始まりはある日の出来事1
普段はこういうの書かないのですが、拙作の広告部分に延々成人向けゲームっぽいのが表示されてちょっと不愉快になったので、つい。
モチベーションゴリゴリ削られるんですけれど、どうにかならないかしら、アレ。
私の名前はアニス。魔法使いだ。
「アニスさーん、イベントクエスト行かない?」
いや、これは私が現実とファンタジーを混同しちゃっている残念な人という訳ではない。厳密に言うとアニスは私が動かしているVRオンラインMMO、つまりネットゲームのキャラクター名であり、現に今もゲーム上の友人にその名で呼びかけられ、誘われたところだ。
「そうだな‥‥イベントアイテムも報酬確定数に少し足りないし」
ちなみに名前の由来は庭に種がこぼれ、半野生化してやたら存在感を放っていた紫蘇から来ている。別に紫蘇が好きという訳ではなく、ただなんとなくつけた名だが、続けていれば愛着も湧く。私は今週のイベントスケジュールと直近のやるべき事リストを照らし合わせた上で、お誘いにOKを返し、友人の招待に応じた。
「「初めまして」」
「「よろしくおねがいします」」
落ち合う場所で顔を合わせ、重なる定型文の挨拶。誘ってくれた友人と私に面識があるのは当たり前だが、このゲームは五人までパーティーが組める。残る三人の内一人は私と友人が所属するクラン、つまりオンラインゲームにおける同じユーザーコミュニティに所属する弓使いで多少なりとも面識があり、残りの二人は同じイベントクエストを攻略しようと言う目的で募集に応じた見知らぬ野良プレイヤーであったものの、そうそうそんな変な人物は来ないとさして気にも留めなかった。
「とりあえず22:00まで周回で」
「承知しました」
「「了解」」
「おk」
これから挑むクエストは所要時間が短いものの貰える報酬は少なめであり。周回するのは募集に答えた時点でほぼ暗黙の了解だ。もちろん募集欄のコメントにもちゃんと周回と明記されていて時間指定は集合してからになったものの、これも問題はない。最後までつきあえないなら、そのことに触れて出来る所までつきあったり、この時点で謝って抜けていくからであるし、逆に時間を過ぎても続けたい人が居たならその人だけ残って空き枠分の募集を募り、人が集まったら再開すればいい。
「クエスト、私うけてくるー」
「「よろしくおねがいします」」
「よろ」
イベント期間とは言え、それを除けばいつもと変わらないゲームの中の日常。見知らぬ野良プレイヤーの二人はたたの行きずり。
「あ、レベルもあがったー」
「おめ」
「「おめでとう」」
このクエスト周回が終わればもう会うこともない二人だと特に気にせず、既に何度もこなしているクエストなので迷うこともなく仲間達とフィールドを移動、目的地にたどり着くと討伐対象を撃破し、帰還を繰り返す。友人んのレベルが上がった時こそ祝いの一文をタイプしたが、特に問題もなく時計の針は進み、一時間程度周回した私達は、仲間の得意とすること、行動パターンをある程度把握出来るようになり始め。
「雑魚お願い、アーッニスさん」
「っwww」
私へのお願いの筈の文章でトんでもない名前の呼び間違いをしたのは、野良の片割れ。もう一人はツボに入ったのか急におかしな動きをして敵から大ダメージを受け、同じクランの弓使いがチャットウィンドウに「w」を連打する。
「了解」
何故そんな名で呼ぶんだと罵倒したかった。だが、戦闘中であり、仲間の一人が痛手を負っている。この状況で罵声の文章を撃ち込みながら敵を攻撃するほど器用でない私はボタン一つの定型文で応じるのがやっとであり、かわりに心の中で誓った。
「この恨みは忘れない、きっとどこかで復讐してやる」
と。そもそも私が魔法使いを選んでるのは遠距離から一方的に敵をいたぶれるからであり、自慢にはならないが、ねちっこさと性格の悪さには自信がある。ちなみに同じ理由で弓使いと迷った経緯もあるが、あちらは必要とされるプレイヤースキルが高くて私は断念した。w連打しながら着実に敵の急所を射抜く同じクランのヤツはきっと変態だと思う。いや、変態と言うことにしておく、なんか妬ましいし、呼び間違いを笑ったのもイラッとするので。
「ごめんなさい」
ふいに声がしたのは脳内で結論を出し、雑魚へ対処しようとした時だった。謝罪、そう謝罪だ。戦闘終了時にチクリと嫌みを言ってやろうとした私は、先手を打たれた。
「今まで楽勝だったのに急に苦戦したね」
と言うセリフまで考えていたというのに、これで嫌みを口にしたら私が完全に嫌な奴ではないか、おもれ。
「お構いなく」
「ありがとう、ウェニスさん」
現実で奥歯をかみしめつつ定型文で返せば、返ってきたのも定型文。ただし、私の名前の部分はまた誤字をしていて。
「ぶっ」
「表示禁止文字にならないギリギリを攻めて行く高等テクニックwww」
あの変態弓使い、またWをまき散らすのか。くそっ、どいつもこいつも。だが、いかに不愉快だからと言っていきなりのパーティー離脱はマナー違反も甚だしい。この周回が終わったら必ず抜けてやるからなとVRゲーム用機材を付けた現実側で口にしながら、私はHPバーが殆ど見えなくなるほどダメージを負った雑魚モンスターにとどめを刺すのだった。