一章 六.五話 アホな子、ユリ
短いです
ある草原に、長い足を持つ鳥型の魔物──シュトラウスの群れに追われている一人の少年と少女がいた。
悠斗とユリだ。
彼は、この世界では流通していない素材で作られた黒いブレザーと濃い灰色のズボン──制服を砂で汚しながら、黒をベースとした某スポーツメーカーの赤いロゴが入っている靴を履いている足で草原を駆け抜けている。
一方彼女はと言うと、黒と白のメイド服のスカートをひらひらと舞いらせ、下着が見え隠れしていることを恥じらいながら、おぶわれていた。
こんなことになったのは、今から数分前、ユリが調子に乗ったのが原因だ。
彼女が悠斗の強引な提案を受け入れて、草原を歩き始めて、少し経った頃、RPGではお馴染みの魔物であるゴブリンと遭遇した。
悠斗は戦う術など持ち合わせているはずもなく、ユリがそのゴブリンと戦うことになったのだが──結果、彼女はゴブリン戦闘後、魔力枯渇で動くことが出来なくなった。
悠斗はユリを問い詰めた。すると、ユリ曰く、悠斗にカッコいいところを見せたくて、魔力消費量が多く、彼女の魔力量では一度が限度だが威力は高い中級水魔法──ワッサー・クゲルと初級風魔法──アイナ・ブリーズを融合させたオリジナル氷魔法──アイス・クゲルをゴブリンにお見舞いしたとのこと。
悠斗は最初だけ、ユリをキラキラした目で見ていたが、動けなくなった後の彼女には、阿呆だなコイツという言葉を多分に含ませた視線を彼女に送っていた。
そして、その後現れたのがシュトラウスの群れ。悠斗はシュトラウスの群れを見た時、頰を引き攣らせながら、ユリを一瞬だけ置いて行こうかと考えたが、好きな人を置いて行けるはずもなく、すぐに彼女をおぶり、彼は共に逃げることを選んで、現在に至る。
悠斗は息を切らして草原を駆け抜けているのに対して、ユリは彼の頭をポカポカと叩き、「パンツ見ないでください〜」と叫んでいた。
悠斗は途切れ途切れに「見てねぇから、頭叩くのやめろ」と辛そうに言うのだが、ユリは頭が働いていないのか、「やっぱり見てください〜」と意味のわからないことを叫んでいた。
その後、無事にシュトラウスの群れから逃げ切った悠斗とユリ。彼は、草原に仰向けに倒れ込み、もう無理という表情で天を仰ぐ。
その傍に、ぺたりと座り込んだユリ。彼女は「もう、お嫁に行けない」と悠斗をチラチラと見ながら、呟いていた。
ちなみに余談だが、彼女は、黒いニーソを履き、その上ガーターベルトまで装着しており、スカートがひらりと舞い、ニーソとスカートの間にちらりと見えるガーターベルトがくい込んでいる白い太ももの方が下着より、後の悠斗が「エロい」と称している。
そのことを聞いたユリが大胆なことを悠斗の前でしでかすのだが、それはまた先の話である。