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6.終わり

 遊園地は、レジャーは、楽しむためにある。

 なのに不幸にさせてどうするんだ? まったくもって、遺憾いかんである。


 にゃお。


 白い猫が、アリサと藤川の前に現れた。

「あれ?」

 気がついたのは藤川が先である。体身は白いが、耳や手足が黒っぽく混じっていた。

「ゲートで見た猫ちゃんだね、住みついているのかな」

 輝いて回り続けているメリーゴーラウンドは、止まる気配を見せない。はじめは恐怖でパニックになったが、慣れてくると案外平気なもんだ無害ならと、藤川と一緒に見るのを楽しむ事にした。

 それを提案したのは藤川ではあったが。

「こいつな。俺、こいつに助けられたかもしれないんだ」

「ええっ、恩人!?」

「人じゃないから、深野」

「にゃああーん」

 猫がメリーゴーラウンドの前で、ちょこんと行儀よく座っている。鼻血が出そうなほど可愛い。アリサ、及び藤川もそう思っている。

「こっち見てるなー?」

「何ででしょう」

 しばらく見つめ合いが続いている。

「実はな、深野達に合流する前の事なんだけど……」

 と、言いかけた時だった。突然、猫が走り出す。

「あ、どっか行っちゃう!」

「追いかけよう。その方がいい気がする」

 猫は、園内の奥の奥へと進んでいく様子だ。あっちにあるといえば――。


 観覧車。


 山の手へ、坂道を走りに走って、辿り着く。

 猫は見失ってしまった。さすがに、猫の足には追いつけなかっただろうか。

「あれは何だ……」

 観覧車は無人のはずなのに、稼働しているのだった。


 円形の中心に、ウラノドリームランドと看板が掲げられているのだが、そこに座っている生物が……居た。

「ああああああー!」

 大声を出したアリサ、遠くでカラスが大勢で飛び去った。よほど驚いて、藤川がすっ飛ぶ。

「アクマだー!!」

 指さして思いっきり嫌な顔をしてやった。夢と同じ姿である。

 ぬいぐるみのクマみたいで黒い蝙蝠の羽を広げていて、顔はのっぺらぼう。水色のオーバーオールを着て首に赤いスカーフを巻いている。

「あいつが、遊園地でいたずらしてたんだ。本当に居たんだ、すごーい」

 宇宙人説が有力となった。アクマがもし本当に居るのなら、宇宙人くらい居るだろう……なのか。

「あいつが居たから、この遊園地も不幸が続いてダメになっちゃったんだ。ちょっと、降りて来なさいよおお~!!」

 あいにく高すぎて手の出しようが無かった。このままにらみ合っているだけでは時間の無駄である。

「あ、降りて来た」

 藤川が言ってる隙に、アクマは素早く飛んで下降を旋回していた。

「あいつ、何も考えてないとは思うんだけどな」

「どうでもいいけど、何かムカつく」

「自由気ままなんだろね。それより、あいつの弱点が分かったんだ」「へ?」

「どうして俺や深野だけ、ミラーハウスで入れ替わらなかったんだろうって、ずっと考えてた」

 藤川は、スマホをポケットから取り出した。

「あいつ、嫌いみたいなんだよな」

「何が?」

「猫が」


 観覧車のチケット売り場から顔を覗かせたのは、見失った白い猫だった。「にゃお」

 それを見て大騒ぎし出したのは、アクマだった。


 ぎやああああああああああああーッ


 地鳴りがするほど強烈な叫びだった。アクマだ、さすが。

 一斉に、カラス以外でも鳥が慌ただしく飛び去った。ぎゃーす、ぎゃーす、ぎゃーす……。

 アクマは旋回を千回くらいしながら、なんと喋った。「猫いやー」声はアイドルみたいで可愛いらしかった。

 加速をつけた様で、空の彼方に消えてしまった。星となる。


「そうか……。本物の猫だと、ああなるんだな。勉強になった」

 藤川は感心していた。

「何の役に立つんですかそれ……」

「猫を身につけていれば、アクマが近づいてこないって事」

 スマホを片手に、してやったり顔でアリサを見ていた。「あ、そっか。だから」アリサは思い出してショルダーバッグのキーホルダーを見た。猫の、お気に入りのキーホルダーだった。

「猫を飼ってるっていうのも、いいかもしれない」

「なるほど。勉強になりました」

 アクマに猫。分かりましたか、皆さん。


 アクマが去ると、急に辺りが静かになっていった。観覧車は止まってしまった。

 おそらくメリーゴーラウンドも。何だ終わりか、閉園だな。

「どうしたらいい? 他の皆は何処へ行ったんだろう……」

「もう少し探してみようか。南ゲートの入口付近にまで戻ってみよう。それでももし見つからなかったら……」

「たら?」

「……大人、呼びましょう」

 スマホをポケットにしまった。夕方までには、まだ時間はある。



 *



 南ゲートまで戻った2人は、誰も見つける事はできなかった。しかも、藤川はスマホで電話をかけようと思ったが、バッテリーが切れて役に立たなくなってしまった。がびーぬ。藤川は顔面蒼白になった。

「外、出てみない? とりあえず」

 アリサが門を出ると、おじいさんに遭遇した。「おや」何でこんな所におじいさんが、とたずねると、毎日、山道を散歩しているそうだった。

 事情を話すと、おじいさんは叱った。昔から、この山は神隠しの口伝があり、遊園地ができてからも、よく子どもが居なくなると有名だったそうだ。

 遊園地が子どもを食うのではない、山が子どもを食うのだと、おじいさんは言った。

 おじいさんのすごい所は、スマホを持っていた事だった、使いこなしているらしい。それで警察に連絡してもらった。

 到着した警察は園内を探してくれて、ミラーハウスで全員が無事に発見されて、救急車で運ばれていく。知らせを聞いて迎えに来た沢田家の父や伯父さん達にも怒られながら車に乗せられて、当分は外出禁止だと言われた。

 ……仕方ない。

 無事でよかったんだ、皆。それが救い。

 アリサは、手を合わせて拝んでいる。去り行く遊園地をあとにして。


 後日談――。


 ウラノドリームランドが来年の3月に完全に取り壊す予定になった。

 アリサが聞いたのは藤川からであるが、そういえば自由研究はどうなったかを聞くと、ナマコが興味深いなどと言って、幸せの白いナマコ研究を始めたらしかった。

 そうなんだ、はぁ。

 アリサは遠巻きに応援する事にした。頑張れ、小学生。速やかに去る。


 あの猫、どうしているのだろうな。元気でいるかな。


 カバンにつけていた、猫のキーホルダーが、笑っている。


 

 にゃお。




「ここから、出して……」

 

 大丈夫。

 僕が、絶対に君を救ってみせる。エナジーを、集めたらいいんだ。

 そして集めたエナジーで、君を復活させる。

 だから待ってて。必ずここへ戻ってくるから。絶対だよ。

 君の死体は、あそこへ保存しておこう。誰にも見られないようにしておくね。だって恥ずかしいかもしれないから。腐ってしまったんじゃ、女の子なのに、かわいそう。

 そうだ、ひとりじゃサミシイかもしれないから、仲間を連れてこようか。

 た、す、ケ、て、く、レ。これでいいかな。きっと気になって来る。 


 誰かが……ね。




《END》




「9人」じゃないよね~

1人多いよね~、何故だろうね~(←ツッコミの神)


ご読了ありがとうございました。

後書きは、ブログで~

では。



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後書き あゆまんじゅう。こちら
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