表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/7

4.夢ナンデス

 たのしい! ジェットコースター!


 ――楽しくない。


 すごいぞ! アクアツアー みずのたび


 ――すごくない。


 ケンちゃんの! ミラーハウス


 ――ケンちゃんて誰よ。


 てくてくおさんぽ! ドリームキャッスル


 ――おさんぽなんてしたくない。帰りたい。


 くるくるまわるよ メリーゴーラウンド


 ――誰か止めて、助けて。


 レイコもうれしい! かんらんしゃ


 ――レイコは、ケンちゃんの恋人なの? 疑惑。



 アリサは悲鳴をあげそうになって口を押さえた。「ひっ」と、声に出したのは優衣である、後ろに後ずさりアリサの服を引っ張った。


 たすケてくレ


 ここから出して。出して……。




 *



 地球からは約3憶光年、僕は宇宙船に乗って、はるばるとやって来たんだ。


 もし、いい惑星ほしだったなら、ここに永住しちゃおうか、なんて。大人になった僕は、ワクワクしながら星間をワープした。


 故郷にはもちろん、親や兄妹がいるけど、成人したら自立しないといけない決まり。


 だから僕は旅に出たんだ。もう大人になったから。仕事をするために。


 誰かの、役に立ちたい。誰かを、幸せにしたい。


 そうそうを上げて戻る事がない様に、遠くへ行かなきゃ。自立するために。


 僕の故郷は、【スノーバキア】だ。




「なるほど。宇宙から出稼ぎですか」「はい。まあ、そんなもんです」


「【スノーバキア】さんね」「あ、いえ、それは星の名前で」


「履歴書は後で郵送しますね。この住所で間違いありませんか。槍ヶ岳鯖町。地球ですよね?」「はいそうです。アパート借りまして」


「この長所、って所なんですが、幸運をもたらす、って本当ですか」「われわれは、そう言い伝えられております」


「じゃあ採用です。不景気が深刻で」「大変だ、そりゃいけない」


「うちも商売なんでね。無茶しなきゃ、やってけませんよホント」「ご苦労、お察しします」


「ええと、それじゃ早速、明日から来てもらえる?」「もちろんです」



 僕は遊園地で働いた。時給は、はじめ760円。何も食べなくても生きていけるんだけど、僕はとにかくやりがいのある仕事にきたかった。

 家賃がいるし、ガスも電気も使う。水だって要るよね、体を洗いたい。

 僕に含まれる『幸運のエナジー』は、人のために使いたいな。

 園長さんなら、あげてもいい。どうぞ僕を置いて下さい。


 そうして僕は、おりの中でゆったりとくつろいで、見世物になった。

 開園時間中は外に出られないけど、閉園したら、自由に飛びまわっていい。

 ある日僕はラーメンが食べたくなって、探しに出かけた。ラーメン何処だ。

 気がつけば、夜の繁華街に居たんだ。僕と同じく変わった人達が居る。気持ちよくなる薬だって、そんなの売ってるんだ、へー。

 そこで女の子に会った。とても可愛い女の子だった、アケミ、って呼ばれてる。

 僕は運命の出会いをしたんだ。そう思ったのは、再会した時だった。


 遊園地で働いていたら、アケミちゃんを見かけた。

 僕は残念ながら檻の外には出られないから、僕の前を通りすぎていくアケミちゃんを、ただ黙って見ているしかなかった。

 せっかく会えたのに、ガッカリだ。アケミちゃんはひとりなのかなぁ。気になってしょうがないよ。

 どうしても我慢ができなくて、僕はついに、檻を抜け出してしまった。


 アケミちゃんは、ジェットコースターに乗ろうとしていた。

 並んでて、僕は声をかけようかどうしようかと、悩んでいた。

 だけどそこに、とんでもないやつが現れたんだった。


 アクマだ。


 あいつ、知ってる。約2憶5千光年、地球から離れている星の住人だ。

 何でやつが。学校を卒業したのか、きっとそうだ。

 やつらは悪い事を平気でする。だから僕も誰もかも、やつとは関わりたくないんだ。

 無視したいけど、それができない。だって、あいつ、何をするつもりだ?

 見ていると、あいつ、ジェットコースターに近づいて、笑った。


 あ、まずい。


 人が、落ちていく。


 曲がりくねったコースをジェットコースターがスピード上げて走っていったら、人が、子どもが、落ちた。

 そうか、あいつは、固定ベルトをとったんだ。だから席から子どもが落ちた、何てやつだ。


 許さない。


 僕は飛んで、エナジーを放出した。間に合って。

 だけど、助からなかった。

 あの子は高い所から落ちて、死んでしまった。

 あの子を助けるための幸運のエナジーが、足りない。

 もう少しあったら、助けられたのに……。



 大丈夫。

 僕が、絶対に君を救ってみせる。エナジーを、集めたらいいんだ。

 そして集めたエナジーで、君を復活させる。

 だから待ってて。必ずここへ戻ってくるから。絶対だよ。

 君の死体は、あそこへ保存しておこう。誰にも見られないようにしておくね。だって恥ずかしいかもしれないから。腐ってしまったんじゃ、女の子なのに、かわいそう。

 そうだ、ひとりじゃサミシイかもしれないから、仲間を連れてこようか。

 た、す、ケ、て、く、レ。これでいいかな。きっと気になって来る。

 アクマは心配しないで、そこから出ない限り、やつは入って来られない。

 やつは何を考えているのか知らないけど、どうせ気まぐれだ、理由なんか無いに決まっている。

 アクマなんて、滅びちゃえばいいのにね。

 アケミちゃん、待って。

 僕は、アケミちゃんを追いかけて、遊園地を去った。


 園長、有給下さい。

 そう言えば、よかったのかな?




 *



 

『もともと脳は物事を秩序づけて理解する傾向があるという。何の関連性もないような記憶が浮上してきても、それらを適当に結び合わせて、つじつま合わせをするのだ、って学者が書いてるよ』


 藤川くん、藤川くん。わたし、アリサ。

 宇宙人が出てくる夢を見たんだけど、わたし、宇宙人と何処かで会った事、あったかなぁ?

 ますます謎が深まるばかり。でも何だろ、妙にスッキリした様な。不思議だね?



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


後書き あゆまんじゅう。こちら
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ