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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
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タピオカミルクティーと恋の話

作者: 坊

「なあ、うまい?」

 今流行りのタピオカミルクティーを飲んでみたいというから連れてきたのだけど。湊は女子ばっかりの店内に委縮して、すっかり顔がこわばってる。

「う、うん。おいしい」

 きょろきょろあたりをうかがう様子は、まるでリスみたいだ。

「幸人くんはいつもこんなの飲んでるんでしょ? すごいなあ」

 しみじみ言うから、笑ってしまう。いくら東京暮らしだからって、毎日こんなの飲んでるわけがない。

 湊は、都心から二時間以上離れた田舎に住んでる。去年一年間、父親の仕事の都合で俺も暮らした場所だが、見事に何もない。カフェもファミレスもないし、コンビニだって数えるほどしかない。周りは田んぼ、畑、山、川ばかり。俺はそこで、初めて野生のリスを見た。

 そんな田舎で生まれ育った湊は、都会に対してだいぶ間違った知識を持っている。

「都会の人っておしゃれだね」

 都内在住の人間がみんなファッションセンスがいいかというと答えはノーだ。それでも、湊と比べれば確かにおしゃれかもしれない。

 俺に会うため、わざわざ遠くからやって来てくれた湊は、近所のスーパーで買ったのだろう、へんてこな猫の柄のTシャツに、ハーフパンツをはいている。高校二年でそのセンスはないだろ……と思わなくもないが、いかんせん恋は盲目、そんな湊もかわいい。

「幸人くんも、もともとかっこよかったけど、久しぶりに会ったらもっとかっこよくなっててびっくりした」

 不意打ちはやめてくれ。えくぼを作りながら笑うその表情に俺は弱いんだ。

「いっぱい声かけられてたもんね」

 この店に来るまでのあいだに、女子やモデル事務所? の人間から話しかけられた。デートを邪魔されて本当に鬱陶しかったから、いつになく塩対応しちゃったけれど、許してほしい。まあ、デートだなんて思ってるのは俺だけなんだけど。湊は、遠くに引っ越してしまった友達に会うため、わざわざやって来てくれただけなんだ。

 誰に声かけられても俺にはおまえだけだよ! って言いたい。けど、まだ言えない。もっと湊に俺を意識してもらってからじゃないと。告白するなら勝機を掴んでからだ。そんなこんなで早一年、勝機なんてつかめてないんだけども。

「地味で野暮ったい僕なんかと違って、幸人くんはキラキラしてるし、かっこいいし、都会の人ってかんじだもの。一緒にいるのがちょっと恥ずかしいくらいだよ」

「……何言ってんだよ」

 うつむきがちにタピオカを吸いながら笑う湊に、それは違うとつい語気が荒くなる。そんなふうに思わないでほしい。

 俺の口調に驚いた湊は、目を丸くしてぽかんとしている。その瞳がタピオカみたいで、つい笑ってしまった。

「そういう顔とか、俺からしたらかわいくってしょーがないから。だから一緒にいるのが恥ずかしいとか言うなよ」

(あ、あれ? これ、告白っぽくないか?! )

 と思ったのもつかの間。

「ふふ、ありがと。そんなこと言ってくれる幸人くんと友達になれて本当に良かった」

 やっぱり伝わってなかった!!

 俺はがっくりと肩を落とした。

(いつか絶対湊と付き合ってみせるからなーーーー!!!!)


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