6話
外は晴れており快晴と言える。
いつも通りの道を通る、左折した後に2本目の信号をまた左折、そこからしばらく直進をする。
本来は何も考えていなくても辿り着ける慣れた道筋なのだが今日1日の出来事は既に濃密で考えたくなる事が大量にあった。
だがそれらを整理する時間は登校路だけでは圧倒的に足りず気がついた頃には教室に着いてしまっていた。
だが学校へ着いてからも俺はしばらく呆然としてしまっており、そんな俺の姿を見てそう思ったのだろうか
「何ボーッとしてんだよ! 」
と俺の友達の田中勇徒が肩を軽く叩く。
佐藤翼「いや、少し考え込んでた。」
田中勇徒「考えるってなにを? 」
なんとなしに答えた事に対しての勇徒の素朴な疑問に思わず俺は言葉に詰まってしまった。
今日の朝の出来事を言った所で信じてもらえる自信は全く無いし、かといって流石に友人に嘘はつきたくない。
表情には出さないようになんとか努めたが内心かなり焦ってしまった。
しかし勇徒は元からあまり俺の考えに興味などなかったようで、まあいいや、と言った後に本題を切り出した。
田中勇徒「今日この学校に転校してきた奴等が居るらしいんだがな」
勇徒はそう言いながら顔をこちらへ近づけ、少し声量を下げて続ける
田中勇徒「どうやら2人中2人共が女子らしいぞ…! 」
勇徒の顔の距離は耳元で囁いてるに等しいため顔を見れないが、その声色だけで勇徒の表情が目に浮かべられる。
勇徒とはこういう人間だと再認識するが、今はそれよりも2人の転校生が気になった。
勿論、勇徒とは別の意味で。厳密に言えば嫌な予感がしていると言うのが正しい。
何が言いたいかって、要するに"転校してきた人間"というのはフルーシアが何かしらの力でこの学校に来たんじゃないかと言う事。
俺の顔色がドンドン悪くなっていっている気がする、勇徒の表情とは対比的だろう。
しかしそれらの俺の思考やあるいは隣にいる俺の友達の妄想にかかる時間は平等で、遂に始業のチャイムが鳴る。
先生が教室に入り、生徒は全員起立礼をして学校の1日が始まろうとするいつもの流れ。
だが先生はそこで噂通り新入生を紹介した。
「はじめまして…えと…」
しかし俺の予感は外れだったらしく、先生の紹介で教室に入ってきたのはフルーシアよりも一回り小柄な大人しそうな女性だった。
「雲並天糸…と申します…仲良くしてください…」




