第1章-3 過酷な訓練
次の日、生徒の話題は昨日の戦いの話で持ちきりだった。
「いやーあの戦いやばかったよな。レグルス手も足も出てなかったじゃん」
「最後のどうやったんだろうね。レグルスの攻撃が自分に当たってたよ」
「そういや今日からだっけ?強化期間。」
「そうそう今年はカルラ島らしいよ。」
「あの火山で有名な?自殺行為じゃん」
強化期間は覇杖祭に参加する選手強化の為に行われる。毎年違う場所で行われるが、今年のカルラ島は火山活動が今も続いており、見渡す限り岩という鬼ヶ島みたいなところ。龍が生息しており、近づくとブレスで返り討ちにされる。
その頃学長室には選手十名が二名集まっていた。教師のヘラ・マクラーレン第五階梯術師とブレイン・ソー第七階梯術師の二人もおり、引率するようだ。二人とも若手の優秀な神杖術師だ。
「これより移動魔法陣を起動する。皆集まるように」
床に魔法陣が浮かび上がり、皆その上に乗る。
「皆、準備は良いか?では気をつけて訓練してくるのだ」
魔法陣の輝きが生徒と教師を呑み込む。やがて光がおさまった時には学長を除いた全然が部屋から消えていた。無事に移動できたようだ。
カルラ島の地面が突然輝いた。大きな魔法陣が展開し、シンたち選手一行が現れた。
「よしみんないるな。私の名はブレイン・ソーだ。一応第七階梯術師としてアルビレオアカデミーに教師として在籍している。今日から二週間、この島で特訓することになるが、君たちはアカデミーの代表選手としてここにいるわけだろ。まだ学生ながらとても強い。私やヘラ・マクラーレン第五階梯術師と対人戦をして鍛えてもいいが何しろ二人しかいないし、二人で君たち全員を相手にするのはちょっと無理だ。だから............龍を倒してこい!」
「「「は?」」」
急な展開に何人かはついていけないようだ。
「え?できないのか?プークスクス。だっさ〜お前らそれでも代表かよ。あ、ちなみに戦わないのは勝手だが、龍を討伐した証として牙を一本持ってこい。その牙で作った杖でないと俺はお前らの覇杖祭の出場を認めないぞぉ。何か質問は?じゃあ、討伐開始ィ!!」
その声を合図に選手たちは動き出した。まず大きく出たのはレグルス。身体強化の術を体にかけ、地面を力強く蹴ってジャンプすると、風の魔術を起動し、空を飛ぶ。雲をこえ、空気が薄くなってきたところで、レグルスは空を一番高く飛行する古代龍を発見した。杖を向け呪文を唱える。
「『紫電の煌き』」
杖の先端に魔術円環が展開。そこから龍に向けて一直線に、光線が紫電を散らしながら飛んで行った。そして龍の心臓を撃ち抜いた。
「ゴォォオオゥァァアアアア!?!?」
龍は悲鳴をあげながら落下していく。この術は「統べる煌き」と呼ばれる古文書に載る「煌き」シリーズと呼ばれる攻撃魔術だ。「統べる煌き」の前半のページは初心者にも扱いやすい基礎呪文、後半にいくに従って扱いが困難な術が載っている。魔術の基本属性全ての攻撃魔術が載っている古文書というのは珍しく、多くの人が利用している。
そして落下中の龍の牙に向け杖を一閃。
「『剣士の演舞』」
銀色の輝きを放つ牙を一本切断した。レグルスはその牙をキャッチすると、とどめとしてもう一度術を起動し、龍の首を切断。龍を絶命させた。レグルスは優雅に地面に着地し、ブレイン・ソー教師のところに向かった。
アルフ・ランスは「魔の右手」の使い手。いつかこの体質をさらに生かせる杖を手に入れるつもりだった。今回はそのいい機会。アルフが狙っているのは漆黒龍ダークノヴァ。接近すると黒い雷で返り討ちにされ、体から発せられる正気で半径二百メートル以内に入るものを腐らせ灰にする上位種だ。雷雲の中に生息しているのだが、多くの龍が生息するこのカルラ島に狩りにやってくることがある。
「おっ、ラッキー☆」
アルフの狙い通り、ダークノヴァは狩りを終え体を休めていた所のようだ。アルフは瘴気の範囲内に入らないよう注意深く接近し、杖を抜いた。
「『闇表す宇宙の彼方、地に縛れ大地の怒りよ、吹き荒れろ破滅の嵐』」
三つの属性を混合させたアルフの必殺技が炸裂。特殊な結界が展開し、超重力で龍の鋼の肉体を押しつぶす。
「さーらーにっと、『闇夜の煌き』」
禍々しい力を放つ球が杖の先に灯り、
「BANG!」
龍に向かって飛んでいき着弾。龍の骨格以外を全て消し去った。しかし、
「クッ、ちょっと無理しすぎたか...も...ガハッ」
アルフは血を吐いて倒れてしまった。