だ。仲間を探す意味でも、学園は良い場所だ。

Sクラスは得意分野がバラバラで、授業は実際パーティを組んで受ける事になるらしい。



「最低限のお金は女神様から貰ったし、家も見に行きましょう。」

「ティアは楽しそうだな。」

「ゼロは楽しくないの?せっかく生まれ変わって、夢の美少女になれたんだし、楽しまないとね。」



ティアはそう言って笑顔を向けた。彼女の容姿は、きっと誰の目から見ても美少女に見えるだろう。

自分が男だったら絶対に放っておかないだろうと思っていたが、実際男になっても親友の感覚は消えないものだな。

ドキドキはするが、それ以上の感情が湧かない自分に少しだけ安心した。



ロイヤルロードを真っ直ぐに進むと、王都らしい場所が見え、大きな門の前に鎧を纏った厳つい男が一人立っている。

男は気怠そうに欠伸をしながら、退屈そうにこちらを見た。



「おい、そこの者達。」



顔に見合った厳つい声で止められる。前世で言う所の、検問という感じだろうか。止められると、何か悪い事でもしているのかという不安が過ぎる。



「ステータスプレートを提示しろ。」



王都に入るには、ステータスを記載したプレートが必要だ。俺はポケットに手を伸ばし、取り出した。

渡されたレベルを目にして、警備の男が目を細める。まるで何かを疑っているようだ。



「Lv.1でエスポワール学園の生徒?しかもSクラスか…よく受かったものだな。…まぁいい、通れ。」



馬鹿にしたように笑われるが、なんとか通してもらえた。さすがに良い気分ではないので、ソイツのステータスを覗き見る。



[テート・ファオン・アンセクト 38歳

人間族 Lv.45 近衛兵

HP/9842 MP/3590]



俺達と門番では、HPとMPにかなりの差がある。実際はHPとMPは俺にしか見えないので、この世界の強さの基準は、レベルの高さなのか。

入ってすぐ、道行く人々のレベルとHP、MPを確認する。

さすがに子供のレベルは1が多いが1~10、男女で差もあるが、だいたい20~30が一般人のレベルの平均。冒険者のような出で立ちの人は30以上もいるようだ。



「私達みたいな人はいないの?」



ティアに言われて、もう少し遠くの方まで見てみる。とんでもなく豪邸から出て来た娘がLv.1という事はあっても、一般の人間がLv.1という事はないようだ。



「レベルは強さを表しているんだ。だから、ある程度魔物を狩れば誰でも2以上には上がる。低いのは世間知らずの奴らだけだよ。」



後ろから追い越した、赤い髪の男が言う。一見チャラ男にも見える彼は、シャツのポケットに怪しげな色の薬品を持っていた。

見た感じは学生。多分、エスポワール学園の生徒だろう。



「キミ達、ロイヤルロードから徒歩で来たみたいだけど、どこで育ったらLv.1のまま王都に来れるの?」



コイツ、スリやがったな。いつの間にか、その男は俺達のステータスプレートを持っていた。

全く気が付かなかったのが悔しい。

心の中ではだいぶ慌てているが、なんとかポーカーフェイスを貫いた。

随分手先が器用な奴だ。



[リアン・ミル・インフィニート 17歳

羽人族 Lv.78 エスポワール学園 2年 Sクラス

HP/25632 MP/25604

スキル:魅了、錬金術、調合]



当て付けに見たステータスに驚いた。

街の中では飛び抜けたステータスのこの男。同じエスポワール学園の2年にして、Lv.78とかなり高い。合わせて、近衛兵でも持っていなかったスキルを持っている。

もちろん、俺達との差は歴然。

しかし、俺達は戦い方を知らない。いきなり戦闘でも挑まれたら勝てる気がしない。敵だったら厄介な存在だ。



「辺境の地で育ったの。何かおかしい?」

「いや。キミみたいな可愛い子だったら、オレだって甘やかしちゃうから。分かるなって思っただけ。」



俺が怪しんでたからか、ティアが代弁してくれる。

ニコニコと語る彼のオーラから、“嬉しい”という感情が見える。何をそんなに喜んでいるのか分からないが、用心はしておいた方が良いだろう。



「だけど気を付けなよ。この世界では、レベルこそ最強への近道なんて言われる世界なんだから。“弱い者は強い者にすぐ殺される”。」



やはり、この世界の強さはレベルで測るようだ。

どんなゲームでもレベルは最低限あるが、戦闘能力や武器、魔法を使うタイミング、パーティメンバー等を考慮すると、上のレベルの魔物にも勝つ事が出来る。それを彼らは知らないのだ。まだそこまで大規模な戦争に発展していないからこそ、その事実が分からないのかもしれない。



「それより、早くしないと遅刻しちゃうよ。」

「何に?」

「何にって…キミ達が今日から学園に転校して来るっていうファース兄妹でしょ?」



まさかの発言に驚いて言葉にならなかった。このまま何も言われなければ、家を見て色々探索をしてから一日を終える所だった。生前の記憶でも、学生は大分昔に卒業しているので、自分達が学生だという事をすっかり忘れていた。

学校らしい建物は見えているが、まだまだ遠い。



「だったらお前も遅刻だろ。」

「オレは遅刻する予定だったから。キミ達はどうして私服なの?」

「…今から着替える。」



この世界に来たばかりにも関わらず、今日から学園生活だとは予想していなかった。確かに、無限収納に制服が男女二着分入っている。せめて身体を造築する際に制服も一緒に着せて欲しかった。

などと恨む事も出来ず、俺は制服をタップした。身体が魔法陣に包まれ、一瞬フワッとした感覚がして、すぐに制服に身を包まれる。そして遅刻を防ぐ為に、“転送石”なるものを取り出してみる。



[転送石:空間魔法の込められた石。額に当てて行きたい場所を唱えると、好きな場所まで移動出来る。

使用回数 1回 人数 4人]



「…キミ、本当に人間族?」

「さぁ、どうだろうな?」



“女神の力が使える”なんて、説明したところで信じてもらえないだろう。

確か説明書には、人間族、海人族、擬人族、羽人族、魔人族の五種族あると書かれていた。リアンは羽人族とあるが、羽は見当たらない。全ての種族が人間に近い姿になれるようだ。



「置いてくぞ。」

「え、オレも連れてってくれるの?」

「行きましょう。」



手を差し出すと、リアンは一瞬驚いた顔をした。何か間違っただろうか。と内心ドキドキしている。

しかし返事を待たずに、ティアが俺とリアンの手を取った。笑顔で見つめるティアに、リアンは少し顔を赤らめた気がした。





.


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ