4話
じいちゃんが部屋を後にし、部屋には再び俺と目の前の不審者だけになる。
コイツは何者なのか?
確実に言える事は植木鉢を割られており、部屋に不法侵入されている事。
幸いにも割られた植木鉢は買ったばかりの物で、これから土を入れて種を植えたりする予定だったから、今育てている花は無事なのが唯一の不幸中の幸いと言える事だろう。
しかし殺されかねないとまで思っていたのに敵意が全く無い。
「コレ美味しいですね〜! 」
と、言うか、目の前の不審者は俺自体への興味は既に無くした様で、部屋にあるお菓子を強奪されながら俺の部屋の本棚を見回していた。
その気まぐれ(と言える範疇では無さそうだが)になんとなく、友人の部屋に遊びに行った時の猫を連想してしまっていたが。ふと我に帰り今の状況は焦らなければいけない様な状況なのを思い出した。
佐藤翼「あ、あの…どちらさまでしょうか?」
携帯等で警察に電話をするのも考えたが少しでも下手な事をした瞬間に俺の命は終わりかねない。とりあえずスキを見て距離を取る、あわよくば部屋から抜け出したかった。
「あら…! そうですよね! 」
「アタシの名前はフルーシアと申します!以後お見知り置きを〜」
フルーシア「因みに天使です!! 」
なんだろうこの感じ。
常識が捻じ曲げられる感覚。
軽くジャブを打ったらカウンターとしてトラックで突っ込まれた。と言えばこの摩訶不思議具合をなんとか伝えられるだろうか?
その唖然としている様子を流石に察してくれた様でフルーシアと名乗る自称天使はこう続けた。
フルーシア「えーと、兎にも角にも信じてもらわないと信じて貰えないので、証拠をお見せしますね? 」
そう言いながら何故かフルーシアは着ている服を脱ぎ始めた。信じる以前に天使の定義がもう分からない。
どういう事だろう? 俺みたいな平凡な男性に裸体を見せる痴女としての比喩表現? それならまあ通り名として天使も有り得……いや無理があるな。
そんな事を考えている間に既に上半身はブラジャーだけになっている、さっきとは別ベクトルでパニックに陥りそうだった。
だが、次の瞬間決してそれは、『天使』と言うのは比喩でも何でもなく、また嘘をついていたわけでも無かった事が判明した。
どうやって折り畳んでいたのか分からない程に大きい両翼のその白い羽根を広げこちらを見ながらフルーシアは一言だけ、こう言う。
フルーシア「信じて…頂けましたか? 」




